採用面接時には、ハローワーク窓口担当者に加えて地域障害者職業センター（以下「職業センター」という。）のカウンセラーとジョブコーチが同席。本事例の対象者（以下「対象者」という。）の受け答えを補足する形で障害特性や就労上の配慮点について説明を受けた。さらに、面接終了後にはジョブコーチによる支援予定等について説明を受けた。

本事例の法人は化学工業品の製造会社であり、事業所は製造工場（以下「同工場」という。）である。なお、対象者の採用に際しては職業センターのジョブコーチ支援を利用した。

・同工場としては知的障害者の雇用は初めてでもあるため、現場のリーダーを指導担当者（以下「リーダー」という。）とすると同時に、知的障害に対する接し方について高齢・障害・求職者雇用支援機構のコミック版マニュアルを参考にし、焦らず少しずつ仕事を覚えてもらうことを優先するよう心掛けることとした。また、指導はリーダーのみとし、複数の作業員が指導する状況にはならないよう心掛けた。
・採用時からジョブコーチ支援を利用し、同工場と対象者への必要な支援を得るため、対象者、リーダー、人事担当者の三者とジョブコーチが定期的に集まる機会を設け、状況把握、相談、助言を得る等を行った。

いすに座ってできる簡単な包装作業から就労を開始したが、物覚えが早くすぐに習得した。しかしながら同じ作業の繰返しにより、肩が凝る等の症状が出たため、資材の持ち方を少し変えてみたり、作業の合間に軽く肩をほぐすなど工夫をさせて症状を軽減するとともに、少しずつ業務量を増やしていくことができた。

現物を見せながら作業を覚えてもらうことを心掛け、包装する資材を横に並べて、かつ各資材の数量も揃え、分かりやすく順番に袋詰めするように準備し、指導することで早期の習得が実現した。

はじめからフルタイム勤務で問題はなかったが、残業はないように配慮した。

リーダーには対象者が文字を書くことが苦手であることを伝え、そうした業務がないように配慮してもらった。また、コミック版マニュアルを参考に障害の特性を把握してもらった。また、対象者に了解を得た上でリーダー以外の同僚にも障害の状況や配慮事項を伝え、理解を得た。

採用当初から職業センターのジョブコーチを利用し、対象者とリーダーに必要なアドバイスを定期的にしてもらうことで、安定的に就労できた。