責任感と自己肯定感を高め、「ずっと働きたい」
と思える職場づくりをめざして
- 事業所名
- 朝日印刷ビジネスサポート株式会社
(法人番号: 5230001018039) - 業種
- 製造業
- 所在地
- 富山県富山市
- 事業内容
- 朝日印刷株式会社の生産サポート業務や清掃・緑地管理業務など
- 従業員数
- 28名
- うち障害者数
- 20名
-
障害 人数 従事業務 聴覚・言語障害 1名 段ボール組立 知的障害 17名 工場内清掃、生産サポート業務、段ボール組立など 精神障害 2名 工場内清掃、生産サポート業務 - その他
- 特例子会社、障害者職業生活相談員
- 本事例の対象となる障害
- 聴覚・言語障害、知的障害、精神障害
- 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
朝日印刷ビジネスサポート株式会社(以下「当社」という。)は、障害者の長期的かつ安定的な雇用を目的として、朝日印刷株式会社(以下「朝日印刷」という。)の子会社として令和元(2019)年10月に設立され、同年12月に特例子会社として認定された。企業理念に「共生・理解・自立」の3つを掲げ、社員が障害の有無にかかわらず、共に生き生きと仕事に取組むことのできる共生社会の実現をめざしている。
親会社の朝日印刷グループは、本拠地富山を中心として、国内26拠点、海外2拠点、グループ会社5社で構成され、医薬品・化粧品分野をコアとする印刷包材事業を展開している。
当社は、朝日印刷の工場敷地内に位置し、主に工場内にて印刷・包装資材製造補助業務、清掃・緑地管理業務など様々な業務を請け負っている。
(2)障害者雇用の経緯
平成28(2016)年に親会社朝日印刷では、創業200年を見据えた「200年会議」が開催され、新事業の創設案を全社員から募集した。その際、「特例子会社設立」のプレゼンが採用され、新規プロジェクトとして事業化が決定した。障害者雇用に対する理解、積極的な賛同が多くの社員から得られたこともスムーズな立ち上げにつながったといえる。
当時、朝日印刷ではグループ企業も含め、すでに障害者雇用を進めていたものの、配属された工場や人事部門からは、「障害特性などに応じた仕事の準備などに必要な上司などの負担が大きい。」、「補助的業務であることから正社員化は難しい。」、「育成や処遇が配属現場に任せられているが、なかなか難しい。」などの声が寄せられ、一層の生産性の向上や、障害特性に応じた組織的な雇用管理体制の構築などが求められていた。また、法改正によりアップした法定雇用率に対応するための体制整備なども喫緊に求められていた。
当社は、これらの課題への対応を期待され、朝日印刷グループの重点課題である「障害者の就業機会を創出し、企業の社会的責任(CSR)を果たす」という役割も担い、誕生することとなった。
2. 障害者の従事業務と職場配置
(1)富山工場、木型製作所
12名の障害のある社員が富山工場内の清掃業務、製造補助業務を幅広く行っている。
清掃業務は、工場内、食堂、休憩所、廊下、階段、会議室、見学者用通路、工場の外周等の各清掃箇所をスケジュールに従い分担している。
また主な製造補助業務は、印刷用樹脂版戻し、打抜用テンプレート板の清掃、プラスチックコンテナ(プラコン)の清掃、使用済み水性ニス缶の洗浄、使用済みインキ缶の清掃、ペパーラボ(乾式オフィス製紙機)の管理・運営がある。また、上記メンバーのうち2名が、木型製作所(富山工場から車で10分ほど)へ移動し、製作所全体の清掃業務を一手に行っている。基本的には2名から3名をひとつのチームとし、チームにより業務を行い、一人で一日4種類程度の業務を受け持つため、朝礼で指示されたスケジュールを把握し行動できること、またチームワークが必要なため協調性が求められる現場である。

背負い テーブル拭き モップ 外周清掃 樹脂版戻し

テンプレート清掃 プラコン清掃 ニス缶洗浄 インキ缶清掃 ペーパーラボ管理
(2)富山第二工場
段ボール組立作業とバーコード印刷機の給紙(製品の供給)作業を主に行っており、監督者1名が常駐し6名の障害のある社員が業務に就いている。ここでは、段ボール作成のために当社の社員がメインとなる専用スペースを確保してもらっている。聴覚に障害を持つ社員Aさんは、慣れた環境の中で、監督者や固定メンバーとのコミュニケーションを上手に取りながら、安心して仕事に従事している。
同じフロア内にあるバーコード印刷機の給紙作業は、製品を機内にスムーズに投入するための器用な手さばき、手早さが要求される。また製品の面番号別に仕分ける計算処理力、理解力が必要であり難易度の高い仕事である。

