社員は宝~社員の幸せ向上を目指す~
- 事業所名
- 株式会社こんの
(法人番号: 2380001000505) - 業種
- 卸売・小売業
- 所在地
- 福島県福島市
- 事業内容
- 古紙及び再生資源の卸売
- 従業員数
- 158名
- うち障害者数
- 11名
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障害 人数 従事業務 肢体不自由 1名 古紙・資源物の選別作業 知的障害 8名 古紙・資源物の選別作業 精神障害 2名 古紙・資源物の選別作業 - 本事例の対象となる障害
- 肢体不自由、知的障害、精神障害
- 目次
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本社社屋全景福島営業所全景
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
株式会社こんの(以下「同社」という。)は昭和32(1957)年の設立で、再生資源卸売が主要事業である。福島県福島市に本社を置き、県内のほか、宮城県、東京都及び埼玉県内に8つの営業所があり、また、フランチャイズ事業として2つの飲食系店舗を運営している。
同社は古紙などの再生資源の回収、卸売、廃棄物の収集運搬などを通じて、グローバルな視野で環境保全を地道に確実に実践している。同社の厳しい選別作業により分別された資源物は、品質が良く高い評価を得ている。社員教育にも力を入れており、レベル向上のために様々な研修が行われるほか、地域の清掃活動などを通じた社会貢献活動も積極的に行われている。(2)障害者雇用の経緯
ア.契機と就労状況
同社現社長の紺野道昭氏(以下「社長」という。)は、「社員は宝~社員の幸せ向上を目指す~」の考えのもと、自身を社員の幸せ向上担当として、社員一人ひとりが働きがいを持って活躍できる環境づくりを目指している。
そうした取組を続ける中で社長は、社員の70%以上が障害者である日本理化学工業株式会社の障害者雇用の取組を目の当たりにして感銘を受け、企業の障害者雇用の重要さを感じ、自社としてどのように障害者雇用に取り組むべきかを模索しながら、10年以上前から障害者雇用に取り組んでいる。平成24(2012)年に初めて障害者を雇用して以来、徐々に障害者を雇用していたが、人を大切にする経営学会会長の法政大学坂本教授の「日本国民の7.6%が何らかの障害を抱えているのだから、企業はその割合以上の障害者雇用を推し進めなければならない」という教えを受け、より積極的に障害者雇用に取り組むこととした。
現在は会社の全拠点に障害者を1名以上採用するという目標で障害者雇用を進めており、現在は5事業所に障害のある社員11名(実雇用率8.46%)が在籍している。
こうした取組により、令和元年に福島市から「福島市障がい者雇用推進企業」の認証を受けるとともに、令和3年に県内で2番目となる厚生労働省「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定」(もにす認定)を受け、さらに令和5年には独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の「障害者雇用優良事業所等表彰 理事長努力賞」を受賞した。
2. 障害者の従事業務と職場配置
現在、11名の障害のある社員が古紙・資源物の選別作業に従事している。
以下に3名の障害のある社員の従事業務などについて紹介する。
(1)知的障害のあるAさん
入社より1年9か月経過。回収した新聞紙の選別作業に従事している。コンベアから流れてくる古新聞紙の中から別な品目の古紙を分別したり、リサイクルできないビニールの紐や袋など(時には財布や食物など、古紙とはかけ離れたものも交じっている)を取り除いたりする作業である。安全対策として緊急停止装置や作業場路面に安全通路(動線)を表示するとともに、自分のペースで休憩、水分補給ができるよう配慮している。また、AさんにはADHD(注意欠如・多動症)の特性もあることから、本人の同意を得たうえで、上司だけでなく同僚の社員にも障害特性を伝え、配慮している。
