対象者には就労経験が全く無かったため、採用前から支援機関の支援や情報提供を受けたうえで3か月間の職場実習を行い、事業所としては対象者の特性や適性等の把握を行い、対象者にも就労するために必要な経験を十分に積んでもらったうえで採用を行った。また、採用後も3か月間のトライアル雇用制度を活用した。

・職場での業務指導や相談は主に施設長が行っているが、施設長が不在の時は、スタッフの看護師が対応を行っている。
・対象者は読み書きや計算は可能だが、口頭指示のみでは手順等の理解が進まないため、施設長が支援機関へも相談のうえ、本人に理解しやすいようはっきりと指示することや、写真や図によって示すことによって、徐々に仕事の手順等が理解できるようになった。

まず、職場として対象者に担当してもらいたい一日の業務スケジュール表を作成し、業務を一通り行ったうえで、本人の能力や適性を時間をかけて見極め、仕事を選定していった。

業務スケジュール表の例

対象者の適性等を見極めて仕事を選別する過程で、最初は既存の作業マニュアルを基に一緒にやってみた。しかし、マニュアルと口頭指示のみでは理解できなかったため、支援機関にも相談して、個別の作業内容のチェックシートを作成した。
チェックシートの一つの作業が終わった段階で、近くの職員に作業が終わったことを確認してもらうようにした。その後は対象者自身がチェックシートを使って一人で作業できるように何度もできるまで実施した。特に難しいシーツ交換は作業手順書や完成図を示すことにより、3か月以上の習得期間を要したものの、今では一人で作業できるようになっている。

チェックシートの例

作業手順書の例

完成図の例

9時から16時までの一日6時間の勤務時間としている。採用当初は、本人の社会経験が不足していたため、作業が終わると終業時間前に帰宅してしまったり、仕事中誰にも告げずに休憩していたりすることがあったが、その都度、職場のルールについて丹念に説明を行った結果、現在は遅刻や欠勤等もなく勤務状況は大変良好である。

本人やご家族のご了解をいただいたうえで、施設の職員全員に障害の内容や程度、特性等を説明し情報共有している。なお、説明にあたっては支援事業所で作成した「こんなことがわかります。できます。」の表を活用した。

・毎月1回の職員会議の場で、本人に関する情報交換を行っており、各職員が気付いた点等を共有し、対応策等を検討している。
・就労定着支援機関とは毎月1回3者面談（本人、職場、支援機関）を行い、仕事での困りごと等を相談しているとともに、支援機関による仕事ぶりの確認も行っている。
本人の家庭とも連絡を取り合っており、コミュニケーションがとれていることが、本人の安心感にもつながっていると思われる。