必要不可欠なビルメンテナンス業の今後と障害者雇用について
2022年度掲載
- 事業所名
- 徳島美装工業株式会社
（法人番号: 9480001001734） - 業種
- サービス業
- 所在地
- 徳島県徳島市
- 事業内容
- ビルメンテナンス業・マンション経営
- 従業員数
- 116名
- うち障害者数
- 8名
-
障害 人数 従事業務 聴覚・言語障害 1名 清掃 肢体不自由 1名 清掃 内部障害 1名 知的障害 4名 清掃 精神障害 1名 清掃 - 本事例の対象となる障害
- 聴覚・言語障害、肢体不自由、内部障害、知的障害、精神障害
- 目次
-
事業所（本社）外観1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
徳島美装工業株式会社（以下「当社」という。）は、昭和33（1958）年創業の現在64年目に入るビルメンテナンス業・マンション経営を中心とした事業を行っている企業である。
企業理念として、「私達は、快適環境創造業として、お客様に選んでいただける強い企業となります」を品質方針に掲げ、地域に存在してよかったと思われる企業を目指している。
「ビルメンテナンス業」というと「どんな仕事？」と聞かれることが多く、「ビルや病院・商業施設を清掃している仕事」と答えると皆さんに理解していただける。
現在、8名の障害のある従業員を雇用しているが、中には20年を超えて勤務している従業員が2名在籍する。この2名は肢体不自由のある従業員と聴覚障害のある従業員であるが、長年の経験から業務に支障なく当社の貴重な戦力となっている。
また、平成29（2017）年から、一般社団法人 徳島ビルメンテナンス協会からの紹介で、特別支援学校と連携をとるようになり、現在では年に数名の生徒が就業体験の場として職場実習（以下「実習」という。）を行うようになっている。
この実習を通じて、平成30（2018）年の卒業生から知的障害者3名を雇用したのがきっかけとなり、現在も特別支援学校との連携を続けている。2. 障害者の従事業務と職場配置
（1）従事業務
当社の障害のある従業員は主に「清掃業務」を担当として、ビルや商業施設の清掃に従事し、ゴミの回収やフロアの清掃などを行っている。特別支援学校を卒業した方については、授業の一環で「ビルクリーニング」の清掃業務を疑似体験しているため、雇用後すぐに戦力となっている。
（2）職場配置
当社が現在清掃業務を請け負っている県内の施設7か所に配置している。それぞれの職場には従業員を1名から10名程度配置している。銀行や公的機関には知的障害のある従業員を1～2名ずつ、そのほかの職場に身体障害のある従業員1名、精神障害のある従業員1名を配置している。
当社は、障害の有無に関係なく希望があれば入社当初より「正規従業員」として契約を行っている。
また、雇用後に関しても障害による雇用条件・職場配置上の違いはなく、「特別」に何かの区別をすることなく清掃業務に従事してもらっている。障害に応じて配慮していることを強いていうならば、知的障害のある者については、「現場責任者」を配置している現場へ配属するようにして、何か困ったことがあった場合にすぐに対処できるようにしている（現場責任者は従業員が3名以上の現場に配置しており、リーダー的な役割を担っている）。
（3）教育機関などとの連携
「正規従業員」としてすぐに雇用できる理由として、特別支援学校の卒業生については一人の生徒について年に数回（一回につき2週間）の実習を当社で行っていることと、授業の中でもビルクリ—ニングに関する学習が取り入れられていることがあげられる。そしてこれらは大きな強みとなっている。
生徒は実習で実際のビルクリーニングを体験でき、「実施にはどんな仕事なのか、自分はこの仕事に向いているか、仕事を続けられるか」を理解するとともに、当社はその生徒が「この業務に合っているか」の適性を確認することができる。
特別支援学校の先生方も非常に「ビルクリーニング」に力を入れており、また徳島県教育委員会特別支援教育課においては、「ビルクリーニング検定」や「ビルクリーニング甲子園」などを実施している。そうした学校や先生方の尽力のおかげで、雇用後もすぐに戦力として業務に従事していただくことができていると感じている。
当社には特別支援学校の卒業生のほかにも、ハローワークなどからの紹介により雇用された方もいるが、どの方も同じ職場で働く仲間とともに課題を解決することを学び成長しており、現場責任者も障害の有無に関係なく対応することにつながっている。