(2)身体障害のあるBさん(人工股関節装着)
入社より1年3か月経過。ペットボトルの圧縮作業に従事している。回収された大量のペットボトルを機械で圧縮し、それを縛ってラップで梱包して出荷準備をする一連の作業である。作業中は人工股関節装着のため転ばないように環境整備(床に物を置かない、濡らさないなど)を行うとともに、本人も細心の注意を払って作業している。また、何かトラブルがあれば社員が駆けつけられるような配慮もしている。
Aさんの作業場面 Bさんの作業場面
(3)精神障害のあるCさん
就労支援施設(以下「支援施設」という。)の紹介で入社し5年経過。現在、紙管剥き作業に従事している。紙管剥きは、新聞印刷工場で発生する半端な新聞原紙のロールを機械で回転させ、手で剥いでいく作業である。機械作業であることから、安全確保のため、Cさんの作業場は事務室から常に見える場所に配置している。
3. 取組の内容と効果
(1)具体的な取組の内容
ア.募集・採用
(ア)ハローワークの障害者専用求人を積極的に活用して募集するほか、特別支援学校(以下「支援学校」という。)や支援施設からの職場実習(以下「実習」という。)を受け入れ、障害者と社員がお互いに理解を深めることで採用につなげている。
(イ)支援学校や支援施設からの採用に当たっては、支援学校の先生や支援施設担当者から本人に関する話を聞き、本人の障害特性について理解するよう努め、本人に合った仕事を担当させている。
(ウ)採用面接時には、雑談などを交えてリラックスして行うようにする、また専門的になり過ぎないように平易な表現にするなど、コミュニケーション面での工夫を心掛けている。
イ.障害に配慮した配置・雇用管理
(ア)採用面接時には本人の希望を聞くとともに家族との面談も行い、なるべく本人の希望に沿った業務内容や勤務形態(勤務時間、勤務日数など)としている。通院が必要な場合には通院しながらでも働けるよう個人に合わせた勤務形態も選択可能な仕組みとしている。こうした取組により、入社当初の不安が解消され、自信をもって業務に従事し、雇用の定着につながっている。
(イ)入社当初は短時間勤務とし、慣れてきたところで勤務時間を長くすることいった対応も行っている。
(ウ)屋外での業務が多いため、十分な休憩時間や水分をとるよう配慮している。特に知的障害のある社員のなかには、業務に集中するあまり休憩をとらずに働くこともあるため、周りの社員が声を掛け、休憩をとらせるように配慮している。
(エ)業務量が多いときにはほかの社員が応援するなど、障害のある社員に残業はさせないようにしている。ノルマや期限は設けず、障害のある社員が自分のペースで仕事ができるよう配慮している。
(オ)作業場は社内外の車両や重機が多数往来しており、事故や怪我のない安全な作業環境を確保するため、場内の路面に歩行者が安全に移動する動線(安全通路)を表示したり、車両が接近しにくい場所を作業スペースにするなど、安全に作業に集中できるようにしている。
ウ.支援体制の整備
(ア)社長自ら直接全社員に対し障害者雇用の重要性を説明し、社員の理解と協力を呼び掛けている。また、実習を積極的に受け入れることにより、社員が障害特性や障害者雇用についての理解を深める機会となっている。
(イ)分からないことをいつでも質問しやすいように、業務指導を行う社員を障害のある社員の近くに配置するとともに、障害のある社員に業務量が集中した場合は常に周りの社員がフォローできる体制をとっている。
(ウ)雑談を交えながら、積極的なコミュニケーションを心掛け、休憩時間は一人にならないよう配慮している。ただし、一人になりたい人には無理強いしないようにしている。
(エ)障害のある社員を対象としたアンケートや所属ごとの個別面談を半年ごとに実施し、個別に要望や困りごとを確認している。
<アンケートの内容>
アンケート項目 Q1 今の仕事内容は自分に合っていますか?
Q2 職場の雰囲気はどうですか?
Q3 仕事をするうえでわからないことがあった場合、教えてくれる人はいますか?
Q4 障がいへの配慮・理解はしてもらっていますか?
Q5 これからも「株式会社こんの」で働きたいですか?
