株式会社あおぞらケアセンター（以下「同社」という。）は現在の代表取締役である藤田　元人氏（以下「代表」という。）が平成13年に有限会社あおぞらヘルパーステーションを設立したことから始まった。その後、平成18年に株式会社あおぞらケアセンターに商号変更し、現在では住宅型有料老人ホームあすか苑、介護付有料老人ホーム第２あすか苑、グループホームあおぞら、小規模多機能型居宅介護あおぞら／第２あおぞら、デイサービスあおぞら夢などの施設を展開している。
　また、平成24年には別法人として和歌山県紀の川市に株式会社あおぞらケアセンター紀の川を、和歌山市内には株式会社ケアサービスあおぞらを設立した。そこでは居宅支援・訪問介護を中心にサービスを行っており、このように同社は和歌山市を中心に幅広く介護事業を営んでいる。現在の社員数は145名であり、代表のモットーである「お一人おひとりを大切に。笑顔と真心でお手伝い」を掲げ、日々仕事に取り組まれている。
　同社の障害者雇用のきっかけは、代表の知人からの紹介であった。住宅型の老人施設を開設した際に、障害のある方を「そちらの施設で働かせてもらえないか」と相談を受け、採用したことが始まりである。代表は障害のある子供を持つ友人がおり、障害児を持つ親の苦労や不安を以前から知っていた。そのため、高齢者が多く働く自らの施設で、障害者雇用も進めていけないかと考えていたこともあり、新たな取組として障害のある方を社員として受け入れることを決めた。

　その後、施設の新設とともに障害者雇用を積極的に進めた結果、現在雇用している障害のある社員は17名で、配属はあすか苑4名、第２あすか苑5名、グループホームあおぞら6名、デイサービスあおぞら夢2名となっている。

障害のある社員の従事業務は介護施設業務全般であり、施設の掃除、食事の配膳からレクリエーション、入浴介助などの身体介助までその人のできることに合わせて仕事を任せている。各施設の主任がその人にならできると思った仕事を任せるが、同じ仕事のみを継続して行ってもらうのではなく、少しずつできることを増やしていくようにしている。また、勤務時間についても入職当初は短時間勤務で職場環境に慣れてもらい、本人の希望があれば主任の推薦によって8時間勤務に変更するなど、個人のステップアップを第一に考えて勤務時間や職場配置を決めている。その際、代表は各主任に対し、在籍年数などで判断するのではなく、一人ひとりの能力を見て判断するように指示しており、無理のないよう気を付けている。

（1）取組の内容

ア．家族や外部支援機関との連携

　障害のある社員の雇用が進むにつれ、中には、家庭でのストレス行動や職場での気分の落ち込みなどの課題が出てきた。そうした場合には、必要に応じて外部の支援機関の支援担当者（和歌山障害者職業センターのジョブコーチや障害者就業・生活支援センターの担当者、時には当該社員の卒業校の先生）にも間に入ってもらいながら、生活や職場での様子を当該社員の家族と同社の担当者とで相互に情報共有し、対応している。家族や外部の支援担当者と連携することで課題の解決につながることも多い。

イ．社外での講習会参加と見学

　障害のある社員とともに働くには、障害に対しての知識が必要であると考え、（独）高齢・障害・求職者雇用支援機構（以下「機構」という。）主催の障害者職業生活相談員資格認定講習に各施設の担当者を参加させた。同社では現時点で7名が当該講習を受講済みである。また、障害者雇用に熱心に取り組んでいる自治体である岡山県総社市を訪問し、手本となる雇用事例の情報収集を行ったり、和歌山市内の特別支援学校の授業参観に参加するなど、多方面から障害に対しての知識を深めることにも努めている。

ウ．採用から配属先の決定、異動についての配慮

　法人内には複数の施設があるため、障害のある方を採用する際は各施設の主任全員で面談を行い、どこの施設に配属するのがよいか検討している。その上で、通勤距離や担当となる主任との相性なども考慮し、その人にとって一番働きやすいと思われる配属先を決めている。また、主任が人事異動する場合には、担当主任を変更しない方がよいと思われる障害のある社員には、本人の意向を聞いた上で担当主任と同じ配属先に異動するなどの配慮を行い、働きやすい職場環境を整えている。

