株式会社デンコードー（以下「当社」という。）は昭和32(1957)年10月に青森市で創業した家庭電化製品・情報商品･携帯電話などの販売と、関連商品の販売・付帯工事・修理サービスをおこなっている企業である。

　平成19(2007)年4月に株式会社ケーズホールディングスと経営統合し、子会社として北海道･東北で店舗展開をしている。

　令和5(2023)年9月1日現在の店舗数は106店、間接事業所（配送センター）数は26事業所となっている。店舗所在地は北海道32店舗､青森県10店舗、秋田県10店舗、岩手県13店舗、宮城県15店舗、山形県11店舗、福島県15店舗である。

　障害者雇用については、平成23(2011)年から25(2013)年まで法定雇用率未達成であったが、東日本大震災後の従業員不足と社是である｢地域社会の文化に貢献｣の観点から、より積極的に進めることとし､採用活動などを進め、平成26(2014)年以降連続して法定雇用率を達成している。
　当社では､新年度が始まる前に各店舗･間接事業所単位で障害のある従業員の在籍人数を再確認し、本社が次年度の社全体の採用計画を作成している。作成にあたり､大型事業所では複数の障害者が在籍していない店舗、中・小型事業所では障害者が在籍していない店舗などを確認し、計画を作成している。
　その計画をもとに、各地域のハローワークが主催する合同面接会への参加、障害者就業･生活支援センター（以下「支援センター」という。）や就労移行支援事業所（以下「移行事業所」という。）と連携し、また、特別支援学校（以下「支援学校」という。）から希望者を確認し、職場実習（以下「実習」という。）を行い、雇用につなげている。

　店舗における業務は、大きくは販売担当(接客業務)、会計担当(レジ業務)、商品担当(倉庫業務)の3つに分類されている。そのうち今回は、知的障害、精神障害、発達障害のある社員の多くが従事している商品担当(倉庫業務)（以下「商品担当」という。）の取組について紹介をしたい。

　商品担当の主な業務内容は、以下のとおりとなっている。 
　①荷受け：大型トラック(専用便)で入荷した箱に入った状態の商品･オリコン(商品が混在した箱)の個数を数える。
　　　　　　　※「オリコン」は折り畳みコンテナの略。

　②仕分け：①の商品を各売り場に合わせて仕分け、売り場ごとのオリコンに入れる。入れる際には品出ししやすいように並べる。

　③盗難防止タグを付ける：社内基準に基づき、特定の商品には盗難防止タグを付ける。

　④売場への品出しを行う：各売り場に商品を並べる（補充する）。賞味（消費）期限・使用期限のある商品(コーヒー･ベーカリー
　　　　　　　　　　　　　関連商品、プリンターのインク、電池など)については、先入れ先出し法により行う。

　⑤キャリング：お買上いただいた商品をお客様の車まで運搬する。

　⑥倉庫整理：商品分類単位･型式単位･色単位で整理する。

　⑦上記以外：回収した電池に絶縁テープを巻く。廃棄処分する書類をシュレッダーにかける。ゴミを分別する。お買い物カート･
　　　　　　　カゴの清掃、整理をする。新製品を展示する。展示商品の梱包をする。廃家電(リサイクル品)の整理をする。カタ
　　　　　　　ログへ社名印を押す。プライス（値札）の切断･分類･差し替えをする。

　なお、障害のある従業員には全ての作業を担当してもらうのではなく、個々の障害特性を確認し、本人に合った業務を担当してもらうと共に、一日あたりの勤務時間、週の勤務日数についても、会社側が一方的に決めるのではなく、本人と相談して決めている。 

　また、勤務時間や日数、担当業務を増やす場合は、現在の状況を確認し、本人の要望も聞いて決めることにしている。

　当社としては「採用・入社がゴールではなく、それぞれの業務を経験しながら継続して長期に勤務していただくことがゴール」と考えている。　

　そのためには、個人ごとの障害特性や合理的配慮については、支援機関である各地域の移行事業所や支援センター、支援学校などからの情報提供及び助言を受けると共に、随時、本人と話し合いをして決めることにしている。

　また、障害特性は個々によっても異なり、一概に障害及び疾病名では判断しにくいこと、10人いれば10通りの配慮が必要となる場合もあるが、本人に適した個別の配慮を行うことが重要であることを、現場と本社が共通認識のうえ対応するように心がけている。

　日頃から商品担当にて行っている合理的配慮は、次のとおりである。 

　①働き続ける意欲などの確認と不安感の軽減を図るために

　・定期的に話せる環境を設定（従業員により設定回数は異なるが、年2回～月2回程度）
　　　困ったら相談するだけではなく、定期的に相談する機会を作る（積極的にその都度相談することが苦手な従業員もいるため）。ま
　　た、本人が伝えやすい手段を選ぶ(面談、メール､日誌などを活用）。

　・不調のサインを確認
　　　事前に本人及び支援機関などより不調な時に起こりがちなことを聞いておく、不調時の対応方法を相談し決めておく。

　②安心して作業に取り組み、スキル向上、職域拡大を図るために

　・手順の明確化、具体化
　　　指示者が目に見える形で実際に手本をやって見せる(方法が分かる）、完成品を見せる(必要な完成度が分かる)、分かりやすい
　　マニュアルを整備する(いつでも見て分かる)。

　・作業工程を分ける
　　　1つの工程が終わったら次の工程に移る。

　・具体的に伝える
　　　5W1Hを具体的に伝える(速さ、質、個数、時間、目標、締切りなど)。

　・少しずつ伝える
　　　一度に伝える内容はひとつからふたつまでとし、できるだけその都度指示をする。

　・はっきりと説明する
　　　曖昧な表現(遠回しな言い方､皮肉など）ではなくストレートに伝える。

　・見通しを持たせる
　　　スケジュールを事前に伝える。言葉だけでなく見える形（図や表など）で示す。また、予定変更は早めに伝える。

　・役割をきちんと決める
　　　本人と商品担当の全従業員の役割を明確にして伝える。

　・指導役を決める
　　　指導の担当者(メイン･サブ)を決めておき、本人に伝える。　

　・集中できる環境を整備
　　　集中を妨げるもの(音･光など)があれば遮断する。また、集中力維持のため、こまめな休憩を取れる仕組みや場所を作る。

　・気持ちをくみ取る
　　　良い点は具体的に例をあげて誉める、注意する時は感情的にならずに客観的に伝える。

　今後も障害者が未在籍な店舗をなくすため、実習の受け入れなどを更に増やし、支援機関との連携も深めたいと考えている。その際には、それぞれの店舗にて障害のある従業員と一緒に勤務する従業員への研修などが重要と考えている。そのため、障害特性に係る理解や配慮を促進するために、社内教育システムe-ラーニングの講座の充実（「なぜ障害者雇用が必要か」、「各障害特性と配慮事項」については既に実施済み）、実習前の職場単位ごとの研修、企業在籍型職場適応援助者（ジョブコーチ）の複数配置など、今まで以上に社内研修などの推進が必要と考えている。また、現在も複数の従業員が障害者職業生活相談員資格認定講習を受講し資格を得て、障害のある従業員との相談や定着などに関わっているが、今後も更に外部機関の研修やセミナーを活用しての人材育成を継続していきたい。

　最後に、一緒に働く障害のある従業員から、これから入社する方も含めて、「入社して良かった」、「仕事をしていて楽しい」、「長く勤務し続けたい」などの評価を得られる企業を目指すことによって、当社の成長につなげていきたいと考えている。