対象者は障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」という。）と地域障害者職業センター（以下「職業センター」という。）の支援を受けていた。
本事例の事業所（以下「事業所」という。）はハローワークの紹介を受けたが、採用前に2週間（実施日数7日）の職場実習（以下「実習」という。）を行った。実習前には支援センターと職業センターで事業所を訪問し、本人の特性をもとにできる仕事を洗い出し、本人がどの作業がどのくらい取り組めるか、どうすれば取り組みやすいかを実習中に把握するため、職務チェックシート（資料1参照）を作成した。
実習は県の就労体験実習制度を活用して行い、実習期間中は支援センターが中心となって支援を行った。実習後、職務チェックシートをもとに振り返り会議を開き、就職に向けての課題について話し合った。その後、あらためて採用面接を行い、面接には支援センターが同席した。

資料1　職務チェックシート

実習と面接を経て採用が決まったが、対象者が安心して働くには人的サポートが必要と思われたため、就職に際しては職業センターのジョブコーチ支援を利用している。
ジョブコーチは3か月間、週に1～2回程度訪問し、職務チェックシートを活用し支援を行った。具体的には、対象者が作業に集中しすぎたときに次の仕事に切り替えができるか、水分補給を忘れていないかといった見守りを行った。また、対象者は育児との両立をするにあたって、子供が熱を出して急な休みを取ることで周りに迷惑をかけているのではないかという不安があったため、安心して働けるように声掛けを行うなどの支援を行った。

複数の人から指示があると混乱してしまうため、指導等の担当者は配属施設の管理者（以下「管理者」という。）に限定している。
対象者と管理者は週1回の面談を行うこととしており、面談では対象者が作成した振り返りシート（自己評価と感想が記載されている）をもとに就労状況を確認するほか、不安なことや勤務の希望等があれば相談できるようにしている。

対象者が自分の仕事内容を理解しやすいように、事業所では職務分析シート（資料2参照）を実習段階から作成している。職務分析シートは、一日の仕事の流れを把握できるように、時間、仕事の内容、場所、必要な道具、ルールが1枚にまとめられている。対象者の仕事は天候で変わる部分があるが、職務分析シートには雨の日・晴れの日の場合の洗濯の仕方や掃除の場所等もわかりやすく記載されているため、対象者の働きやすさにつながっており、現在も引き続き活用している。
作業の中で、足りないもの、補充が必要なものがある場合は管理者に報告して指示を受けているが、対象者が仕事に慣れてきたこともあり、シーツ交換等は交換の時間であっても施設の利用者が在室している場合は後にまわすなど、その場の様子を見て臨機応変にできるようになった。職務分析シートがあれば一日の仕事をスムーズに進められるため、今後の新たな仕事として考えている書類の三つ折りなどの事務作業についても、職務分析シートを活用することを事業所では検討している。

資料2　職務分析シート

出退勤時間については現在も子育て中ということもあり、対象者の希望を聞いて設定している。勤務はシフト制となっているため、子供に関する予定等がある日は休みが取れるように調整している。

対象者に障害があることは施設内で共有しており、仕事の面で配慮事項等を伝える必要があるときは管理者を通して伝達するようにしている。

・事業所内での相談担当は管理者としているが、困ったことがあれば対象者・管理者のどちらからでも支援センターに相談できるようにしている。
・子供がまだ小さく、急に熱を出すこともあり、休みを取ることがあるが、仕事と育児の両立は「お互い様」の精神で事業所全体が協力できるようにしている。