ＮＳハートフルサービス東日本株式会社（以下「同社」という。）は、障害者雇用の社会的責任を果たすため、特例子会社として平成19年（2007年）1月に住金鹿島ビジネス株式会社（当時）として設立され、以来17年間、以下の事業運営方針のもとに事業を行ってきた。

＜同社の事業運営方針＞

(1)障害者が安心して働くことができるように、就業環境の整備を進め、共に働き、共に喜び合う職場づくりを目指す。

(2)同社が提供する商品・サービスの質の向上を図るため、従業員の一人ひとりが技能の習得、向上に努める。

(3)地域社会におけるハローワーク、特別支援学校、支援機関等との連携を深め、障害者の雇用、定着そして自立に向け、継続的な支援に努める。

　本稿では同社の鹿島地区における障害者雇用の取組について紹介する。

（1）社員教育施設(宿泊施設を含む)内の清掃（11名）※（　）内は、従事する障害のある従業員数（以下同じ）。

社員教育施設は親会社の教育施設である。製鉄所構内と少し離れた場所にあり、教室、食堂・ロビー等の共用スペース、宿泊施設で構成されている。教室は30名～100名程度が収容可能な教室が10室以上あり、宿泊施設も個室（風呂、トイレ付）が100室弱ある。食堂・ロビーも完備した施設である。

この施設内の床の掃除機かけ、机、いす・ソファーや風呂・トイレの拭き掃除とベッドメーキングに従事している。

　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　  　　　　　　 ベッドメーキング作業

(2)市内3か所にある社員寮の清掃（12名）

市内3か所にある独身寮、単身赴任者用寮の大浴場を含む寮共用部分、外周りの除草・清掃を行っている。

　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　寮内大浴場の清掃作業の画像
 

（3）構内食堂清掃、洗濯（4名）

親会社構内の社員食堂の床のモップ掛け及び机・いすの拭き掃除を行っている。また、他施設、寮も含めた清掃作業で使用した雑巾等を回収し、洗濯作業も行っている。

　　　   　　　　　　　　　　　　　　親会社構内食堂の清掃作業

（4）草花プランター・ポット、花壇による構内美化(4名) 

四季折々の草花を親会社構内の正門や本館玄関、玄関前ロータリーなどに60個以上のプランターやポットを配置している。また、構内事務所前の花壇には地植の草花も育てており、日々これらの手入れを行いながら構内の美化を維持している。

　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　親会社構内での美化作業

（5）ポプリ（芳香剤）の製造（1名）

親会社で環境緑化のためのハーブ園を所有しており、このハーブ園では11種類のハーブを育てている。そこで育てたハーブを原料として細かく切り、配合して袋に入れ、親会社でお客様へのノベルティとして使うポプリを製造している。

　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ポプリ製作

（6）文書の電子データ化(1名)

親会社内で過去に作成された紙媒体の資料をスキャナーで読み込み、電子データに変換して保存する作業を行っている。

　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　文書のデータ化作業

（1）関係機関との連携、情報交換の重視と活用

事業運営方針にもあるとおり、同社の障害者の新規雇用、定着を考えるにあたっては近隣のハローワーク、聾学校、特別支援学校、障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」という。）、就労移行支援事業所等の各関係機関との連携を重視している。これら関係機関への訪問による情報交換を、採用や障害者の特性に応じた配置に活かしている。

また、採用した障害のある従業員の定着や、自立についても関係機関と連携している。グループホームを利用している障害のある従業員（4名）に対して、支援センター長が毎月同社を訪問・面談し、必要な情報は、同社、支援センター、グループホーム間で共有し、定着などに向けた連携を行っている。

（2）日々の安全への意識付けと作業分担の分かりやすい指示

ア．同社の重要テーマとして支援員と障害のある従業員が同じ目線で対話ができ、全従業員が安心して長く働ける職場づくりを目指している（支援員については（3）で説明する）。

その実現のため、同社ではＡＢＣＫ活動（Ａ：あたりまえのことを　Ｂ：ばかにせず　Ｃ：ちゃんとやる　Ｋ：感謝・気づきを共有化する）を展開している。この活動状況については事務所入り口に大きく掲示してあり、情報の共有化が図られている。

                　　　　　　　　　　　　　　　　ＡＢＣＫ活動掲示板

イ．親会社のグループ全体として最重要課題は安全であり、安全への意識を高めるため、
毎日朝夕礼時「安全の合言葉・安全運転８則・厳守事項」の唱和を行っている。また、朝礼の場で各人の当日の作業内容・場所を表示板を使ってわかりやすく指示をしている。　

　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　 行動予定表による作業指示

（3）障害者支援体制構築とスキルアップによるサポートの充実

ア．障害のある従業員のサポートを行うため、企業在籍型のジョブコーチ1名、障害者職業生活相談員9名を配置している。また、実際の作業場面での指示などを担当する支援員を20名配置している。支援員はローテーションを組んでそれぞれの作業場所につき、細かな指示や作業の調整、作業中の障害のある従業員からの質問や相談への対応を行っている。作業中の様子に変わったことが見られた場合は支援員から情報が上がり、支援員間で相談の上、必要な対応を行っている。また、臨床心理士が月に2回同社を訪れ、支援員からの相談に対して、障害のある従業員・支援員と一緒に共有し、障害特性を踏まえた安心安全な就労ができるよう、サポートミーティングを行っている。

イ．障害のある従業員の定着率を高めるために、支援員間の情報共有、レベルアップが重要と考えている。支援員は週に1回全員が集まり、情報の共有や支援の方法についてディスカッションを行っている。また、臨床心理士の来訪に合わせサポートミーティングの開催や2か月に1度程度の支援員研修を行い、支援員のスキルアップ、サポート体制の充実を進めている。

（4）目で見る手順書による指導で身につく作業

障害のある従業員の日々の担当作業においては、障害特性のために作業手順を忘れたりするケースも時々発生する。これらに対応するため担当作業毎に写真を多用した、目で見る作業手順書を作成し、これを使って繰り返し作業指導を行うことにより正しい作業が身についている。

　これらの支援対応力の強化をベースに、同社の本年度スローガン「全社員一丸となって安全・安心を基本に、障害者雇用を通じて社会に貢献」の実現に向け、関係機関との更なる連携強化や個性を認め合う合理的配慮の実践に努めている。特に一緒に働く仲間のその人らしさ（障害特性）をお互いに認め合える「共に働き、共に喜びあう職場づくり」に取り組んでいる。