(その他)相談したいことがあれば何でもお書きください。
<アンケート結果への対応>
アンケートには直接言い出しにくい要望、例えば「ヘルメットのサイズが合わない」、「冷暖房が欲しい」などの要望も出されている。
こうした要望などに対しても可能な範囲で対応することで、職場環境の改善を行うきっかけとなっている。
(オ)毎月、全社員に渡している給与明細書に「社長からのメッセージ」を添付し、社長の日々の思いを伝えている。この中で、障害者雇用の大切さや支援の必要性などについても触れることもあり、全社員への障害者雇用への理解・浸透を図っている。
障害者雇用に関する「社長からのメッセージ」
(2)取組による効果など
ア.全社的な効果
(ア)同社の障害者雇用への様々な取組が評価され、厚生労働省の「もにす認定」、福島市の「障がい者雇用推進企業認証」などを得ることができ、同社の社会的評価につながっている。そして、そうした企業であることが、障害のある社員やその家族などにも理解され、安心して働くことや集中して業務に取り組めることにつながっている。
(イ)障害のある社員が一生懸命楽しそうに働く姿が、全社員の励みになっている。また、お客様にも障害者が働くことへの理解を深めていただく良い機会となっている。
(ウ)障害を理解することで、全社員に他人を思いやる気持ちが育まれ、組織に一体感が生まれている。
(エ)安全に働く仕組みを整えることで、障害の有無に関係なく社員が活躍でき、優秀な人材を確保できることにつながっている。
イ.新たな取組の事例
(ア)知的障害のある社員Dさんが、直接業務では求められていないが、秀でた能力(イラストを描く能力)を持っていたことから、その能力を発揮する機会として、会社の年賀状のイラストやリサイクルボックスのデザインを担当してもらうことになった。通常業務以外に活躍の場が広がることで、本人のモチベーションが高まった。
Dさんの作品
年賀状のイラスト(左)とリサイクルボックスのデザイン(右)。後者は人物画を担当している。
(イ)業務の一部を就労継続支援事業所や就労移行支援事業所などに委託している。委託しているのは以下をはじめとする様々な業務であるが、委託先の状況に合わせて細分化するなどの工夫をしている。同社での直接雇用に加え、業務委託を通じて障害者の就労機会の創出にも取り組んでいる。
委託しているのは以下の業務など。
・ペットボトルや空き缶の分別と圧縮梱包作業
・廃棄カレンダーから金具を取り除く業務
・空き家やゴミ屋敷の片付け作業
・一般家庭の草むしり作業
(3)障害のある社員からのコメント
ア.Aさん
業務は大量に運び込まれてくる古新聞紙の中から紐や茶紙など異物を除去する選別作業を中心に行っています。自分には様々な特性がありますが、入社時に事業所長からその内容を全員に周知してもらったこともあり、同僚からいろんな配慮をしてもらって大変ありがたく感じています。分からないことがあっても丁寧に教えてもらい、説明はメモにしてもらったりしています。日々やりがいを感じており、将来的には重機の操作にも携わってみたいとも思っています。
また、毎月給料日には明細書に添えて社長からお手紙をいただいており、大変嬉しく、励みになっており、この会社で長く続けられるよう頑張りたいと思っています。
イ.Bさん
業務は大量に運ばれてくる回収ペットボトルを、機械で圧縮梱包し出荷準備を行う作業を行っています。人工股関節を装着しているため、当初はうまくできるか、転んで外れないか心配でしたが、やってみると楽しく安全にできています。周りに常に同僚がおり、万が一の時も対応してもらえるので安心して働けます。以前勤めていた会社では障害者に対して心ない言葉を耳にすることもありましたが、今はそのような事が一切なく気持ちよく働くことができ、作業を全部できた時の達成感を味わっています。今の作業をもっと早くできるよう頑張り、長く仕事を続けていきたいと思っています。
私もそうでしたが、障害者が仕事を探す時には、やれるかどうか心配し応募することさえも迷うことがありますが、最初から諦めずにまずはやってみる、その後のことはやってから考えればいいと、この会社に入って感じています。
4. 課題と今後の展望
(1)課題
全拠点に1人以上の障害者を常時雇用するという目標を掲げているが、現時点では達成しておらず、更なる取組が必要となっている。このためにも全社員の障害者雇用への一層の理解と協力が欠かせない。
また、障害のある社員が作業している現場には、多数の運搬車両や重機などが稼働している。現在まで様々な配慮がなされており、大きな事故は生じていないものの、障害の有無に関係なく全社員が今後も安全に安心して働ける環境づくりが求められる。
(2)今後の展望
支援学校や支援施設から要請があれば、実習や会社見学などを受け入れるとともに、障害者雇用関係機関との連携や地域貢献を一層進め、目標である全ての拠点に1名以上の障害者雇用を実現させて、障害者雇用のモデル企業となることを目指している。
そして、取材の最後に社長は、社業のリサイクル事業を展開しながら、地球環境と社員の働きがいを持続させるSDGsに積極的に取り組んでいきたいと考えており、障害者雇用もそのひとつであると語られた。
執筆者:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
福島支部 高齢・障害者業務課
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