段ボール組立 バーコード印刷機の給紙
(3)富山東工場
段ボール組立作業と製函機の給紙作業を主に行っている。2名の障害のある社員が配置され、生産に直結する業務である両業務に就いている。最初はトライアル的に当社の社員と工場側とのマッチングを行い、一人で作業が完結できる状況まで当社の監督者が同行しサポートに入った。現在は、工場側に現場の担当の方を決めてもらいその方を窓口とし、当日の仕事内容をホワイトボードに提示してもらうなど、様々な配慮をいただいている。当社の監督者と工場側の監督者が連絡を密にとり、お互い協力しながらサポート体制がとれる良好な関係を築いている。

段ボール組立 製函機の給紙
3. 取組の内容と効果
現在、障害のある社員20名に対し監督者を5名配置し、少人数グループ制で個々の特性に配慮した業務サポートを行なっている。挨拶や声掛けを徹底し、コミュニケーションツールとして業務日報の活用、ホワイトボードによるスケジュールの見える化、定期的な個別面談、悩み相談窓口BOX・メールの開設など、様々な手法を取り入れ、「風通しのよい職場づくり」をめざしている。その中でも特に力を注いだ取組を紹介する。
(1) 本人主体のサポート体制強化への取組
ア.業務日報の活用
業務日報(以下「日報」という。)は、何度かバージョンアップを重ね、バイタルチェック、通勤状況、衛生管理、一日の業務の振り返り、疲れ具合などを記入しやすく工夫した。また定期面談とリンクさせて、長期(上期・下期)目標と短期(今週)目標を決めて記入する欄を設けた。業務面だけではなく、体調やメンタル面へのサポートも重視している。朝礼時と終礼時に一人ひとりと対話し、本人から聴き取る時間を大切にしている。また異変に気付き、対応が必要と感じた際は、監督者一同でミーティングを開催し、情報共有や対策を練っている。日報は毎日持ち帰りご家族の確認をお願いしており、日頃から連絡事項欄を活用し、情報交換を積極的に行っている。

業務日報の例
【効果】
・各自、自己管理に努める習慣がついてきた。
・本人の体調、疲労度の可視化、その他の訴えなどの早期発見につながる。
・目標を意識しながら業務に挑みモチベーションアップにつながっている。
・終礼では、「うまくいったこと、いかなかったこと」を発表し、日報とリンクして自己の振り返りに役立てている。
・ご家族からの協力や理解を得やすい。
イ.外部支援機関との連携
特例子会社設立時より、監督者全員の「障害者職業生活相談員」の資格取得を目指すほか、セミナーへの参加や特例子会社の見学などを積極的に行い、障害者雇用のノウハウを学んだ。また中央障害者雇用情報センターの障害者雇用支援ネットワークコーディネーターの紹介で、県外の特例子会社を見学するチャンスを生かし、ヒアリング内容やそのほかの好事例集などを参考にし、当社の方向性を確立していった。
富山障害者職業センターや富山障害者就業・生活支援センター、障害者就労定着サポーター(※1)などと継続的に連携し、定期的な定着面談、困難事例の相談、入社後のアフターフォローなどもお願いしている。令和4(2022)年7月には、当社の監督者が企業在籍型職場適応援助者(企業在籍型ジョブコーチ)の養成研修を修了し、ジョブコーチによる支援もできるようになった。また、産業医との専属契約により、専門的な視点からの支援を取り入れている。
※1 富山県独自のもので、特別支援学校から企業へ就労された方を対象に、就労定着のために企業側やその方の相談や支援を行っている。
【効果】
・実際の現場を見学することにより、障害者雇用への理解を深め、自分たちのビジョンを見出すことができた。
・就業支援ワーカーからのアドバイス、障害者職業生活相談員資格の挑戦、冊子の定期購読など、日常的に学びの機会を設けること
で、監督者のアグレッシブな姿勢の育成やレベルアップが図れる。
・障害のある社員への就労生活に対する専門的な支援・助言により、障害のある社員本人だけでなく監督者側の安心感やストレス
軽減にもつながる。
(2)新規業務開拓への取組
朝日印刷グループにおけるSDGsに向けた目標に対する取組の一つに「障害者が安心して働くことができる環境をつくり、令和5(2023)年を一つの目標に特例子会社において22名の雇用をめざす。」と宣言している。
当社は、働きやすい環境を維持し、職場定着促進の強化を図るとともに、雇用を安定させるため新規業務の開拓にも力を注いでいる。
ア.新規業務の開拓(障害に応じた新しい仕事づくり)の取組の流れ
(ア)各工場の責任者から現場ニーズの聴き取りを行う。
(イ)障害のある方の活躍可能な作業内容を整理する。
(ウ)工場責任者と打合せを重ね、作業を切り出し、表にまとめた。
下の表1に示すのは富山工場について作成したものである。

