対象者は、以前から就労移行支援事業所（以下「支援事業所」という。）を利用していた。支援事業所は対象者の障害特性や配慮すべき点等について熟知していることから、本事例の事業所（以下「事業所」という。）は支援事業所に依頼し、採用面接時に支援事業所の担当者が同席した。支援事業所の担当者が同席することで対象者はリラックスでき、自分の強みや配慮してほしいことなどをスムーズに話せた。また、担当者からも対象者の状況や配慮すべき点等について説明があり、事業所では必要な情報等を十分確認することができた。

対象者の配属にあたって、社交不安障害の障害特性に配慮するとともに、対象者本人の得意分野である情報システム業務に専念してもらうために、総務部業務を細分化して部署を新設した。

社内担当者として役員である上司と、情報システム業務の担当者（以下「システム担当者」という。）を定めている。上司とシステム担当者はそれぞれ対象者と週に1度の業務上のミーティングを行うほか、3か月に1度の3者面談も定例的に実施し、業務遂行状況や対象者の状況確認等を行っている。

事業所では業務の標準化・質の確保等のために、業務別に内容を一覧にした資料、その業務を習得するためのスキル表や作業手順書を作成している。また、社員が新たな業務を担当する場合には3か月毎の教育訓練計画書に基づき、指導担当者がフォローしている。次に掲載するのは、スキル表、作業手順書、教育訓練計画書の例である。対象者も担当業務に応じたスキル表等に基づきシステム担当者等からの教育・指導が行われた。

スキル表

作業手順書の例（「入金入力作業業務要領書」

教育訓練計画書

対象者の体調の変化を感じた場合や、体調が悪く休みが続くような場合、上司等は面談を実施し、長期で休みにならないような働き方や配慮を本人と検討するようにしている。

車通勤を可能にしており、車での休憩ができるようになっている。

事業所の正社員は週40時間勤務が基本であるが、それが難しい社員については週30時間勤務を選択できる短時間正社員制度を設けている。対象者の場合も、入社当初の負担を軽減する方が良いと思われたことから週30時間で勤務を開始し、現在は週40時間勤務となっている。

本人の同意を得て、業務上関わりがある人には、本人の特性を説明している。

障害者就業・生活支援センターの担当者が定着支援で入っており、本人の希望があれば面談を実施している。