（1）採用経緯など
ア　知的障害のある社員は、障害者雇用を計画的に進めていくことを社内で決めた頃に開催されたハローワーク主催の新規学卒合同面接会で面接した方である。当時は支援学校在学中の方で、同社への入社を希望し、担当の先生からの働きかけもあり採用した。
イ　精神障害のある社員は、ハローワークに障害者雇用について相談した際、障害者雇用担当官より紹介された求職者を採用した。

（2）採用時の取組
　両名の採用決定後は、入社前から外部の支援機関との連携を図り、障害特性やその対応方法についての理解を深めることに努めた。
　また、社長から現場の同僚までが障害のある社員に関する特徴や支援内容などを共有し、会社全体での障害者雇用の支援体制をつくっている。
　具体的な就労継続のための支援のポイントを以下に説明する。

ア　外部の支援機関との連携
　ハローワークや職業センター、障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」という。）と障害特性や支援方法等についての情報を共有し、役割を分担しながら連携体制を構築し、支援に取り組んでいる。
　仕事面については、両名について職業センターのジョブコーチ支援を利用しており、ジョブコーチと定期的な情報交換会を開催したり、突発的な課題が生じた時には随時相談をしながら、適切な支援方法の助言を得ている。また、会社側の思いや困り事もジョブコーチが本人にわかりやすく説明し、双方での困り事を調整してもらうことでお互いに理解し合うことができるようになった。
　生活面については、支援センターが中心となり、両名との面談を定期的に実施し、生活での困り事や今後の目標などを聞くことにより、不安の解消や励みとなっている。

イ　勤務時間の調整
　精神障害のある社員に対しては、就業時間の調整を行っている。雇用開始時は、本人の負担の少ない6時間からスタートし、段階的に延長した。時間を延長するタイミングについては、主治医の意見も参考にしながら、本人と相談し決めている。雇用開始から半年経過した時に就業時間を1時間延長し、現在は7時間勤務で働いている。今後も、8時間勤務という本人の目標の実現に向け、勤務時間を延長していく予定である。

ウ　交代勤務に対応するためのスケジュールプランの作成と支援
　製造部門は原則として交代勤務制をとっており、知的障害のある社員は交代勤務している。そのため、5つの勤務体制に対応できるように起床や就寝、出勤や電車に乗る時間などを、交代勤務の時間に合わせた生活のタイムスケジュールを本人と話し合いながら作成した。その効果として、どの勤務時間にも対応できるようになった。また、夏バテなどの体調不良での遅刻や早退もあったが、生活習慣を把握し改善することで、生活リズムが整い体調も安定するようになった。

エ　定期的な面談の実施
　月に1度の上司との面談を雇用当初から継続している。上司が障害のある社員に対して、食欲や睡眠などに関する体調のこと、業務内容や生活面での困り事をたずね、できるだけその場で悩みを一緒に解消するように努めながら、必要に応じて外部の支援機関に相談している。そうした取組により課題が生じても早期に解決できることにつながっている。

オ　社内全体での情報共有
　障害のある社員が配属されている部署の上司だけなく、必要に応じて同僚の社員にも月に1度のジョブコーチとの話し合いへの参加を促し、障害特性や関わり方について共有するとともに人間関係を深めるようにした。また、社長や役員も外部との連携会議や報告会などに参加し、トップから現場の同僚まで全員で障害のある社員への理解に努めている。
　さらには、面談や会議などの内容を記録し、関係者全員で共有することで障害特性の理解や適切な支援方法についての理解を深めることができている。

カ　課題や不安の解消
　精神障害のある社員が不安定になった際は、作業現場から気持ちの落ち着く場所に移動させ、しっかり話を聞き、できるだけ早く本人の不安や心配事を解消するよう努めている。状況によっては仕事を中断させ帰宅を促すこともある。また、主治医への状況の報告や相談を勧め、服薬や受診の内容について確認している。

キ　メモの活用
　知的障害のある社員に対しては、上司の指示や話し合った内容を必ずメモに取るように伝えるともに、メモの内容確認もしている。そのメモを見て作業をしてもらい、きちんと理解しているかどうかを確認し、不足があれば追加の指示などをしている。

ク　障害者職業生活相談員の資格の取得
　雇用担当者に障害者職業生活相談員（以下「相談員」という。）の資格を取得させるだけでなく、現場の担当者についても相談員の資格を取得させ、資格取得者を増やしながら手厚いサポート体制を整えている。