エ．会議による社内での徹底した情報共有

　同社の業務上の情報共有と意見交換を進め、複数ある施設間での横の連携をとるため、階層別の会議（主要者会議、リーダー会議、スタッフ会議）を行っている。

各施設の主任、副主任、ケアマネージャーに役員も同席して行うのが“主要者会議”で、そこで話し合われた内容を各施設に持ち帰った主任などが各施設のリーダー、施設の各階ごとにいる副リーダーと共有するのが“リーダー会議”である。また、リーダー会議の内容を全スタッフに周知するための“スタッフ会議（夜勤会議）”があり、それぞれ月に1回行われる。そして、そのいずれにも役員が可能な限り出席し、特別な問題や課題がある際は、“臨時会議”を開くなど、施設間での情報共有と意見交換を欠かさない。

　主要者会議で話し合われる内容は、各施設での課題であるが、障害のある社員の働きぶりなどの情報についても共有を行い、対応策についても意見交換が行われる。このことから、現場が別で一緒に働いたことのない障害のある社員についても、各施設の主要メンバーは詳細を知っており、対処法も理解するなどノウハウの共有もなされている。

主要者会議の内容はリーダー会議でも周知されるため、各施設のリーダーも障害のある社員について情報を得ることができる。

スタッフ会議には障害のある社員も参加するため、そこで障害のある社員の課題などについて話し合われることはないが、主任やリーダーが率先して障害のある社員と休憩時間に対象者と雑談をしたり、一緒に仕事をすることで、各人の特性や接し方が自然とスタッフにも理解されている。そして、スタッフが障害のある社員と日常的に接し、見守り、理解することにつながっている。このため、スタッフが障害のある社員のいつもと違う様子を見ると、主任やリーダーなどに報告することが今ではごく自然に行われている。例えば、障害のある社員との雑談の中で、最近趣味に手をつけていないことや、ネガティブなことをSNS上で発信しているなど、いつもと様子が違うことに気が付くと、それを障害者職業生活相談員である担当者報告し、担当者や当該社員とよく話す社員から声をかけたり、それとなく電話したり食事に誘って話を聞くなど、職場全体（上司、先輩、同僚）で自然に相談に乗るようにしている。

　新入社員が現場に入ってきた際は、新任研修時に障害のある社員についての説明が行われ、皆がどのように配慮しているかなどを伝え、対応に困らないようにしている。

オ．日々の仕事への取組と工夫

　　　
　　　　　　　　　　掲示されている一日のスケジュール表
　　　　　　　　　　　（内容は毎日更新されている）


　障害のある社員については、それぞれがどこでどのような作業を行う予定となっているかが一目でわかる毎日のスケジュール表を施設ごとに作成している（上のスケジュール表を参照）。スケジュール表は各施設の事務室に掲示され、障害のある社員がスケジュールを確認する際や各施設内での情報共有に活用されている。

　今後の障害者雇用への取組については、今在籍している方々の継続雇用だけでなく、新規採用も進めていこうと考えている。

同社は平成30年度高年齢者雇用開発コンテストの機構理事長表彰特別賞受賞企業でもあるが、「高齢者の方々については高齢者施設の運営と雇用により、また、障害者の方々については雇用により支援を進めてきたが、ほかの形でも何か支援できないか考えている。」との思いが代表にはある。

　また、代表は「障害があって社会に出にくい人や、働く場の少ない高齢者、引きこもりの若者も社会に出て働く喜びや幸せを感じてもらい、生きがいを見つけて頑張ってほしいという気持ちがあり、障害者雇用に取り組んできた。これからもそのような方々を受け入れて、一人でも多くの人に働く場を提供していきたい。」と今後の展望を語ってくださった。