「みんなが=(イコール)であるZOZOBASE」
- 事業所名
- 株式会社ZOZO ZOZOBASEつくば1・ZOZOBASEつくば2・ZOZOBASEつくば3
(法人番号: 40400010101503) - 業種
- 卸売・小売業
- 所在地
- 茨城県つくば市
- 事業内容
- 1.ファッション商品のEC(エレクトリックコマース)に係る物流業務
2.前号に附帯する一切の業務 - 従業員数
- 2,698名(つくば拠点合計)
- うち障害者数
- 57名(つくば拠点合計)
-
障害 人数 従事業務 聴覚・言語障害 1名 従事業務については省略(以下同じ)。 肢体不自由 3名 内部障害 4名 知的障害 6名 精神障害 38名 発達障害 4名 その他の障害 1名 - その他
- 障害者職業生活相談員
- 本事例の対象となる障害
- 聴覚・言語障害、肢体不自由、内部障害、知的障害、精神障害、発達障害、その他
- 目次



1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯、これまでの表彰歴
(1)事業所の概要
株式会社ZOZO(以下「同社」という。)は、衣料通販サイトZOZOTOWN(以下「ZOZOTOWN」という。)を運営しており、商品の物流拠点としてZOZOBASEを茨城県つくば市(3か所)と千葉県習志野市(2か所)に設置し、ZOZOTOWN全体での1,500以上のショップ、8,900以上のブランドが存在するプラットホームとして、常時95万点以上の衣料品、雑貨商品の取り扱いを支えている(ショップ数などは令和5年6月末現在)。
本稿では、茨城県つくば市にある3か所のZOZOBASEにおける障害者雇用の取組を紹介する。なお、3か所は「つくば1」、「つくば2」、「つくば3」と表記し、3か所を総称して「つくば拠点」と表記する。つくば拠点では同社の企業理念を共有し、ダイバーシティ経営を推進し、だれもが自分らしく「自事(しごと)」(※1)ができる仕組みづくりに取り組んでいる。事業の特性上、ファッションが好きな社員が多いことから、社員それぞれが個性豊かなファッションを楽しみ、ファッションを通じてお互いの個性を理解・尊重し、多様性を大切にする独自の企業文化が醸成されている。社員の平均年齢は37.6歳と若い社員が多く、自由な雰囲気で活気にあふれ、多くの人が調和しながら動いている姿が見られる事業所である。
(※1)同社では仕事のことを「仕事(仕えること)」ではなく、「自事(自然なこと)」であるという意味を込めて「自事」と表現している。
(2)障害者雇用の経緯
つくば1は平成30(2018)年10月設立で、つくば2、つくば3も短期間に設立した。このため、多数の社員の採用が生じることとなり、障害者の採用も開始した。ZOZOBASE習志野のノウハウをもとにつくば市の地域性も勘案し、近隣の障害者就業・生活支援センター(以下「支援センター」という。)、就労移行支援事業所(以下「移行事業所」という。)、特別支援学校(以下「支援学校」という。)などの支援・協力を得ながら就業希望者の紹介をいただき、入社前の職場実習(以下「実習」という。)なども行いながら、積極的な採用と継続的な雇用を行ってきた。
(3)これまでの表彰歴
平成28(2016)年 障害者雇用優良事業所等表彰において独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞受賞(受賞は当時
の社名「株式会社スタートトゥデイ」での受賞)
令和 5(2023)年 同機構理事長努力賞 優秀勤労障害者受賞(ZOZOBASE習志野2勤務者)
2. 障害者雇用の従事業務と職場配置
ZOZOBASEに入荷した商品に付いた商品タグのバーコード部分をスキャナーで読み取り、発行される商品管理シールを決まった場所に貼り付ける作業。商品が入った段ボールを自分の作業台の近くに置き、中から商品を取り出して作業を行う。そのため商品の入った段ボールを持ち上げるなど、多少力作業もある。また、商品管理シールを貼りつけた商品をカートに入れ、指定された場所まで運ぶ作業や、商品によっては緩衝材で梱包するなどの細かな作業もある。
入出庫業務
(2)入出庫業務 24名
ZOZOBASEのフロア内を巡回しながら行う業務。商品棚に検品が終わった商品をしまう棚入れ作業や、お客様が注文した商品を商品棚から探して回収するピッキング作業がメイン業務となる。
基本的にはスマホのような小型の機械(通称「ハンディ」)を使用し、ハンディの指示に従って一人で行う作業のため、黙々と自分のペースで作業するのが好きな方に向いている業務であるが、同じフロアに大勢のアルバイト社員や派遣スタッフが勤務しているため、業務上必要なコミュニケーションを取る機会もある。

