大正11（1922）年に有限責任信用組合静岡共同金庫として創立、その後改組や名称変更を行い、昭和23（1948）年に現在の静清信用金庫（せいしんしんようきんこ：以下「同事業所」という。）に改称した。預金業務、貸出業務、内国・外国為替業務、国債・証券投資信託、生保・損保の窓口販売などを事業内容として、地域のお客さまには「せいしん」の名で親しまれている。

令和4（2022）年3月11日には創立100周年を迎え、今後も地域に必要とされ信頼される信用金庫であり続けるように、これまで培ってきたコンサルティング能力により一層磨きをかけて、顧客や地域の発展に貢献していく考えである。

　同事業所の経営理念である「1.地域社会の繁栄に貢献する。2.お客様の信頼にこたえる。3.よき信用金庫人をめざす。」のもと、静岡市を中心に焼津市・藤枝市を営業地域として現在42店舗体制で事業展開している。

　金融機関の健全性を表す自己資本比率は15.46％（令和4（2022）年3月期現在）で、国内基準（4％）を大きく上回っている。

（2）障害者雇用の経緯

　同事業所は、地域金融機関として、中小企業の発展と取引先の豊かな暮らしへの貢献に取組んでいる。

　障害のある人に限らず、職員を地域から雇用することを社会貢献のひとつと考えている。

障害者雇用については、昭和57（1982）年に身体障害者１名を事務職として採用したことに始まる。以降、障害者就職面接会への参加や、社会福祉法人や国立障害者リハビリテーションセンターからの紹介、就労継続支援Ｂ型施設からの紹介など、さまざまなケースから積極的に障害者雇用を実施しており、平成21（2009）年には実雇用率1.86％となり、当時の法定雇用率1.8％を上回った。

　障害者雇用に関する表彰歴として、平成25（2013）年に障害者雇用優良事業所として静岡県知事褒賞を受賞、令和3（2021）年に厚生労働大臣表彰を受賞している。

　また、静岡県では障害を理由とする差別を解消するための取組に関して、特に顕著な功績が認められる団体を表彰しているが、同事業所は令和3（2021）年に知事褒賞を受賞している。

具体的には、表計算ソフトなどを利用しての集計作業・分析資料の作成、人事労務関連システムによる人事・労務管理・報告集計の作業、メール便の仕分け作業、ファックス関連の管理業務、営業店への配付作業、融資事務関連（報告、集計など）、事務担当部での各種オペレーション及び営業店対応、営業店での受付事務全般、相談業務補佐など、多岐にわたっている。

　採用に携わる部署では、各配属先部署の職員の理解を求めながら、障害のある職員が長く働いて行くことができるよう配慮に心掛けている。

障害者雇用に取り組んだ結果、現在14名の障害のある職員が活躍している。障害のある職員の真面目な性格や一生懸命仕事に取組む姿勢が、周りにいる職員に対して与える影響が大きいと感じているとのことであった。

障害のある職員本人のスキルアップのため、ほかの職員と同様に業務研修や業務指導を行うこととしている。例えば、新入職員の入庫後に行われる新職員研修には、障害のある職員も一緒に参加させ、社会人としてのマナー講座や電話応対などの研修も受講させている。

また、障害の特性により集合による研修が適さない者については、個別にチェックリスト・マニュアルを作成して、所属先の担当者（以下「担当者」という。）が繰り返し個別指導を行っている。こうした個別的な取組には時間はかかるが効果は後に確実に表れてくる。特に、電話応対においては本人の対応能力が入庫時に比べ格段に向上している例が多く見られる。

さらに、担当者が仕事を行う順番を明確に提示し、項目ごとに完了をチェックするなど理解しやすい工夫が現場においてなされている。

　雇用後の適性に応じた管理の例としては、知的障害のある職員を業務に就かせる際には、一度に指示する作業はひとつまでと決め、一日の作業の流れをリストにして書き出し、必ずひとつ終了するごとに上司や担当者の検印を受けさせるなどの工夫をしている。

また、パソコンスキルが高く、知識と技術がある障害のある職員に対しては、その能力を最大限発揮できる本部の専門部署に配属させ、多岐にわたる資料の作成や、豊富な知識を活かし、ほかの職員の教育指導をさせている。

障害のある職員の活躍の場が広がることにより、そこに所属する職員全体の事務負担の軽減につながることはもちろん、障害のある職員自身が戦力化することで自立へとつながっている。

　そのほかにも、車いすでの出入りを考慮したスロープの設置、車いす対応のトイレの設置、視覚障害のある職員用のパソコン入力作業補助のための拡大読書機の導入、車いすでの移動の際の介助などの職員間での協力体制の構築など、ソフト面・ハード面の両面から、障害のある職員の働きやすさに配慮した環境改善を行っている。　

また、定期的に本人と上司などとの面談の機会を設けること、相談しやすい環境づくりの体制整備（担当者から上司などへの連絡体制の構築）や、就業面での本人の体調を考慮し休憩できる休憩室の整備など、業務に当たっての支援体制の整備も行っている。

なお、面談の機会は少なくとも年4回程度設けており、配属先の部店長が行っている。また、精神障害のある職員については、ほかの障害のある職員よりも面談の機会を多く設けるなど、障害の種類・特性に応じた配慮をできるだけ心掛けている。

(2)そのほかの取組と効果

ア　事業所内での製品販売など

　同事業所では障害者の活動に関する様々な支援も行っている。

本部においては、授産施設製造のお菓子販売（お菓子ボックスの設置）やパン販売を定期的に受け入れるなど、障害者施設との連携も図っている（ただし、ここ数年は新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から休止している）。
  また、営業店においては、ロビー展（特別支援学校の生徒の作品を紹介するコーナー）の常時設置、障害者の作品（絵画・塗り絵など）のロビー展示、駐車場を障害者の作品販売場所として提供するなど、各営業店ごとに工夫を凝らして実施している。

イ　対外的な活動（講師派遣など）

外部の支援機関主催の障害者雇用に関する会合や就労支援部会における同事業所の障害者雇用の取組事例の紹介、障害者施設スタッフや施設利用者向けのマナー講座における講師をはじめ、高齢・障害・求職者雇用支援機構静岡支部実施の障害者職業生活相談員資格認定講習の講師、授産施設の工賃向上実現のためのセミナーなどでの講師として職員を派遣している。そうした活動を通じて、行政機関、関係機関、そのほかの事業所との結びつきは深く、地域の障害者雇用の進展に対する貢献度も高い。

　これからも障害のある方への職場の提供や仕事の提供は企業の責務と捉えて、個々に障害の程度や能力・仕事の質や量を見極めて、適材適所への配置に努めていくとのことである。障害者雇用は、障害のある方を雇用すれば良いというわけではなく、戦力として最大限の能力が発揮できるように周りが支援して、仕事を確実にこなすことを実現していくことが勤務継続の要件であり、障害のある方の自立につながると考えているとのことであった。