生きていくなかで人は様々な困難や課題、例えば病気やけが、加齢などに直面し、働きづらさを抱えることがある。同社は、そうした働きづらさを抱えた人であっても働きやすい会社、それぞれのライフスタイルに合わせた働き方ができる職場環境づくりに積極的に取り組んできた。そうした取組が評価され、宮崎県知事から働きやすい職場「ひなたの極（きわみ）」（「注」参照）の認証も受けている。
　同社がそうした取組に至ったのは創業時に遡る、創業時、家族4名のほかには、身体障害のある社員1名、知的障害のある社員1名、60歳以上のパート5名の11名でスタートした。経営が苦しい創業当時から高齢者、女性、障害者に助けられ支えられ少しずつ業務を拡大し、新規の事業展開を実現してきた。そうした方は何らかの働きづらさをお持ちの方々かもしれないが、同社ではすばらしい「人財」であり戦力である。同社では、いわゆる優秀な人材を求めるのではなく、働きづらさを抱えている多様な人材を雇用し、いかにイキイキと働いてもらい戦力化するかを課題として掲げ、チームで相互の信頼関係を築く体制や、柔軟な働き方を可能にする制度と、それができる社風を作り上げてきた背景がある。

注．宮崎県独自の認証制度。仕事と生活の調和の実現に向けた職場環境づくりを積極的に行っている企業や事業所のうち、特に優れた企業などを「働きやすい職場『ひなたの極』」として県知事が認証するもので、令和3年3月31日現在、32社が認証されている。

 

　本稿の作成に当たり、宮崎モデルの利用者、支援員からも話を伺った。最後にそれらを紹介し、まとめとする。

(1)利用者の声
　話を伺うと、「私はプロですから」と誇りを持って話す方もおり、させられる仕事ではなく「やりがい」を感じて仕事をしていることが実感できた。それ以外にも次のような声を聞くことができた。
　「清掃業務はチームで同じユニフォームを着用する。そのユニフォームを着るとチームの連帯感や責任を心地よく感じることができて嬉しい。」
　「清掃は目の前できれいになるという成果が出るので達成感があり、やりがいにもつながっている。」

（2）支援員の声
　「清掃中に「ありがとう」と声をかけられたりすることもあり、社会の一員として「自分が役に立っている」という実感を利用者は持てるようになった。自分なりに清掃作業を工夫する姿も見られるようになった。」
「宮崎モデルは関係者から注目されていることから見学者などが多い。見学などで「見られる」ということが利用者のやりがいにつながり、工賃も高いために仕事への意欲が増し、欠勤が減った。」

　このように、宮崎モデルを通じて、障害者が清掃のプロフェッショナルとして就労の機会と働きがい、高い工賃を得ている。
　そして、今後も同社では自社で雇用する障害者の能力を高めるだけにとどまらず，誰もが活躍できる社会を目指し、障害者にプロの清掃を実現する活動を進めていくこととしている。
　なお、宮崎モデルについては、横浜市立大学の影山教授が次の論文で詳しく紹介している。ご興味のある方はぜひご覧いただきたい。

（参考論文）
　影山 摩子弥、(2017)「障がい者雇用におけるネットワーク的連携の意義—宮崎県中小企業家同友会クリーン事業部会の取組みに寄せて—」『横浜市立大学論叢』人文科学系列, 68, (2), 41－68．
 　https://core.ac.uk/download/228458974.pdf