本事例の事業所（以下「事業所」という。）では、キャリアコンサルタントの有資格者である社員A氏に「社員が働きやすい環境を整える業務」として、社員の業務上の悩みのみならず生活も含めた全般の相談を行うことを担当業務化しており、一定の権限も付与している。
対象者の採用にあたっては、トライアル雇用（以下「トライアル」という。）を実施しており、トライアルの時点から、A氏がパートナーとなり清掃業務をペアで実施し、対象者にとってストレスなく働きやすい環境を一緒に模索した。そして、トライアルの結果を踏まえ、採用後は以下を中心とした対応を行うこととした。
・必ずペアで業務を行う。
なお、採用後はA氏以外の社員もペアを組むパートナーとしている。
・出勤時刻や勤務日数など柔軟に対応する。
・いつでも相談・連絡できる体制にする。

キャリアコンサルタントであり企業在籍型職場適応援助者であるA氏を支援責任者に据えている。事業所の代表者は、支援責任者に対し、対象者の体調を最優先に配慮した業務内容や労働時間とするよう指示しており、雇い入れから日常の働き方などについて、A氏に判断を任せている。
対象者とAさんはスマートフォンのコミュニケーションアプリ「LINE」を利用し連絡をできるようにしている。

シフト制を基本としており、9時出勤、18時退勤が基本であるが、対象者の体調が整う日が不規則のため、パートナー(複数名)が出社する日全てを出勤予定日とし、その中で体調の良い日に出勤してもらうこととした。
出勤時間についても、朝がきつければ途中からの出勤も認めている。

当初は軽作業だけの業務とし、重い洗剤の運搬や掃除機をかけるなどの身体作業についてはパートナーが行っていたが、採用後3か月が過ぎた現在は体調が許せばそれらの作業も一部行っている。

本人からは病気をオープンにして働きたいとの意向があった。事業所では社員のメンタルヘルス等に留意しており、個別のカウンセリングの機会を設けている。そのためパートナーには各々のカウンセリング時に必要な説明を行い、協力を求めたところ、以前に精神疾患のある社員が就労していた経験もありスムーズに社内周知が進んだ。
また、他の部署のリーダーにも説明と協力依頼を各々に行い、各部署へも周知できている。

・疾患についてはAさんが窓口となって主治医との情報交換を行っている。疾病以外にも抱えている悩みについては各専門家への相談や支援を受けるよう助言している。
・職場適応援助者の講習会などの費用やキャリアコンサルタント資格更新に係る費用など、社員の学びや成長に対する費用は会社が支援している。