・面接時、ハローワークの職員、障害者就業・生活支援センター職員及び地域障害者職業センター（以下「職業センター」という。）のカウンセラーの同席があり、労働条件や、必要な配慮等に関する意見交換をした。
・本事例の事業所（以下「事業所」という。）は、飲食店（カフェ等）を運営する企業。

・採用前に2週間の職場実習（以下「実習」という。）を行い、実習後、ハローワークの障害者短時間トライアル雇用制度（以下「トライアル」という。）を利用した（利用期間12か月）。また、職業センターのジョブコーチ支援を利用した。
　　　注）「障害者トライアル雇用」は週20時間以上の勤務で、最長3か月を実施期間とするが、精神障害者や発達障害者の方で、
　　　　初めは週20時間以上の勤務が難しい方の場合には、「障害者短時間トライアル雇用」として、週10時間から20時間の
　　　　勤務から開始し、トライアルの期間中に週20時間以上を目指す利用も可能。

・実習期間中は、まず一日3時間勤務からスタートし、慣れてきたら、1時間延長するなど、最初から負荷をかけ過ぎないように配慮した。
・作業スケジュール等が分からないと緊張し、不安になる対象者の傾向を踏まえ、どんな業務を行うかを予め説明し見通しをつけられることで不安感を軽減した。また、実習中の担当者を決め、スケジュールを設定し、いろいろな業務を体験できるようにした。

配属店舗の店長代理を主担当者とし、店長代理が休みの場合は、他の特定の社員を副担当者と定め（以下、両者を「担当者」という。）対象者の状況把握や相談等を行った。また、対象者からの質問に対応する者もあらかじめ定めて伝えるなど、細かく決め、対象者が気軽に相談できる体制を作った。

・対象者向けに体系化されたマニュアルとまではいかないが、作業ごとに工夫をした。例えば、食器の種類が多く、その整理・収納が複雑で覚えることが大変なため、食器の写真を撮り、収納場所に掲示して一目で見て判断できるようにした。
・初出勤の際に、店舗がショッピングセンターの5階にあり、従業員専用の裏口から入らなければならないので、道順を写真で撮影し、案内図を作成し、事前に渡しておくことで迷うことなく出勤できた。

・障害特性に配慮し、すでに紹介したように短時間勤務からスタートした。実習は週5日の一日3時間勤務から、トライアルでも週4日の1日3時間からスタートし、徐々に勤務時間を増やし、トライアル終了時には週4日の1日5時間の勤務が可能となった。
・出勤の曜日に関し、当初は、週末は通院のため、平日勤務でスタートし、様子を見ながら、繁忙である土日祝日の勤務を増やすように調整した。

比較的静かな環境であるバックヤードで30分間の休憩を取り、できるだけ同じ時間でとれるように配慮し、リズムを崩さないように調整した。

・勤務当初は食器を下げる、お冷を運ぶ等、業務を細分化し、2週間のサイクルで業務量を増やしていくように調整した。
また、1か月経過ごとに、振り返りを行っていた。
・接客業務中に、不調になった場合、洗い場に下がってもらう等、ストレスが多く負担にならないように配慮している。

対象者の同意を得たうえで、働き始めた当初に、配属店舗の正社員5名には伝え、他のスタッフへは対象者が慣れた段階で必要最小限度の情報を伝え、理解を得た。
また、店舗で精神障害者を雇用するのは初めてであり、店舗スタッフがどう接して良いかわからないという悩みがあったが、トライアル雇用の前に、2週間の実習をしたことが良かった。
また、担当者に対しては、「コミック版障害者雇用マニュアル　精神障害者と働く」（発行：高齢・障害・求職者雇用支援機構）を活用し、障害に関する基本的な知識や対応方法を理解するように促した。

・事業所における様々な工夫等は、対象者（障害者）へ配慮しなくてはならないからするというより、むしろ会社側が障害者雇用に取り組むことで、幅広く勉強になるという考えで進めており、工夫の結果、社員全員が分かりやすいもの、働きやすくなるものを採り入れているものである。
・対象者の体調の把握と早めの対応に気をつけており、職業センターのジョブコーチと連携して体調チェックシートを作成し、対象者自身に記録させることで体調が悪くなった際、対象者自ら病院へ相談できるように促すなどの配慮を行った。