ともに学びともに成長できる、
働きがいのある環境づくり
- 事業所名
- 住宅情報センター株式会社
(法人番号: 4360001013738) - 業種
- 不動産業
- 所在地
- 沖縄県宮古島市
- 事業内容
- 不動産物件の売買、賃貸の仲介・管理、貸コンテナ、貸パーキング事業
- 従業員数
- 67名
- うち障害者数
- 3名
-
障害 人数 従事業務 知的障害 3名 アパートの賃貸管理(清掃)業務 - 本事例の対象となる障害
- 知的障害
- 目次
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事業所外観
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事務所の概要
「住宅情報センター株式会社」(以下「当社」という。)は平成4(1992)年に創業し、不動産物件の売買・賃貸の仲介業、賃貸物件や駐車場の管理業、リフォームや損害保険などを主業務とする宮古島に本社を置く会社である。当社は、「あなたもよくなれ わたしもよくなれ みんなよくなれ」を経営理念に掲げ、長期的な展望に立った地域密着型経営と、多くのお客様のお役に立つ会社であることを目指している。
(2)障害者雇用の経緯
障害者については、平成22(2010)年から地元の特別支援学校(以下「支援学校」という。)との交流をきっかけに職場実習(以下「実習」という。)を受入れ、翌年(平成23年)から雇用するようになった。当社は以前から地域との交流を大切にしており、宮古島で行われる障害者との交流会やイベントなどにも積極的に参画している。
その後も当社は継続的に障害者雇用を進め、現在3名の障害のある社員が働いている。
本稿ではそのうちのひとりであるAさんを中心に当社の取組を紹介する。障害者雇用の初年度に雇用したAさんは、現在、当社で管理しているアパートの清掃業務を担っている。以前は事務作業を担当していたが、その当時に習得したアパートに関する情報などを活かしながら現在の業務を行っている。Aさんは勤続10年以上のベテラン社員として当社で活躍している。
2. 障害者の従事業務とできることに合わせた職場配置
Aさんは入社当時、営業部門の入口でお客様をお迎えする業務や、事務補助の業務を主に行っていた。採用当初は、読字や話の内容を理解することが苦手で、朝礼などでの資料読みが上手くできなかったり、相手の質問の意図を理解することが難しい時には適切に応対できなかったりするなど苦戦する場面が見られた。しかしながら、資料の漢字に前もってフリガナを記載して読めるようにするなどの事前準備を徹底することにより苦手な読字を克服しようと取り組み、力をつけていった。その後、多くの業務スキルを習得していき、賃貸の領収書や明細などの事務処理、営業社員の事務補助、スキャナー処理などの事務を担当していたが、本人からの清掃業務をやってみたいという希望もあり、部署異動し、現在は当社で管理しているアパートの清掃業務に従事している。清掃業務は基本的にペアでの業務対応のため、ペアの社員と協力して段取りよく清掃ができるように努めている。
物件管理作業(ポストの清掃)に取り組むAさん
物件管理作業(駐車場の清掃)に取り組むAさん
障害者の採用にあたり、当社では実習を体験していただくこととしている。採用後の配置については、実習の状況などで把握した職業能力や作業適性、および本人の希望を踏まえた配置となる。実習は一日6時間程度の作業時間で行うが、体力的に問題がなく、本人の能力や希望によりフルタイム(当社の通常勤務である8時間)での勤務が可能であると判断した場合にはフルタイムでの勤務に変更する、高度な作業に取り組むことが可能であると判断した場合には配置転換を行うなど柔軟な職場配置を行っている。
Aさんは苦手だった読字などを周囲との協力により克服しようとする姿勢が評価され、内部事務のみならず接客業務や物件・スケジュールの管理まで任されるようになった。
接客業務では、物件居住者の質問に対して受け答えを行うなど、相手の質問の意図を理解し即座に対応する必要がある。Aさんも1人では対応に苦慮することが多々あったものの、共に働く社員の協力を得ながら接客応対を繰り返し行うことで、徐々に、上手に対応するスキルを身につけることができた。
物件・スケジュール管理についても、Aさんにとっては挑戦であった。膨大な数の物件の名称を覚えることや業務を予定時間通りに終わらせるスケジュール管理に苦戦するときもあったが、物件の一覧リストを作成し、確実に覚えようとするなど積極的に業務に取り組んだ。スケジュール管理についても一人では解決が難しかったことから、出勤時に周囲の社員と当日中に処理すべき業務の進め方についての話し合いを行うことから始めることにした。
周囲の社員と話し合いながら業務を進める中で、Aさんにとって処理しやすいスケジュール管理の方法は、午前中にすべきこと、午後にすべきこと、当日中にすべきことを明確にして、段階的に時間を区切って行うことであると気付くことができた。そして、その日ごとに時間を区切った計画を作り、取り組んだ結果、徐々に計画通りに業務をこなすことができるようになり、現在では月単位のスケジュールを計画し、業務の進行状況を把握して処理を行っている。そして管理物件の清掃業務をスケジュールに沿ってペアで巡回する業務を着実に行っている。
3. 取組の内容と効果
(1)取組の内容
ア 募集・採用
