以前、環境システムズが行っている、一般・産業廃棄物の収集、選別、リサイクル業務における選別作業をオートメーション化する計画が検討された際に、社長から「機械化するのではなく、障害者を雇用し、人の手で行う業務として残したい」という強い思いが示され、障害者の雇用について本格的に会社として取り組む事となった。

社長が障害者雇用に強い思いを持つきっかけとなったのは、若い時に近くのアパートに住んでいた障害者が窓を閉め切り、カーテンも一切開けず孤立した生活を送っているのを見ていたことがきっかけであった。

このことから、同社では、障害者だからといって自立できないような給与・業務内容にするのではなく、自立した社会人として胸を張って活躍してもらいたいという考えがベースにある。

障害者雇用を開始したのは平成19年からであり、最初は障害者雇用の経験・知識がゼロからのスタートであった。そのため、当初は右も左もわからない状態であったが、関係機関の指導や支援を何度も活用し、障害のある従業員が人材として成長できるように努めてきた。その成果により、これまでに雇用した障害のある従業員については定年以外の離職はほとんどなく、勤続10年以上の障害のある従業員は現在6名となっている。

　そのほか、先に紹介したイーブリッジでは農場の運営と自社生産した野菜などを使用したうどん店の運営も行っており、その店舗にも同社の従業員が勤務している。

(1)健常者・障害者に関わらず『最初はできなくても当たり前』である。

　(2)時間をかけて訓練すれば必ずできるようになる。(経験則から2～3年はかかる)

　(3)障害者に対しても伝えるべきことは伝え、指導すべきことは厳しく指導する。特に賃金を受け取り、自立する大変さ・満足感をつたえ
　　ていく。

　(4)いったん採用したら、人財として家族と同じように大切にする。

　この考えに基づき、一人ひとりの障害のある従業員と粘り強く向き合ってきている。そうした取組が効果をあげた事例を次に紹介する。

（1）Ａさんについて

　Ａさんは中度知的障害のある方で、特別支援学校在学中に同社での職場実習を経験し、卒業後に3年の職親制度を経ての採用である。

　Ａさんが実習で来ていた当時は、入り口で泣いてなかなか入ってくることができなかったり、靴を履き替えるときに靴を高いところから落としたりなどの行為があり、継続して働くことは困難と周りは考えていたが、社長の「長い目でみて、本人の得意なことを見つけること、家族のように親身に接すること。」という強い意志がトップダウンで示され、障害があることで特別扱いをすることなく、注意すべきことがあればしっかりと注意すること、課題があれば親身に対応するということを徹底し指導に当たった。その結果、前述のような行動は徐々になくなっていき、また指導する従業員（以下「担当者」という。）側もだんだんと声や行動で何を訴えたいのかが理解できるようになっていき、担当者側の障害者雇用に対する考え方も改まっていった。

　今、Ａさんは、ペットボトルの選別作業を行っている。業務内容は体でしっかりと覚えているため、ラインに立てば社内の誰よりもテキパキと作業を行っている。また毎日出勤すると、自発的にまず社長に挨拶し、今日は何の仕事をするのかを報告することを欠かさない。

　Ａさんは、今では正社員として当社に欠かせない人財となっている。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ペットボトル選別作業を行うＡさん

（2）全体の取組
　身体障害のある方については、不自由な部分をサポートすればある程度の生活と仕事ができる。しかし、知的障害や精神障害のある方については仕事面だけでなく、生活面や通勤環境などでの支援も必要であるという考えのもと、同社では仕事以外の場面であっても、家族同然のサポートを行っている。

支援体制としては、11名の障害のある従業員に対して7名の障害者職業生活相談員を配置し、仕事面と生活面両方の支援を満遍なく行っている。

仕事面では、障害があるということで優しい指導で済ますのではなく、指示・指導ははっきりと行い、時には厳しい指導になることもある。また、口頭での指導は忘れてしまうことや場合によっては労働災害などの大きな事故にもなりかねないため、根気強く何度も指導し、体が覚えるように長い目を持って指導している。

生活面では、あいさつの徹底、通勤時の交通ルールについて徹底した指導を行っている。社内に居るときの支援だけでなく、親がシングルの家庭など家庭環境は様々であるため、経営理念の１つである「全従業員は財産である」という考えのもと、障害のある従業員本人が親元から離れても自立して生活ができるように、洗濯が苦手な職員がいれば、職場に洗濯機を設置して使い方を教えたり、靴を履きつぶしてボロボロになっていれば、新しい靴を支給したりするなど、身の回りのことでサポートが必要であれば、個別に対応している。

これまで、特別支援学校や国の重度知的障害者総合施設などからの依頼により職場実習生を200名以上受け入れてきている。実習では仕事内容についての指導よりも職業人としての心構えや社内における人間関係について学んでもらうことを重視している。仕事が多少できたとしても、社内で人間関係がうまく築けなければ、孤立してしまい、結果として働きにくい環境となってしまうことから、本人が働きやすい環境づくりに気を配れるようにと配慮している。
 実習終了後に作成する実習生の評価では、同社の評価は極めて厳しいと特別支援学校の先生などから言われることが多い。これは、同社では受け入れた実習生に対し、真に同社で雇用することを前提に真剣に向き合っている結果である。訓練を重ねれば必ずできるようになること、また賃金を得ることの大変さを理解してもらうためにも、あえて厳しい評価をしているが、実習生の実習前後で写真を記録していると、胸を張って前向きに成長している姿が見え、保護者からも喜んでもらえているとのことである。

　同社では、従業員全体の交流ということで、季節ごとに何かしらのイベントごとは行ってきたが、大々的に法人内で交流会を行い障害の垣根を越えて親睦を深め、仕事面でもお互いが安心して協力できる環境づくりを行っていきたいと考えている。

　同社の方針である、「障害があろうとなかろうと最初からできる者などいないこと」、また「時間をかけて指導すれば必ずものになること」、「従業員は家族同然に大切にする」という考えのもと、これからも障害者雇用を進めていくこととしている。

なお、現在は知的障害のある従業員の比率が多くなっているが、今後はイーブリッジの業務拡大（畜産＝羊放牧）を図り、障害者雇用による農福連携を進めていくことを視野に精神障害者の雇用についても考えていく予定である。