当社にとっては、8名全員が「人財」であり、非常に心強い存在となっている。
屋外の清掃作業
建物内の清掃作業3. 取組の内容と効果
（1）取組内容
特別支援学校の卒業生については、現在でも卒業した学校の担当教諭と「連携」「連絡」を取り合いながら現在に至っている。連携を継続していることで、学校からの信頼につながり実習先として利用していただき、次の雇用にもつながっていると感じている。
なお、当社では学校の授業などにはなかった「ワックスがけ」や「カーペットクリーニング」が業務の内容にある。この2つの業務については、現場責任者が現場でＯＪＴにより指導をすることとしている。特別な道具や機器を使用することがあるため、ケガや事故につながらないように細心の注意を払いながら、指導にあたっている。
また、現場責任者が常駐していない現場には、他現場の現場責任者が定期的に出向き、相談や状況把握などを行っている。
（2）効果
先輩にあたる従業員からは、現場に高校を卒業した「初々しい」従業員が入社すると現場がとても明るくなり、目を輝かせながら働いている姿に「初心を取り戻せる」との声を聞いている。
障害のある従業員については、毎年開催されている高齢・障害・求職者雇用支援機構主催の「アビリンピック徳島大会」にも積極的に出場している。昨年（令和3年）度は銀賞・銅賞を受賞し、今年度の大会でも銀賞の受賞者を輩出できている。
また、定期的に「ワックスがけ」や「カーペットクリーニング」などの新たな業務に関する研修の機会を設け、受講によりモチベーションを高めること、「自分はステップアップしている」ことが実感として得られるように心がけている。
そして、障害のある者と障害のない者が同じ場所で従事することで、お互いを思いやり、働く「意欲」をもたらす相乗効果があると経営者として感じている。4. 今後の展望と課題
（1）課題
先日あるネットニュースにて、ビルクリーニング業は「底辺の仕事ランキング」に選出されたという記事が載っていた。昔よくいわれた「3Ｋ（きつい・きたない・給料が安い）」に当てはまるということらしい。
しかし、この記事が掲載されたあと、ビルクリーニング業関係者の間では別の内容がちょっとした話題になっている。世間的には、我々の業務がどれだけ「必要」であるかということが分かったとの意見が見受けられた。
「ビルメンテナンス」の中の1つの業務であるビル・商業施設の清掃は、毎日が同じことの繰り返しである。
当社は、この毎日同じ繰り返しの業務に「達成感」や「満足感」をどれだけ提供できるか、自分の業務内容に「誇り」を持って働いていく環境をどうやって作っていくかを課題として掲げている。
また、障害者の法定雇用率が令和3（2021）年3月に2.3％となった。これからも法定雇用率が上がっていくことは容易に想像でき、障害者雇用率が上がるとともに障害者の雇用先が増える一方、我々のような事業所側は人材の確保が難しくなってくることも予想できる。
日本が全体的に「人手不足」といわれているなか、障害の有無に関わらず人手を確保するために先に記事でもあったとおり賃金の改善なども課題となってくる。
（2）展望
「ビルメンテナンス（清掃）」はなくてはならない業務である。商業施設へ行くと通路・フードコート・トイレなど様々なところを利用すると思う。きっと、通路やトイレが汚れていれば不快な気持ちになるし、その悪い記憶が残る。
しかし、お客様は何気なく通路を通り、フードコートのゴミ箱にゴミを捨て、トイレを利用していると思う。
この「何気なく」利用できているということは、我々のようなビルメンテナンス関係の従業員が「誇り」をもって業務に従事し、気持ちよく施設などを利用してもらおうという強い気持ちが反映しているからである。
そして、それが「当たり前」ではなく、「ビルメンテナンス（清掃）」をしている人がいるからだと認知してもらえるよう、これからの業務に当社も励んでいきたい。
また、毎年出場している「アビリンピック」でも、当社から「金賞」受賞者を輩出し、ぜひとも「全国アビリンピック大会」へ出場し、モチベーションを上げ日々の業務に従事してほしいと心から願っている。
執筆者： 徳島美装工業株式会社
代表取締役 東條 陽平
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