当社では、「就業体験は雇用する側、される側、双方が勤務を継続できるかを見極めるよい機会となる」という考えから、採用活動の際は支援学校、障害者就業・生活支援センター(以下「支援センター」という。)と連携し、ミスマッチをできるだけ減らすために、実際の仕事を体験する実習を行い、採用している。実習を体験したうえで入社を希望される場合は、面談と選考を行い、採用を決定する。入社後は、個々人の性格・能力・得意分野を十分に活かし、やりがいを持って業務ができるような配置を行っている。
イ 採用後の個別の取組内容など
(ア)環境づくり
障害のある社員がすぐに馴染めるよう、そして、本人が周囲の社員と協力して業務に取り組めるよう、新たに受入れる際には、配属部署の社員に対して事前に本人の障害状況や配慮事項の周知を行っている。その後も定期的にフォローを行うことで本人が相談しやすい環境となっている。
さらに、障害のある社員が自律できる環境づくりに取り組んでおり、各人の就業状況について、本人が必ず日報に記載するようにしている。日誌には、一日の業務内容や行動とともに、感じたことや悩みごとなども書くようにしており、上司などが確認している。日誌の取組は、本人が日々書くことと後日に振り返ることで自身の状況を理解し、今後すべきことを自分で考え行動する力を養ってほしいという会社の思いを込めている。また、日誌をもとに周囲の社員が障害のある社員への適切なサポートができることも目指している。実際に、自分自身でスケジュール管理を行えるようになると、周囲の社員と協力してより積極的に仕事に取り組めるようになる。周囲の社員も障害のある社員に適切な指示を出したりできるようになる。そして、ともに成長できる環境を整えることにつながっている。
(イ)就労支援機関などとの連携
支援センターなどとも連携し、障害のある社員と支援センター担当者との二者で定期的に面談を行うなど、仕事や生活面での相談などを通じて不安を取り除くよう努めている。それぞれの家族ともコミュニケーションを取り、家庭の様子や勤務内容などの情報交換も行っている。また、支援学校では卒業生を対象にスポーツレクリエーションや一人暮らしを支援するセミナーなどを開催している。当社の社員がそうしたイベントに参加できるように勤務時間の調整も行っており、参加することで本人の気分転換や社会生活面での成長につながっている。そのほかにも、新たに障害者の雇用を行う場合には、支援センターなどへの情報提供など、採用に向けた働きかけを行っている。
(ウ)職業能力開発への取組
職場配置については、前述のとおり、本人の希望及び適性により柔軟に対応することを基本としている。そして、より様々な職業能力を必要とする業務にチャレンジできるような配置転換を行っている。
また、自動車運転免許の取得を奨励し、取得後はマイカー通勤や社用車の運転をしてもらうなど仕事や生活面での充実を図っている。Aさんも採用後の免許取得が現在のアパート清掃業務に生かされているが、教習時には勤務時間などでの配慮を行っている。
(2)取組の効果
ア 社内の変化
障害者雇用に取り組んだ初年度はAさんおひとりの採用で、Aさんと周囲の社員はお互いに不安に感じたりすることがあった。しかし当社の社員同士が協力しやすいような環境づくりの取組(情報提供や日誌など)と、Aさんの周囲と協力して課題を解決しようとする姿勢が、障害を「個人で解決すべき課題」としてではなく、ほかの社員と同じように「得意なことを伸ばし、そうでないことは皆で協力する」こととして捉えてもらうことができた。そのような環境の中でAさんは、自らの積極的に気付いて準備する行動力を十分発揮できるようになり、評価された。そして、社内ボランティア活動の際も積極的に自ら周囲の社員に声をかけ参加を促すなど、周囲から頼りにされる存在として会社全体に良い影響を与えている。
イ 優秀勤労障害者表彰受賞
Aさんのこれまでの努力、当社の取組により、令和元(2019)年に優秀勤労障害者として「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞」を受賞した。Aさんは受賞を喜ぶとともに「会社のみなさんのおかげです。」と同僚の皆様への感謝を表していた。当社の担当者も「本人の努力が一番大切。私たちも喜ばしいし、Aさんには私たちも多くを教えられてきたので感謝しています。」とお互いに感謝の言葉を交わしていた。その後もAさんは以前と変わりなく日々の業務をこなし、さらに朝礼での音読の声がより出せるようになったり、感想や意見が言えるようになったりと日々の成長を重ねている。
4. 今後の展望と課題
障害者雇用は、雇用する会社と働く障害者個人との1対1の取組のみでなく、地域社会や家族、学校などと連携し、国や県のサポート制度を活用して本人を含めたみんなでひとつになって考えることが重要であると当社は感じている。複数の機関と協力しながら実施する就業体験(実習)は、雇用する側にとってもされる側にとっても長く勤務を継続できるか見極める良い機会となる。現在は新型コロナウイルスの影響で支援学校などからの就業体験も実施が難しい状況にあるが、再開されれば今後も継続して実施していきたい。
当社の経験から、障害者雇用で最も大切なのは、最初の一歩を踏み出すことと環境づくりだと感じている。多くの企業がもっと障害者とともに働く環境を作ることで障害者雇用の素晴らしさを知り、会社も地域も「みんなよくなる」社会になることを願っている。
執筆者:住宅情報センター株式会社
総務経理部 部門長 上田 真弓
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