本事例の事業所（以下「事業所」という。）では、障害者の採用に際しては事前に障害者を想定した職務の切り出しを行い、ハローワークと連携して情報を共有し、ハローワーク合同面接会を通じて採用を行っている。
AさんとBさんについても、ハローワークからそれぞれの職業上の特性、現在の病状、障害特性等情報を確認し、面接時には、ハローワークの担当者も同席し、両名の就労上配慮する点等の説明を受けている。

両名の職務は、製造部門のライン作業ではなく、特性を考慮して落ち着いて仕事ができる事務・清掃作業とした。
職場の責任者が両名との日頃の相談や業務指導を行い、体調の変化の確認や声掛けを行い、ストレスをためないようにしている。
また、事業所では現在5名の障害のある社員（肢体不自由1名、聴覚障害1名、精神障害3名）を雇用していることから、配属先の責任者とは別に、5名全員の相談等を行う障害者職業生活相談員1名（以下「相談員」という。）を定めている。

勤務場所

障害のある社員に対しての業務指導者の指示は、「だれが、いつ、どこで、なにを、なぜ、どのように」の5W1Hを具体的に指示することを心掛けている。また、ミス等があっても強く注意するような言い方を避け、「体調はどう？」、「困ったことはない？」と気持ちを落ち着かせるように声をかけ、ミスをした社員の業務遂行能力に比べて業務が過大でなかったか、仕事に集中できる状態であったか、今後はどうすればよいのかなど、ミスの原因と対応策を一緒に考えるようにしている。また、障害のある社員の努力や、指示・期待以上の工夫や成果を示した場合には、「よく頑張りました。」、「よく気が付きました。」等と言葉にし、褒めることを心掛けている。

両名の就業時間は9時から17時30分であるが、各人の通院状況や体調に応じて勤務時間や休日は柔軟な設定（変更）を行っている。
また、両名は障害者職業センター（以下「職業センター」という。）の支援を受けていることから、勤務時間等の変更に際しては、職業センターの担当者とも相談しながら両名の希望に合わせ変更している。

事業所では食堂に休憩用のスペースに加え、ベッドを設置した休憩室を設けており、体調が優れない従業員等の休む場所としている。両名は休憩室の方が落ちつけることから、休憩時間の休憩室利用を認められており、静かに体や心を休め気分転換を図っている。

休憩室

両名については採用時から職務の切り出しを行い、特性を把握し、配慮していることから、就労時の負担は比較的軽いが、責任者が声掛けを行いながら、疲れて言葉が少なくなっていないか、発作の兆候はないかなど、それぞれの体調を確認しながら、作業量の調整を行っている。
また、職場の責任者は両名のスキルアップを図るために、体調を見極めながら仕事の幅を広げ、体調不良によるうっかりミスを防ぎながら、無理なく業務を行えるよう目標を設定している。

障害者の採用に際しては、配属先の職場の責任者には、採用決定時に人事部門からそれぞれの障害特性や配慮事項等を伝えている。そして、配属時には、障害のある従業員の同意のもと、責任者より職場の従業員へ障害特性等を伝えている。両名についても職場の従業員に障害特性や配慮事項、相談員の役割等が伝えられている。特にAさんについてはてんかん発作があること、発作の前兆、発作時の対応等が具体的に伝えられている。このように情報共有されていることにより、なんらかの課題が生じた際には、責任者や従業員から速やかに相談員に情報が伝わり、適切な対応ができる体制を整えている。