入出庫業務
(3)発送業務 11名
お客様に注文いただいた商品に貼られている管理シールのバーコード部分をスキャナーで読み取って伝票を発行し、適した大きさの梱包資材(段ボールや紙袋)を選び、これに入れて梱包する作業。一人ひとり作業台があり、作業が完了したら横にあるベルトコンベアに梱包した商品を乗せる。同じ場所に立ったまま行う作業である。
また、ギフトラップを希望された商品について、値札を取り外したり、商品に合った個装箱・袋を選び、リボンなどを貼り付ける作業もある。搬送機などの大きな機械や運送委託業者の作業場所が近くにあるため、他の業務よりも騒音が大きく感じられる職場である。

発送業務
商品撮影に使用した商品(衣類や小物など)をきれいに整えて、新品の袋に入れ直す作業。商品によって畳み方が異なったり、古い袋に貼ってある商品管理シールを丁寧にはがして新品の袋に貼り直す作業があるため、手先の器用さが求められる。この業務では一人ひとりに作業台があり、基本は立ったまま作業を行う。

ラッピング業務
3. 取組の内容と効果
(1) 障害者雇用への考え方
【ZOZOBASE NORMALIZATION】
同社には、「みんな違うけど、みんな一緒」という理念がある。ZOZOBASEでは障害者雇用に係る基本理念「ZOZOBASE NORMALIZATION」(社員の個人個人の特性を理解・尊重し、自分らしく働けるZOZOBASEを目指す。)を掲げ、組織体制づくりにはじまり、募集から雇用継続までの各段階で手厚く数々の取組を行っている。
(2)全段階で共通の取組
【障害者雇用をメインタスクとする組織をつくり、責任を持って障害者雇用を推進する】
ZOZOBASE全体の障害者の雇用に係る業務については、過去、人自部(※2)で障害の無い人の業務と合わせ行っていた。しかしながら、急激な事業拡大の中で障害者の雇用の更なる推進を図るため、2年前に障害者雇用に関する専任スタッフ(以下「スタッフ」という。)を配置した支援部の組織を設けた。この組織のタスクとしては障害者に係る採用、配属業務、及び障害のある社員へのケア、障害のある社員とラインの管理者や移行事業所の担当者(以下「支援員」という。)、支援学校の先生とのパイプ役を担うと共に、ライン管理者への教育、知識・ノウハウの提供も担当している。
(3)募集段階での取組
【より多くのチャンネルから、より多くの人を募る】
ア. 求職者向け職場見学会の実施
【障害者や支援者が自分の目で見ることで興味を持ってもらい、実習につなげる】
近隣の移行事業所の利用者、支援員を対象として毎月1回の職場見学会を開催している。支援学校についても後述する半期毎の実習前に生徒、先生を対象とした職場見学会を開催している。見学を通じて障害者が自分の目で確かめた上で応募や実習への参加につなげるとともに、支援員・先生には適格と思われる利用者や生徒への勧奨につなげている。
イ.移行事業所、支援学校からの実習の受け入れ
【実際の作業を体験することでできるかどうか体感する】
支援事業所や支援学校とのつながりを強化し、3日間~7日間の実習受け入れを行っている。この実習を通じ、移行事業所からは多数の採用実績がある。支援学校からも令和4年度より実習受け入れを開始し、令和5年度2名を採用し、令和6年度は現時点で2名の採用内定を行うことができている。また、この実習受け入れを通じ、今後も移行事業所や支援学校との関係強化を図るとともに、入社した先輩の姿を見、話を聞いた後輩が応募を希望する流れができることを期待している。
ウ.障害者就職面接会への参加開始
【募集チャンネルを増やし採用力を強化する】
つくば拠点ではつくば3の本格稼働が始まり、業務量も拡大基調が続いている。これに伴い、人材の需要も引き続き旺盛な状況にあり、従来の自社サイト、ハローワーク、移行事業所、支援学校を通じた募集に加え、ハローワーク主催で年2回開催される障害者就職面接会(県南地区)への参加を計画するなど、募集チャンネルの拡大を考えている。
(((4)雇い入れ、配属段階での取組
【人と自事のミスマッチを防ぐ】
ア. 複数の担当業務と募集要項での明示など
【業務と必要要件を理解した上で自分のできる自事を選ぶ】
ハローワークの求人をはじめとする全てのチャンネルでの募集時に、募集する4種類の担当業務の内容と各々の作業に必要とされる要件、求める人物像について募集要項に明示している。
