（1）事業所の概要
　株式会社セイセイサーバー（以下「同社」という。）は、「高齢者や障害者など弱い立場の人たちにも、自分にできる仕事をしながら自立し、生き生きと社会に貢献できるような一助になれば」との思いで、昭和40（1965）年12月に設立し、清掃業務を中心にビルメンテナンス業を営んでいる。「掃除は心である」の社訓のもと、市民の皆様の職場や住まいが、美しく衛生的であり、健康で働きやすく居心地のよい場であるように「快適な環境を創出する」ことに努めている。
　
（2）障害者雇用を開始した経緯
　創業者の思いもあり、創立から障害者雇用に取り組んできたところではあるが、平成8年に社員の福利厚生・相互援助・社会奉仕を目的として高齢者の同社OBの活躍の場となるようセイセイ生き生きクラブを発足させた。
　同社は高齢者雇用も積極的に取り組んでいたが、清掃業務に携わっている高齢の従業員は年を重ねていくことにより、身体機能の衰えからできる仕事が減ってしまうことを課題に感じていた。高齢の従業員は賃金や内容に関わらずとにかく「仕事に行きたい」という気持ちが強く、なんとかこのような高齢者でも働ける場はないか、やりがいのある仕事はないかと考え、模索し、高齢者の面倒見の良さと体力負担の軽減の両面から「障害のある者に対し仕事を教えるとともに、時間をかけて育てる」ことができれば、高齢者と障害のある者両方の雇用を実現できるのではないかと考えた。
　そこで平成17年に障害のある者の「職業能力の開発」「雇用機会の拡充」を目的とし、同社の高齢従業員やOBに障害のある者への指導・教育を担ってもらおうと、前述のクラブを「特定非営利活動法人セイセイ生き生きクラブ（以下「セイセイ生き生きクラブ」という。」を設立し、障害者就労支援事業を始めた。障害者雇用については特別支援学校の職場実習を受け入れるなど、以前から障害者雇用との結びつきはあったが、上記法人設立が障害者雇用を本格的に開始するきっかけとなった。
　現在セイセイ生き生きクラブでは、就労継続支援事業A型（定員14名、利用者9名）と就労継続支援事業B型（定員20名、利用者19名）を運営しており、同社の清掃業務の一部を請け負っている。
　また、A型事業では半年毎に能力評価を実施し、独自の「総合判定表」に基づく就職を目指した指導などを行っている。また、同社への就職を希望する利用者があれば、同社で採用するケースもある。これまでに、セイセイ生き生きクラブから5名が採用されている。
　本稿では、セイセイ生き生きクラブと連携した同社の清掃作業での障害者雇用を中心に紹介する。

(1)障害のある従業員の状況
　同社には現在9名の障害のある従業員が在籍しており、清掃業務に7名、設備運転保守管理に2名が従事している。
　障害のある従業員の健康状態は、現場主任や同僚、現場担当者がチェックしている。また、業務指示や連絡などは必要に応じて随時実施している。
　障害のある従業員は一人だけで清掃業務の全工程を行うのが難しいため、障害のない者がついて必ず複数人の現場に従事させている。

（2）障害のある従業員の思いに応える
　障害のある従業員の多くには「自分の存在を認めてくれるところで過ごしたい」という思いが強くある。同社ではその思いを大切にし、働く仲間としての意識を育てるようにしている。清掃現場が遠い場合や、開始時刻が早い・終了時刻が遅い場合には、直行直帰させることは可能であるが、「みんなで一緒に現場に行って、仕事をして、終了後は会社に戻り、指導員などに一日の仕事のことを話す」ということを通じて、仲間意識や働きがいを感じている様子である。