支援機関と特別支援学校との連携による
「働きやすい職場づくり」
- 事業所名
- 株式会社スズキ部品富山
(法人番号: 3230001009089) - 業種
- 製造業
- 所在地
- 富山県小矢部市
- 事業内容
- 自動車部品の機械加工
- 従業員数
- 297名
- うち障害者数
- 8名
-
障害 人数 従事業務 内部障害 3名 機械加工、工機改善業務 等 知的障害 3名 箱の仕分け、箱の洗浄、粗材並べ 等 精神障害 2名 箱の洗浄、粗材並べ 等 - 本事例の対象となる障害
- 内部障害、知的障害、精神障害
- 目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
株式会社スズキ部品富山(以下「当社」という。)は、昭和44(1969)年に自動車メーカースズキ株式会社のオートバイ生産工場として創業スタートし、昭和63(1988)年に部品の製造子会社として再設立し、現在に至る。
スズキグループの一員として、SUZUKIの4輪エンジン部品、動力伝達部品(ドライブトレイン)を中心にオイルポンプ、ウォーターポンプ、トランスファー、デファレンシャル部品を製造している。アルミ鋳造から機械加工・組立まで一貫生産し、高品質・高効率・低コストを日々追い求めている。その実現のために、金型仕様設計は自社で解析技術を活かし、製品開発に日々取り組んでいる。
これに加え加工組立技術としてトレサビリティ、AI画像処理、ロボット導入等の最新技術を導入しながら、スマートファクトリ(工場全体を完全自動化)を目指して活動している。
(2)障害者雇用の経緯
平成24(2012)年頃から障害者の法定雇用率達成のために障害者雇用を考えていたところ、砺波障害者就業・生活支援センター(以下「支援センター」という。)から紹介を受け、障害者チャレンジトレーニング事業(注1参照。以下「チャレンジトレーニング」という。)での受入れを実施した。以降もハローワークと連携し、チャレンジトレーニングを活用しながら複数名を採用してきた。
また、特別支援学校在校生の就業体験の受入をきっかけに、令和2(2020)年以降に同校より新卒として2名を採用。日々知識の習得や雇用の課題解決のために就労支援構築ネットワーク委員会(注2参照)にも参加し学校を始め、各種機関との連携を図っている。
注1.富山県の制度である「富山県障害者チャレンジトレーニング事業」によるもので、協力企業で3日間から1か月間の就業体験を行う。
注2.支援学校・ハローワーク・就労支援ワーカー・企業・保護者で構成され、生徒の自立と社会参加を推進するため、情報交換を行い、キャリア教育・就労支援の充実を図る。
2. 障害者の従事業務と職場配置
当社には現在8名の障害のある社員が在籍している。うち3名は元々当社に在籍する社員で在職中に内部障害となり、障害者手帳を取得した社員である。彼らは機械加工等に従事している。他の5名は支援センターからの紹介により雇用した社員であり、知的障害のある社員と精神障害のある社員である。
当社では障害者雇用を始めるにあたり、生産ライン関係の工程を見直し、障害のある社員が従事する工程を新たに設けた。現在の工程は以下の4工程であるが、(2)箱洗浄工程と(3)箱仕分け工程が新たに設けたものであり、どちらもライン作業の補助的作業で、ライン作業ほどはスピード等を必要としないものである。5名は主にその2工程に従事している。
8名の工程別の配置数は以下のとおりである。次項では、知的障害のある社員3名の就労状況と個別の取組について紹介する。
(1)機械加工工程 2名
(2)箱洗浄工程 3名
(3)箱仕分け工程 1名
(4)社内制作工程 2名
3. 取組の内容と効果
ア.Aさんの場合 (箱仕分け工程担当)
(ア)募集・採用
支援センターからの紹介により、平成27(2015)年3月に2週間のチャレンジトレーニング後、同年4月にフルタイムの契約社員として採用した。
(イ)具体的な仕事内容
・出荷品箱の整理
返却されてきた出荷品箱から中に入っているゴミを取り出し、種類別のレーンに仕分ける。
・製品カードの整理
製品カードを種類別に分けた後、番号順に並び替えする。

出荷品箱の整理をしている様子
(ウ)個別の取組内容と効果
Aさんは、入社時には問題なく作業も行い、指示も素直に受けていたが、入社して2年ほど経過すると、感情のコントロールがうまくできず、しばしば周りとトラブルを起こしていた。
Aさんには自閉症もあり、こだわりが強い特性があるため、対策をとる時にはまず支援センターへ相談し、障害特性に基づいたアドバイスをいただくようにしている。今回についても支援センターのアドバイスを受けつつ、試行錯誤しながら対応を進めたが、いくつかの取組について以下に紹介する。
○ルールの「見える化」