また、応募を考えている方やその支援者(支援学校の先生や移行事業所の支援員など)には前述の職場見学会への参加をお願いしている。見学会に参加することで本人や支援者に具体的業務や就労環境、要件などについて理解いただいたうえで応募する、あるいは支援者からの適切な助言・支援などを得ることにつながり、ミスマッチの発生を防ぐことにつながっている。
イ. 多様な勤務時間・日数の選択肢の提供
【生活リズムや体調に合わせた働き方ができる】
ZOZOBASEへの応募に際しては、応募者の生活リズムや体調などに応じて多様な選択肢が選べるようになっている。まず、アルバイトと契約社員のどちらかを選択できる(アルバイトと契約社員の違いは週の所定労働時間と時給で、アルバイトの労働時間は短いなどの違いがある)。また、一日の勤務時間も開始時間が2種類、終了時間が2種類で、勤務日数は3種類の中から自分に最も合った働き方を選択できるようにしている。
この選択については3か月ごとに行われる雇用契約の更新時に変更を申し出ることも可能としている。
ウ.必要な配慮の提供
【必要な配慮により活躍の場を作る】
つくば拠点では一人ひとりの障害に寄り添った配慮を行うことで、能力を最大限発揮できる人員配置に努めている。
車いすを使用し、手指の動きが不自由な社員に対しては1階の職場で座り作業である出荷の作業に配属を行い、出荷用の個装箱の封印に使うガムテープ用のオートカッターの設置を行った。
人混みが苦手な社員に対しては職場の端の壁側のエリアの定位置で行う作業に配置したり、時々注意力が散漫になると自覚している社員に対してはライン管理者の目が届きやすいようラインの先頭に配置したりと、各人の特性に合わせた配置・配慮を適宜検討、実施している。
【ライン管理者とスタッフの太いパイプと、支援施設の活用によるケア】
ア. 障害者雇用に係る社内勉強会の実施
【ライン管理者の管理力を底上げし、より早く、より適切な対応につなげる】
人材育成に関する社内整備については、管理職、管理職以外の正社員、全社員を対象とした様々な研修を実施している。この一環としてライン管理者を対象に地域のハローワークより講師を招き、「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を開催した。ライン管理者に対しては、引き続き定期的な勉強会の開催を考えている。
イ. 障害者専用相談窓口の設置
【スマホによる相談ニーズの把握と対応】
つくば拠点では相談窓口である支援部のスタッフが常駐ではなく巡回型であること、障害のある社員の人数が少なくないことなどのため、個々の障害のある社員への日常的な声掛けには限界がある。そこで、スマホのメールを活用した専用の相談窓口を設けており、この窓口には本人から週に10件程度の相談が寄せられている。これに対しては障害者職業生活相談員である支援部のスタッフが対応するが、中にはリピーターの社員がいて、チャット感覚でメールする者もいるという。窓口ではまず本人から直接話を聴くところからはじめる。その内容により、必要に応じライン管理者との相談・調整や、外部の支援者へのフィードバックなどを行いながら、本人への助言などを行う。
障害のある社員の中には、支援学校や移行事業所などの支援施設が関わっていない社員がいる。しかし、相談の内容は多岐にわたることから、そうした社員には可能な範囲で近隣の支援センターをはじめとする支援施設への登録を勧めており、私生活に関わる課題は支援施設の協力を得ることもある。
ウ.定着に向けた面談の実施
【入社初期はフェイスtoフェイスで細かくフォロー】
入社後3か月までは支援部スタッフによる面談を毎月実施し、業務上で困っている点や配慮して欲しい点を中心に聞き取り、対応が必要な場合はライン管理者にフィードバックを行う。特に課題がないと判断した社員については、障害のある社員全員を対象として行われる半期毎の面談に移行している。
エ.社内用ヘルプタグの導入
【緊急時、災害時の対応に活かす】
障害のある社員の中には、外見では障害がわかりにくい者や、必要とする配慮や支援がわかりにくい者がいる。そうした社員が必要な配慮や支援を得られるために、社内用ヘルプタグ(以下「タグ」という。)を希望者に対して配付している(下の画像参照)。このタグは都道府県などが配付しているヘルプマーク・ヘルプカードを、許可を得た上で社員証への装着が可能なサイズに変更し、キーホルダーにしたものである。タグを装着することにより、周りの社員が必要な時に必要なヘルプを行うことができるようにした。

