（1）事業所の概要

　昭和55（1980）年7月に山形県酒田市に創立された社会福祉法人光風会（以下「光風会」という。）は、翌56（1981）年には特別養護老人ホーム芙蓉荘をスタートさせ、以来40年以上にわたり高齢者と障害者の支援を行ってきた。現在の事業内容は3つの第1種社会福祉事業の特別養護老人ホーム、地域密着型介護老人福祉施設、障害者支援施設をはじめ、第2種社会福祉事業の介護老人保健施設、通所介護、短期入所生活介護、障害福祉サービス、グループホーム、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション、訪問介護、居宅介護支援、そして公益事業の地域包括支援事業など23の事業を行っている。さらに職員の福利厚生として保育サポート事業を展開している。

　事業を行うにあたって「私たちは、利用者に信頼される行動によって、期待に応える多様な福祉サービスを提供することで社会に貢献します」を経営理念としている。

（2）障害者雇用の経緯

　これまで光風会はハローワークや、地域にある就労移行支援事業所、特別支援学校、障害者相談支援事業所、障害者就業・生活支援センターなどからの紹介で主に知的障害者、精神障害者を雇用してきた。また、各種機関・施設からの職場実習（以下「実習」という。）受け入れの依頼にも応え、それが本採用につながることもある。

　例えば、後で紹介するAさんは精神障害のある方で、光風会応募時にヘルパー2級を持っており、就労移行支援事業所から介護員としての雇用を前提としての実習依頼を受けた。3か月の実習実施後、光風会はAさんとの面接を行い、Aさんはパート職員として採用されることになった。

（1）身体障害のある職員

　身体障害のある職員は現在5名いるが、採用時から障害があったのではなく、在職中に肢体不自由や内部障害の障害を持つに至っている。そのため、職場配置も仕事の実績と資格に応じた配置となっている。サービス管理責任者や支援員、ケアワーカーなど直接利用者に関わる業務を担当している人と、事務員として働いている人がいる。
 

（2）知的障害のある職員、精神障害のある職員

　知的障害のある職員と精神障害のある職員はそれぞれ2名ずついる。それぞれの特性に応じて、清掃業務や寝具交換、洗濯たたみ、利用者の食事支援・移動支援などに従事している。

　そのなかで、精神障害のあるAさんは、ヘルパー2級を持っているので、介護員として配属された介護老人保健施設で、リフトなどを使わない入浴介助、食事介助、オムツ交換、水分補給、ホール見守りなど介護業務全般に従事している。最初はパートとして採用され、労働時間を少しずつ延長し、現在は正職員と同様の週40時間程度の勤務で働いている。

（1）取組の内容

（ア）知的障害者、精神障害者への配慮

　知的障害のある職員、精神障害のある職員には、急な予定変更や業務の追加に対応することが苦手な傾向がある。そうした場合には、分からないことがあっても自分からは確認ができず、作業が止まってしまったり、自分に都合が良いやり方に変えてしまったりすることもある。そこで変更などがあった場合には周囲の職員が随時声かけを行って様子を見るようにしている。また、戸惑っている場合などでは必要に応じて、付き添いながら仕事のやり方を細かく指導するようにしている。

（イ）職務内容の検討

　過去に雇用していた知的障害のある方（以下「Ｂさん」という。）で、同じ仕事に7～8年従事していた人がいた。知的障害者や精神障害者のなかには変化を苦手とする人が少なくなく、同じ仕事を担当したほうが力を発揮できる場合もあるが、同じ仕事ばかりだと「マンネリ」を感じてしまう人もいる。Ｂさんもそうであり、マンネリを感じるようになり、ほかの理由もあって結局退職に至った。このことから、光風会では、担当業務の内容を本人の状況と希望に応じて変えていくことも必要だと考え、本人との面談などで状況や希望を確認し、必要があれば担当業務の変更を実施している。

（ウ）コミュニケーションの重視と相談しやすい雰囲気づくり

光風会では障害のある職員とのコミュニケーションを重視している。

例えば、専門的な介護業務を行っているAさんに対しては、精神面を含む、健康管理、体調管理に配慮するため、コミュニケーションを多くとるようにしている。仕事の手順や仕事内容で分からないことがないかの確認もこまめに行うようにしている。具体的には、Aさんに入職後1か月の間、一日の業務内容をノートに記録してもらい、そこに分からないことを書いてもらっていた。上司はそのノートを通してAさんに仕事を覚えてもらうとともに、Aさんが困っていること、疑問に思うことを早めに把握し、指導・支援につなげていった。さらに「分からないことは聞いていいのだ」という「質問しやすい雰囲気」もつくっていった。現在、ノートはなくても、Aさんはわからないことがあれば、職員に口頭で相談している。光風会でも定期的な面談時間を設けてはいるが、それに限らずAさんが相談したいときはいつでも相談できるよう直属上司は心掛けている。

（2）取組の効果

　先の取組により、知的障害のある職員、精神障害のある職員は遅刻・欠勤をすることなく働いている。身体障害のある職員についても同様である。特にAさんについては、本人が正職員への登用に向けて介護福祉士の資格取得を目指し頑張っており、光風会としても応援している。

また、障害のある職員と一緒に職場で働くことで周りの職員がいろいろなことに気づき、相互に協力する雰囲気が職場全体でますます高まっている。