（1）就労状況、雇用方針の周知、募集・採用など
　同社では、四国内の事業所を中心とし、各地で23名の障害のある従業員が勤務している（令和3年取材時）。法定雇用率の引き上げに対応できるように、年度の事業計画に障害者雇用や雇用率について明記し、それをクリアできるよう障害者雇用の推進を常時呼びかけている。雇用状況については、毎月各所管での会議に議題として取り上げている。また、人事動向の報告書にも退職予定者数を表記して、法定雇用率を意識した採用活動を行うよう各事業所に意識付けを行っている。
　雇用率を念頭に置きつつも、同社では障害者に限定した求人を出しているわけではない。通常の採用活動の中で、各職場・各業務で活躍が見込める人であれば、障害の有無は関係なく積極的に採用している。
　そうした取組により、同社では雇用率を達成している。

(2)従事業務に対する配慮や情報の共有、関係機関との連携
　同社では、障害の有無に関係なく、安全確保を最大限重視して従業員の担当業務を決定している。障害のある採用希望者や中途で障害者となった従業員から、障害への配慮についての相談があれば、まず従事する仕事や配属先が適しているか十分に検討し、本人に提示する。そして、提示した内容で、「これならできる」という判断を本人にしてもらったうえで業務を決めている。また、障害者の受け入れ実績のできた事業所での経験やノウハウは、本社がとりまとめてほかの事業所にも提供し、積極的に取り入れていくようにするなど、情報共有を図っている。
　着実に障害者雇用を進めてきたことが関係者に知られることで、現在ではハローワークや障害者就労支援機関から就職希望者の紹介を受けることもある。職場定着にあたっては、ジョブコーチなどの支援を各事業所が積極的に活用するなど、関係機関との連携も進めている。

（3）配置後の配慮状況
　障害のある従業員が従事している主な業務は、「軽作業（仕分け・材料の投入）」、「夜間の守衛」、「倉庫内のピッキング」、「点呼（ドライバーに対する安全確認や運行指示、トラブルの有無の確認作業）」、「乗務員（産業廃棄物輸送・信書便配達・地場配送）」、「事務（管理業務・システム保守）」、「製造（梱包業務）」などと多岐にわたっている。
　基本的には現場のリーダーや事業所の所長が働きぶりを見守っており、朝礼での体調確認や、暑さ寒さに対しての注意喚起をするほか、日ごろからコミュニケーションをよく取ることで、安全かつ円滑に仕事ができるように気を配っている。これらは従業員の安全を重視している同社では、障害のあるなしにかかわらず当然のこととして行われている。
　また、本社に配置された障害者職業生活相談員（以下「相談員」という。）が全国各地の担当者からの相談に対応しており、現場をバックアップする体制を整えているが、相談員に頼りきりではなく、各現場担当者が障害者雇用の理解を深めるように本社からも働きかけている。
　業務内容が多岐にわたるため、障害のある従業員のコンディションに合わせた配置転換は柔軟に行うことができる。パソコン中心の作業から軽作業へ転換をしたり、屋内作業から屋外作業へ切り替えたり、規模が違う就業場所へ異動をしたり、多種多業であるメリットを活かして、その人に適した職場環境を整えるように会社として努めている。また、休職からの復帰時や中途障害者となった際などは、時短勤務や隔日勤務の希望があれば可能な限り対応している。
　障害のある従業員とは定期的に面談を行い、基本的にはプライベートには立ち入らないようにしながらも、希望があれば将来の働き方なども踏まえた相談に乗っている。

 

（1）安全確認の徹底
　同社は、安全を最優先に考えていることから、日頃から障害のあるなしにかかわらず、ヒヤリハットの収集・分析を行い、フォークリフトの作業領域に三角コーンを設置するなど、従業員にとって危険な箇所がないか確認と改善を行っている。その中でも、障害のある従業員のために更に踏みこんだ安全管理の見直しを行っており、それが職場環境や作業の一層の改善につながっている。
　また、念入りな配置先の選定や作業内容の洗い出しといった受け入れ準備を行うことで、障害のある従業員がそれぞれの能力やスキルに応じた活躍ができるようになってきた。そうした積み重ねにより、人手不足になりがちな現場において貴重な戦力となっている。

（2）障害者の福祉制度や配慮に関する周知
　同社では、障害者が利用できる福祉制度をプライバシーに配慮しながら社内に周知するようにしている。福祉制度のメリットや、障害雇用に関する会社方針や配慮内容などを理解してもらうことが目的であるが、周知を契機に障害者手帳を取得する従業員もおり、制度の利用や必要な配慮の提供につながっている。手帳の所得はあくまでも強制ではなく本人の意思によるところであるが、制度のメリットを理解し、社内の障害に対するきめ細かい配慮を目の当たりにしているからこそ、取得する決心がついたのではないかと筆者は感じた。