本事例の事業所（以下「事業所」という。）では、障害者の採用に際してはハローワークや障害者就業・生活支援センター(以下「支援センター」という。)等と連携しながら、ハローワークのトライアル雇用や県の短期トレーニング制度等を活用しながら採用を行っている。
対象者についても、支援センターよりこれまでの支援内容、職業上の特性、現在の病状等情報を確認し、職場実習を活用し雇用につなげた。
面接時には、ハローワーク、支援センターの担当者も同席し、対象者の就労上配慮する点等の説明を受けた。

対象者の職務の設定は、製造部門のライン作業ではなく、少人数の検査作業とした。職場の責任者が対象者との日頃の相談や作業指導を行い、体調の変化の確認や声掛けをし、ストレスを溜めないようにしている。
また、事業所では現在9名の障害のある社員（精神障害5名、知的障害4名）を雇用していることから、配属先の責任者とは別に相談等を行う担当者1名（以下「相談員」という。）を定めている。相談員は障害者職業生活相談員、メンタルケアカウンセラー、うつ病アドバイザーの資格を持っており、定期的（月に1回程度）に職場を巡回し、状況の把握や障害のある社員との相談を行っており、対象者とも相談している。事業所が相談員を配置したのは、最初に雇用した障害のある社員が精神障害者であり、専門のスタッフが必要と考えたからで、メンタルケアカウンセラー等の資格を取得したのもそうした経緯からであった。

障害のある社員に対しての作業指導者の指示は抽象的にならないように、具体的な指示を心掛けている。また、ミス等があっても感情的な言い方を避け、ミスをしたら対応策を一緒に考えるようにしている。
作業の標準化を図り、対象者の努力や作業の向上に対するフィードバック（褒めるべき時は褒める等）を心掛けている。

対象者の採用時の就業時間は9時から15時の短時間勤務から始め、段階的に柔軟な設定を行っている。勤務時間を変更する場合には、対象者だけでなく、支援センターの担当者とも相談をしながら変更をしている。
定期的な医療機関への通院も対象者の希望に合わせ、休日等のシフトを組んでいる。

社屋はログハウス調の建築であり、心が落ち着く環境である。昼食や休憩用の食堂スペースもあるが、対象者は山小屋のような休憩室で、静かに体や心を休め気分転換を図っている。

負荷の比較的軽い業務から始め、段階的に幅を広げている。
疲れや緊張感からくる体力低下を確認しながら、作業量の調整を行っている。
職場の責任者は作業のマンネリ化を防ぎながら、徐々にスキルアップできるよう目標を設定している。

対象者の同意のもと、職場の他の従業員には対象者が障害を持っていることや体調や精神面の不安定さがあること、必要となる配慮などを説明している。
職場の誰もが対象者の体調変化のサインを知ることにより、すぐに職場の責任者や相談員に情報が伝わり、相談を行うことができる。

職場では無理のないルール、無駄のない環境作りを心掛けている。
定期的に支援センターの担当者を含めケア会議を実施し、対象者の職場定着に向けて就労支援機関のサポートを受けている。