感情のコントロールがうまくできない原因のひとつに、口頭での作業の指示や職場のルールの説明では十分に理解できていないことがあるのではないかと思われた。
一方、Aさんは、言葉で聞くよりも、視覚で見た方が理解しやすい特性があることから、作業手順やルールの「見える化」を行った。具体的には、図示化したマニュアルでの指導や、ルールについて、良い例と悪い例を○×で表示し、作業場所に掲示していつでも見えるようにした。
これにより、指示等の理解がスムーズになり、作業は安定し、精神的にも落ち着いて作業に取り組めるようになった。


「見える化」とも関連するが、達成状況を分かりやすく自覚するための取組と、達成状況について振り返る取組も行った。
支援センターから、「Aさんにはコレクター気質があるので、ルールを守れたらシールを渡すという取組をしてみたらどうですか」とアドバイスをもらい、一日ルールを守れたら、退勤時にシールを渡すという取組を平成29(2017)年より始めた。それ以降、毎日退勤時には総務担当者と仕事の振り返りをする習慣ができた(総務担当者は総務課の社員が担当している)。
毎日の面談によりAさんと総務担当者とは信頼関係ができ、Aさんは困ったことがあると総務担当者に相談することで不安を感じるようなことが少なくなった。
現在では、シールから更に改良し、業務日誌への記入と、総務担当者との振り返りを行っている。また、午前の作業前にもルールの復唱を総務担当者と行っている。
業務日誌には、ルールを守って作業ができたかの自己評価と出荷品箱の整理ができたパレット数を記入し、Aさん自身が一日の業務の振り返りを行う。また、家庭からの連絡事項や会社からの連絡事項を記入し、家族と会社間でのコミュニケーションを取るツールにもなっている。
作業前と退勤時、毎日総務担当者とコミュニケーションを取る機会ができたことで、Aさんも目標を持って仕事ができている。ルールを守って仕事ができた時には、総務担当者が褒めてくれることも、Aさんにとってはやりがいにつながっている。

業務日誌
<その後に生じた課題と取組>
「見える化」や総務担当者との振り返りにより、Aさんは安定して勤務していたが、令和3(2021)年の12月頃になると、集中して作業ができない状態が生じた。当社では支援センターと相談・連携して、次の取組を行った。
○支援センターでの定期的なカウンセリング面談
支援センターと相談し、Aさんの両親、支援センターと当社の三者で面談を実施した。その結果、Aさんが働く目的や、職場のルールを守る必要性についての理解に不十分なところがあることが分かった。そこで、令和4(2022)年1月から6か月間にわたってAさんは支援センターとの定期的なカウンセリング面談を行うことになった。カウンセリング面談は支援センターで行うこととし、1月は週1回、2・3月は週2回、4~6月は月1回のペースで行うこととなった。基本的にAさんのご家族にも参加してもらうこととした。なお、カウンセリング面談の状況は適宜支援センターから総務担当者に共有されていた。
支援センターでのカウンセリング面談では、「自分はどういう行動をすべきだったのか?」といったことを繰り返し伝えていただき、Aさんもなぜ会社のルールを守らないといけないのかなどについての理解を深めていった。支援センターとのカウンセリング面談は、Aさんとご家族の希望もあり、令和6年現在も継続して実施している。
Aさんは支援センターのイベントによく参加したり、電話で近況報告をしたりと支援センターの職員の方と信頼関係を築いている。会社以外の場所で、信頼できる職員の方と落ち着いて話をすることで、受け入れやすかったのだと思う。
また、Aさんだけでなくご家族も一緒に面談に参加することで、家庭での声かけもより一層増えたと聞いている。その毎日の声かけがAさんの目標達成の原動力にもつながっている。
イ.Bさんの場合 (機械加工工程担当)
(ア)募集・採用
平成30(2018)年に特別支援学校からの申込みをきっかけに、同年11月に2週間の就業体験を行った(当時は高等部2年生)。その後も翌年(令和元年)6月と11月、翌々年(令和2年)1月と計4回の就業体験を行った。令和2年4月には新卒として契約社員で採用し、令和3年4月に正社員へ登用している。
(イ)具体的な仕事内容
・機械加工工程
生産ラインで機械に製品をセットし、起動スイッチを押し、生産ラインの中をまわりながら、次工程へ製品をセットしていく。
(ウ)個別の取組内容
○段階を踏んだ業務のステップアップ
Bさんは、就業体験時や入社時は箱洗浄工程に従事していた。
入社当初は、日勤で仕事を行い、まずは仕事をするということに慣れてもらうことからスタートした。その後、本人との面談をこまめに行い、本人の意思を確認しながら段階的に担当する仕事の幅を広げたり、残業や交替勤務にもつなげていった。その際に無理のないよう配慮をしながら進めた。