(表1) 新規業務切り出し表
(エ)表1の中から作業の難易度、安全性などを考慮して、実際の担当者も想定したスケジュールに落とし込み(表2参照)、トライア
ルとして実施した。

(表2)トライアルのスケジュール表
(オ)トライアル後、工場の管理監督者と当社とで評価のすり合わせを行い、本格的な導入に向けた作業の設定、留意点、課題などに
ついて整理した(表3参照)。

(表3) トライアルの評価表
(カ)親会社から業務受注する際は、作業手順を整理し、障害のある社員が理解しやすい作業手順書を作成する。


(表4) 作業手順書の例
(キ)障害や特性を考慮しながら、ひとりひとりの適性と業務とのマッチングを行い、スタート。作業状況を確認しながら、必要な
サポートを行い、定着を図っていく。
イ.新設備の管理・運営委託とリーダーの育成
令和4(2022)年度の新事業である「ペーパーラボ(乾式オフィス製紙機)の管理・運営業務」は、当社が一貫して行う初の仕事となった。新しい試みとして、障害のある社員Bさんをチームリーダーとして選出し育成することにもトライした。Bさんはこの業務の立ち上げ当初から主要メンバーとして参加し、機械操作やメンテナンス作業をマスター、また業務工程の考案から作業手順書作成まで試行錯誤しつつ完成させた。その知識と手順書をもとにほかのメンバーの指導係として活躍している。今後は、各自が責任を持ち、自分たちで考え業務を進める方向性を目指している。そのためにもこのリーダー育成の仕組をどのようにほかの業務・部門に展開・定着させていくかが課題となる。
・大きな組織を持つ親会社の利点を生かし、信頼関係を築きながら安定した新規業務開拓のサイクルシステム(新規作業の引き合い⇒新規業務
の受託⇒トライアル⇒作業の標準化⇒親会社の評価)を構築している。
・より多くの人材確保の実現を可能にする。
・社員一人ひとりの新たな可能性の発見、活躍できるチャンスを広げる。
・新しいお仕事にトライするワクワク感と緊張感で、社員全体のモチベーションをアップ。
・障害のある社員に責任を持たせる仕組をつくり、自己肯定感を高める。お互いに協力し合う力や向上心を生む土台とする。
4. 今後の展望と課題
当社は、上記以外にも障害者雇用について常にアンテナを張り、必要であれば、積極的に取り入れまた柔軟に変革していくことを心がけている。
令和3(2021)年12月には、障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)において、富山県初の認定特例子会社として選定された。認定基準をクリアするためには、障害者雇用への取組、成果、情報開示など数多くの要件を報告書としてまとめて提出する必要があった。認定を受けるまでは幾度も再提出を求められ苦労したが、そのおかげで認識不足であった部分や改善点などが明確になった。支援機関とのやりとりの記録、面談における個別の課題設定、支援計画書のまとめ方など詳細な記録の必要性を実感し、新たに見直すきっかけとなった。認定に挑戦したことで、支援体制の更なる強化が図れたと振り返っている。
もにす認定を受けたことにより、今までの業績を認められたという喜びと同時に、企業が果たすべき社会貢献に対する責任がより強くなったと感じる。設立当初から、他社のモデルなど多くの事例を参考に手探り状態で事業を展開してきたが、今後は他社を後押しできる存在になっていきたい。
今後の展望と課題として、以下の二点を挙げる。
一つ目は、「障害者の自立と社会参加の促進をめざして、今後も学ぶスタイルは継続し、地道な努力を積み重ね障害者雇用に取組んでいく。」ことである。
二つ目は、「障害者雇用の根底となるノーマライゼーションの理念『障害のある人もない人も互いに支え合い、地域で生き生きと明るく豊かに暮らしていける社会』の実現に貢献していくため、我々の企業活動を社会にアピールしていきたい。」ということである。
執筆者:朝日印刷ビジネスサポート株式会社
取締役 管理本部長 朝日 利美
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