（1）取組の内容
　ア　 採用に向けた準備(1)（対外的な活動）
　　　・行政や支援機関主催の研修会　講習会への参加　
　　　・就労支援施設訪問（就労継続支援事業所Ａ・Ｂ型）
　　　・福祉施設訪問（障害者受け入れに必要な環境設備に関する情報把握）　
　　　・学校訪問（特別支援学校　公立高校）
　　　・障害者雇用事業所訪問（先行企業の情報把握）
　　　・支援機関への当社工場見学への依頼と実施
　　　・支援機関との交流会

　イ　採用に向けた準備(2)（社内活動）
　　　・社長方針の周知
　　　・社員教育（外部講師招聘）
　　　・障害者受け入れのための資格取得（精神・発達障害者しごとサポーター・障害者職業生活相談員・発達障害者就労支援講習会）
　　　・障害者の担当業務の検討と切り出し
 

ウ　募集・採用から入社まで
　　　平成29年に行った最初の採用では、障がい者総合支援センター（注）より紹介された方を採用したが、以降はハローワークや近隣の
　　特別支援学校からの採用、社員の知人の紹介など、幅広い方面からの採用を行っている。
　　　採用にあたって留意している点は、支援機関と連絡を密に取ることと、採用前に必ず工場見学をしてもらうことである。応募時に就
　　労移行支援事業所などで働いている人であれば、そこで働く様子を見学して本人の適性を確認するようにしている。また、採用の際に
　　は実習を体験してもらい、作業適性や働き方、作業環境について会社と本人及び支援機関とで確認を行っている。
　　　　注 ）「障がい者総合支援センター」は長野県が総合相談窓口として医療福祉圏域ごとに設置している。
（ア） 採用にあたっての個別の取組例
　　　・支援機関との連携を密にとる。
　　　・工場見学と実習を実施する。
　　　・実習時には実習の目的や準備品、持ち物などを文書化して本人に提示し、説明することで、安心して実習に臨めるようにした。
　　　・新たに障害者が入社する際には、そのことを全体朝礼で全社員に事前に周知した。
　　　・掲示物や各種文書の用語・表現が障害者差別に当たらないかを確認した 。
　　　・受け入れ環境を整える（配属職場に対して、総務で特性及び注意配慮事項の説明）
（イ）　雇用にあたってのポイント
　　　・焦らず無理なく雇用を進めた（政府方針も大切だが自社の受け入れ体制づくりが重要）
　　　・経営TOPの意思表明が大切
　　　・本人や家族及び関係機関と信頼関係が大切
　　　・マッチングができるまで根気よく情報交換を行う
　　　・対象者の希望と就労条件に隔たりがないこと

　ウ　定着に向けて
　　　長く安心して就労してもらうために以下を実施した。
　　　・支援体制の構築（支援機関、家庭、学校、医療機関などとの連携図の作成）　注）後出の「カ　使用している資料」の（ウ）参照
　　　・対話の実施（特性により週もしくは月単位で実施）
　　　・声掛け
　　　・日報、週報、月報の活用（関係機関との情報の共有化）　　注）後出の「カ」の（ア）及び（イ）参照
　　　・障害の有無に関係ない社員としての同等な対応（教育・研修への参加、親睦会行事への参加、ＱＣＣ活動への参加、
　　　　改善提案制度への参加）
　　　・作業指示書の工夫（写真活用による「見える化」）
　　　・指導者の選任

　エ　雇用後注意している点
　　　・プライベートな点については深入りせず支援機関に託す
　　　・常に声掛けをする
　　　・組織変更時や新入社員採用時は説明と教育を必ず行う
　　　・障害のある社員に対し働くことの重要さを説き、成長を促す（本人の意識を「就労できればよい」から、「継続して就労してい
　　　　く」に変えていく）

　オ　活用した助成金や制度
　　　・トライアル雇用助成金
　　　・特定求職者雇用開発助成金

　カ　使用している資料（週報、月報、連携図）
　（ア）週報
　　　　次の月報同様、障害のある社員ごとに作成し、本人の了解を得たうえで支援機関と共有している。

 　　　

　（イ）月報
   　


　（ウ）支援機関などとの連携図
　　　週報などと同様、障害のある社員の了解を得たうえで、支援機関などと相談して当社が作成し共有している。
　　

（2）取組の効果

ア　障害者雇用は経営理念の醸成に寄与していると感じる。具体的な数字には表せないが、障害のある社員を、障害の有無に関係なく、
　一人の人間として対応する土壌が社内にできている。
イ　受け入れ環境を整えたことと、社員の障害者雇用への理解が進んできたことにより、障害のある社員の定着が進んできている。定期
　的な対話を通じて、障害のある社員一人ひとりの適性や希望する働き方（業務内容、労働時間など）にできるだけ寄り添った雇用を進
　めてきたことも定着に寄与していると考えられる。

ウ　障害のある社員の仕事が、良い製品づくりや現場の負担軽減につながっていることが社内で理解され、周囲の社員から障害のある社員に謝意が伝えられ、それを障害のある社員が大変喜んでいるといった状況も生まれている。

（3）就労事例から

　ア　Ａさんの就労場面

　　令和3年2月入社。有期契約社員で、就業時間が入社時は一日4時間であったが、現在（令和4年6月）は、6時間から7時間に延びている。

 　　
　　　　　　　通い箱に防錆紙を入れる作業　　　　　　　　　　　　　エアーガンによる通い箱の清掃

　イ　Ｂさんの就労場面

　　　令和4年6月入社。入社に際しトライアル雇用を利用。就業時間は8時5分から14時50分。

　　　　

 　　　　　検査装置を使った測定作業　　　　　　　　　　　　　　プレス機を使って製品寸法の精度を上げる作業

（1）課題
　　ア　障害者雇用における重点課題として、「担当者の後継者育成」がある。
　　イ　障害者が継続的な雇用が確保できるか。
　
　後継者の育成に関しては、属人的要素が大きく影響するので難しい課題だが、できるだけシステム化できるとよいと考える。しかし、担当者を選任すれば人件費もかかるので経営にとっても負担である。行政で担当者設置に関する助成金制度ができれば、中小企業にとって雇用が進む一助になると考える。
　継続的な雇用に関しては、企業経営は経済状況に大きく左右されるので、雇用の機会の増や雇用安定も難しい時がある。結論は出ないかもしれないが継続的雇用できるような行政上の環境ができればよいと考える。

（2）展望
　令和3年度に当社が障害者雇用中小事業主認定「もにす」をいただいたことを、感謝申し上げたい。当社以上に雇用に尽力されている会社が多くあるなかで認定いただいたことは大変恐縮である。
　新聞発表のあと、就職希望者からの問い合わせが数件あり、1人はトライアル雇用中で（令和4年6月より）、1人はトライアルの待機中となっている。いずれも地元の方からの紹介である。「もにす」制度の効果は障害者雇用にとり有効であるが、申請手続きが複雑なので少し簡略化していただければ間口は広がると考える。
　当社では社長の方針通り『ともに働く職場』ができるよう今後も取り組んで参りたい。