また当社では、新入社員は年4回の総務課長との面談を実施している。面談では本人と目標を設定し、本人のやる気を引き出す工夫を行っており、障害のある社員にも実施している。面談でBさんからは、仕事のステップアップの希望と「正社員になりたい」との希望があった。
入社後の仕事ぶりは問題なく、同僚ともコミュニケーションが取れ、交替勤務にも対応できていたことから、令和3(2021)年1月に別の正社員が担当していた梱包作業へ業務を変更し、同年4月に正社員へ登用した。
自身の目標であった正社員になれたことはBさんの自信につながり、現在は更にステップアップし、生産ラインでの機械加工工程に従事している。機械加工工程では、決められた作業手順を守らなければ、不良品を客先へ流してしまったり、ケガをする可能性があったり、非常に責任ある仕事だが、Bさんはルールを守って日々業務を行っている。
ウ.Cさんの場合 (箱洗浄工程担当)
(ア)募集・採用
Bさんと同様、特別支援学校からの申込みにより、令和2(2020)年9月に2週間の就業体験を受け入れ、その後も同年11月と、翌年(令和3年)1月の3回の就業体験を経て、同年4月にパート社員として採用、7時間勤務からスタートした。
(イ)具体的な仕事内容
・箱洗浄工程
出荷品箱を洗浄設備にセットし、洗浄完了後の出荷品箱の水滴をエアブローで飛ばす作業。

出荷品箱の水滴をエアブローで飛ばしている様子
(ウ)個別の取組内容
○配属部署への特性や配慮事項の説明と共有
入社前に本人・ご家族・支援センター・特別支援学校・就労アドバイザー(注3参照)・ハローワーク・当社の担当者との移行支援会議が行われ、学校での様子や配慮事項を確認した。確認された内容は、本人の配属予定部署に説明し、理解を得た。
配慮事項として、複数の指示を一度に理解することが難しいため、ひとつずつ順番に指示をしてほしいこと、あいまいな表現が苦手で、「少し」「適当に」と言われてもどの程度のものなのか理解が難しいため、マニュアルに従って説明することなどを具体的な説明することで、配属部署での共有化につながった。
注3.正式名称は「特別支援学校地域就労支援アドバイザー」。富山県の制度で、特別支援学校生徒の職場見学や就業体験、企業への働きかけ等を行う。
○勤務時間などの柔軟な変更
入社時は7時間勤務で開始した。仕事に慣れてきたら8時間のフルタイム勤務に変更したが、Cさんが当社での勤務後に自動車免許取得のため、自動車学校に通うようになると、仕事と自動車学校との両立がうまく行かず、休みがちになったことがあった。家族や支援機関とも相談の上、自動車学校が落ち着くまでは、7時間勤務に戻すよう配慮をした。
〇感情の伝え方
Cさんは、困りごとを自分から発信しにくく(うまく言葉にできない)、自分の気持ちが伝わらない不安から体調不良となり会社を休む日もあった。
就労アドバイザーや学校の先生からの助言もあり、まずは気軽に話ができるように、総務担当者からCさんに「いつでもいいから少しでもモヤモヤすることがあれば話に来てね」と伝えるようにしたところ、帰りの際に、少しずつ自分の言葉で話してくれるようになった。部分的に話すところは、担当者が状況を理解し「~ということだよね?」と確認しながら返すことで意思の疎通が取りやすくなった。その結果、Cさんの表情は明るくなり、早退や欠勤もなくなり集中して業務を行うことができるようになり、本人も自信がついた。
(2)取組の効果
ここ数年で当社で働く障害のある社員の人数が増加した分、色々な課題が起こることもある。その時は、これまで紹介してきたように当社だけで抱え込むのではなく、支援センターや学校等からのサポートやアドバイスを受け、その都度本人や家族ともこまめにコミュニケーションを取って対応してきた。
その甲斐もあり、障害者雇用を積極的にスタートしてから定着率は100%である。契約の通算が5年を超えて、ほとんどの社員が無期転換に申込みを行っており、当社で長く働きたいと思ってもらえる環境を作れたことは私たち総務担当者にとっても自信につながっている。
事例報告した内容はその一部だが、取り組んだ内容は会社側にも自信となっている。障害者雇用や特別支援学校からの就業体験の受入を通して、会社全体に障害者雇用が特別なことではなく、日常の当たり前というように捉える人が多くなってきたように思う。何事も挑戦しながらレベルアップすることの重要性を再認識している。
4. 今後の展望と課題
今後も障害のある社員が、長く働きたいと思える環境を作っていくために、支援機関と連携しながら取り組んでいきたい。これからも本人との定期的な面談を行いながら、目標を設定し、本人がやりがいを持って働けるようサポートしていきたい。
執筆者:株式会社スズキ部品富山 管理部総務課 課長 北村浩一
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