社内用ヘルプタグ
オ.地域の障害者支援施設との交流
【雇用以外でも地域に貢献】
つくば拠点では、同社全体の「自事」の考え方を共有し、自事のしやすい環境づくりにも活かしている。ZOZOBASEつくば拠点には色とりどりのインテリア家具を備え、木のぬくもりが感じられる広く開放的で明るい休憩スペースが設けられており、一般的な倉庫とは異なる空間をつくっている。ここではすべての社員が、休憩時間をよりリラックスしてすごして欲しいという同社の思いが込められており、飲食も可能となっている。弁当を持参する者も多く、電子レンジや冷蔵庫も置かれ、自販機や小さいながらコンビニも設置されている。また、昼食時には近くの飲食店から移動販売のサービスも行われている。
千葉県習志野市にあるZOZOBASE習志野では近隣の支援学校で作ったパンの販売を継続的に行っており、ささやかながら地域の障害者への貢献と交流の場となっている。現在つくば拠点においても就労継続支援B型事業所のベーグル販売会を実施しており、支援学校との新規販売イベントも検討中である。
休憩スペースでの販売風景
カ.正社員登用制度と職域拡大
【長く安心して働き、成長する】
つくば拠点では正社員以外の社員に対し、正社員への登用制度があり、障害の有無に関わらず適用される。また、担当業務についても基本的に入社時は1種類の業務のみの担当となるが、入社後に本人の意向があれば、本人の習熟度と他業務への適性を鑑み、担当業務の拡大を図っている。特段業務上の配慮を必要としない社員のなかには、配置での考慮などせずに、ほかの社員と同様の作業ローテーションで従事している例もある。これらの施策により障害のある社員は長く安心して働くことができ、仕事に対する知識やノウハウの蓄積によりさらなる成長を目指すモチベーションとなっている。
(6)効果
そうした取組の効果として、障害者雇用はつくば拠点の急激な業務拡大に伴う人材需要への対応の一助となり、障害のある社員が障害のない社員と全く遜色なく大きな戦力となっている。このことは障害のある社員にとっては自分たちの能力を社会的に発揮する場が与えられていることを意味しており、定着が難しいといわれている精神障害者の割合が障害者の6割を占めるつくば拠点において、障害のある社員の離職率が1.8%と安定的な雇用を維持できている。このことは職場環境も含め、障害のある社員本人の満足度が高いことを表しているものと推測できる。
筆者がつくば拠点を訪れた時の印象は、広々とした開放的で清潔感のある職場で、若々しく活気あふれる大勢の社員が調和のとれた動きで働いており、自由な雰囲気を感じた。ここで働く障害のある社員は限られた職場・業務に従事するのではなく、全ての主要な職場・業務で障害のない者と全く同じに働いており、そばで見る限りではどの人が障害者であるかはわからない。前項で述べた種々の取組により経営者の障害者雇用に係る理念「ZOZOBASE NORMALIZATION」の具現化と、同理念が「経営層→スタッフ→ライン」で共有されていることを感じた。
(7)障害のある社員の方の声
・Aさん(発達障害)
令和3(2021)年3月入社。入荷業務に従事。
コミュニケーションの部分で色んな人がいる分、苦手な場面もあるが、適応力を身に付けつつも、本当に楽しく自事に取り組んでいる。ZOZOに来て、自事内容も自分に合っていると感じているし、楽しんでやれるようになって『自事って楽しんでいいんだな』と思った。
職場の方たちは、障害があるからと、はれものにさわるでもなく、邪険にしたり差別するでもなく、自事するのに配慮が必要だけど、一緒に働く一人の仲間として他の人と同じく対応してくれたのが本当に嬉しかった。
社としては、人自部、支援部との面談など入社後のサポートが手厚くあったことや近くでみていただいている現場リーダーが丁寧にサポートしてくれていることが今まで続けられた一因だと思う。本当に、いいマッチングだったと思っている。

インタビュー後のAさん
・Bさん(身体障害)
令和4(2022)年11月入社。発送業務に従事。
入社して良かったことで一番最初に思い浮かぶのは、周りにいい人が多いこと。自分から頼んでいなくても、『何か手伝うことはある?』と声をかけてくれたり、気遣いが温かく感じる。障害特性上、身体の活動範囲に制限があり、人や物にぶつかり転倒してしまうことがあると危険なため、常に周囲を意識し危機管理意識を持って業務に臨んでいる。
今まで就労経験がなかったことから、入社して収入を得ることで、親孝行ができているのかなと感じることがやりがいになっている。
環境が良く、色んな人が助けてくれるおかげで自事がしやすく、就労が継続できているので、今後も引き続き安定して働き続けられるようにしていきたい。

4. 今後の展望と課題
つくば拠点では引き続き旺盛な人材の需要が見込まれる。同社では障害者の雇用についても移行事業所や支援学校などとの関係をさらに深め、募集対象地域の拡大や障害者就職面接会などの新たな募集チャンネルの確立により、さらなる採用力の向上を目指している。
また、「ZOZOBASE NORMALIZATION」の基本理念の元、障害の有無に関わらず全ての人が戦力となり働くことができる環境作りを目指すための文化形成として、社員全体へのさらなる理念浸透の教育や、管理者の対応能力を高めるための研修などが課題と考えている。
執筆者:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
茨城支部 高齢・障害者業務課 下川 直弘
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