（1）事業所の概要
　株式会社みつわランドリー（以下「当社」という。）は、栃木県那須塩原市に昭和41（1966）年9月17日設立。平成10（1998）に社内事情で経営陣が一新され、現在に至っている。
　一大観光地である栃木県の那須・塩原地域の観光施設（ホテル・旅館）を主な受注先としている。宿泊施設に求められる高品質商品をフレキシブルに、清潔・安心・安全をお客様にお届けし　また、寝具リースの部門でも、安らぎと快適さをお届けすることをモットーとしている。

（2）障害者雇用の経緯
　新会社となってから、平成11（1999）年に障害者を新規雇用。
　その後、平成26（2014）年派遣会社と契約し、15名の人材の派遣を受けたが、その中に3名の障害者が含まれていた。
　5年後の令和1年に派遣会社との契約を解除し、当時派遣されていた17名（前述の障害者3名を含む）全員を当社の従業員として採用した。これが当社にとって本格的な障害者雇用のきっかけとなっている。
　最初の方と3名の方は、全員ともこちらが作業手順を丁寧に説明・指導すれば、ラインの作業を指示通り正確に実践することができ、その成果は当初の期待以上であったので、その後の採用につながり、現在、10名の障害のある従業員が働いている。

 

　障害のある従業員の主な業務はクリーニング作業（機械）補助作業である。
　当社ではホテルリネン（シーツ、ホーフ、ピロケース、タオル類、浴衣など）を扱っており、各作業場に障害のある従業員が配置されている。
　基本的な作業手順は洗濯した物を専用機械に仕上げ結束後、専用ラックに保管するという作業である。
　リネン製品によって機械の設定を変える必要があるが、このような作業は障害のない従業員が対応するようにルールを決めているが、いつの日かこの業務を障害のある従業員に任せることができることを願っている。
　機械で仕上げる作業は、簡素化を図り比較的簡単な作業とし生産効率を上げるため、スピードが要求される。そのため、各自の能力に合わせ、適材適所を判断し、配置を決めている。また、定期的に現場のリーダーとのヒアリングを実施、現場での課題、改善点を確認している。まずは、固定した配置にするが、その後の状況を見て適材適所を確認しながらその現場に合わない場合は、そのラインのメンバーとも相談し、苦手な部分を克服させるという視点ではなく、優れているところを見つけだし、その部分を生かせるように配置転換を実施している。その際、必ず、周囲の意見も確認しながら進めるようにしている。また、当社は高齢の従業員も多く雇用しており、障害のある従業員と高齢の従業員の偏りがないように、バランスを考え配置している。
次にクリーニング業務で働くAさんを紹介する。
 

【Aさん（知的障害・30歳代）の場合】
　Aさんは入社2年でピロライン（宿泊施設の枕カバーを専用に仕上げるライン）に所属し、ピロケースの機械対応に精通している。処理スピードも早く適切な配置と考えている。
　以前は、別のラインを担当し、ピロラインへの異動についてはうまく対応できるか懸念はしていたが、異動することにより本人も前向きに取り組み、明るく作業をしているように思え会社としても安心している。また、ピロライン全体の生産も上げられるようになった。　
　
＜Aさんのコメント＞
　「入社当時は仕事がちゃんとできるか不安でしたが、周りの方が優しく接してくれたので、仕事に慣れることができました。担当が変わった時も丁寧に教えてもらったので、助かりました。仕事に対してやりがいも感じているし、明るい職場なので、いつまでもここで仕事をしていきたいと思っています。」

 

　60歳以上の従業員は45名で全体の3分の1を占めており、高齢の従業員が多い職場であるが、彼らは非常に面倒見がよく、障害のある従業員を上手くサポートしている。自分の子供、孫という感覚で目配り、気配り、思いやりを常に心がけ、障害のある従業員の就労意欲を引き立て、労働生産性の向上、職場環境の維持、障害のある従業員の雇用継続につながっていることは間違いないと思える。
　リネン業という性質から工場は夏になると室内が高温になり、熱中症のリスクが高くなる。高齢の従業員が多い当社ではそのリスクは非常に高い。障害のある従業員にとってもリスクは同じであり、暑さ対策は重要であるので、対策として休憩時間をこまめに設け（1時間に1回）、アイスベストや保冷剤を支給し、休憩所は常に冷房で涼を保ち、熱中症などの事故のない職場環境の維持に努めている。
　また当社では障害のある従業員と障害のない従業員の融和を目的に、社内行事として年に2回レクリエーションを実施している。また、毎月1回お昼に管理職が料理を作り、従業員全員に振舞っている。現在は新型コロナウイルスの影響で実施できていないのが残念である。コロナ終息後は従業員にも好評であるので引続き継続実施したい。併せて、親会社の社長から従業員へのねぎらいとして年6回「豪華弁当や、ドーナッツなど」がプレゼントされている。従業員全員が楽しみにしているが、特に障害のある従業員の「ご馳走様」の明るい言葉が職場を明るく和やかに変えてくれる。
　このような取組の効果もあり、平成11年の採用以後、障害のある従業員からは一人も退職者が出ていない。障害のある従業員にとって働きやすい魅力ある職場となっている証（あかし）であると思う。
　そして、このコロナ禍のため、受注先である那須・塩原地域の観光業は大打撃を受け、当社も非常に厳しい状況が続いているが、解雇者は一人も出していない。
　やむを得ず、多少従業員にも負担を強いる部分もあるが、今の雇用を守ることを第一に取り組んでいる。
　また、近隣（那須塩原市）にある障害者支援施設（太陽の里）にタオルのたたみ作業を依頼しており、当社としては非常に良好な関係を保っている。今後、同施設から当社への障害者雇用のひとつの道筋となればと思っている。