（1）職場内のフォロー体制の整備

ア．企業在籍型ジョブコーチ、障害者職業生活相談員等の資格取得の推進と配置

　効果的にフォローを行うために、業務責任者が企業在籍型ジョブコーチやキャリアコンサルタントの資格を取得。また、障害者職業生活相談員資格認定講習の受講も推進し、資格を有する店長を各エリアに配置している。なお、各店長がチャレンジクルーをフォローする体制を整えているが、本社の業務責任者も各店舗を訪問し、各店舗で生じる相談事項に応じるなど、全体をフォローする体制が構築されてきている。

　なお、定期相談及び状況確認のためのヒアリングは店長を中心に、業務に慣れるまでは週１回、以後は月１回程度実施し、チャレンジクルーの苦手なことや配慮してほしいことなどを把握した際は、店舗内で共有し、全員でサポートしている。

イ．精神・発達障害者しごとサポーター養成講座の受講推進

　本社から各店舗の従業員に声がけし、希望者に対し、宮城労働局が開催する同講座の受講機会を提供している。受講により、広く障害者雇用に理解を深めるよう推進している。

ウ．各店舗への雇用マニュアル等の整備

　障害特性に応じた配慮の内容や障害者雇用に係る諸制度、ケーススタディ等が記載されたマクドナルド独自の業務マニュアルを各店舗に配備。また、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構発行の「障害別コミック版マニュアル」や「はじめての障害者雇用～事業主のためのＱ＆Ａ～」も相談等において参考としている。

エ．就労支援機関や配置型ジョブコーチとの連携による支援

　初めての就職で不安を有するチャレンジクルーの場合は、当社の企業在籍型ジョブコーチが支援計画を作成し、宮城障害者職業センター（以下「職業センター」という。）の配置型ジョブコーチと協同で支援を行うケースもある。例えば、取り組んでもらいたい職務内容の項目化と体調のバロメーターになる指標を、本人と支援者間にて相談のうえ設定し、業務や体調について日誌形式にてチェック等を行うことで安定した勤務につながるケースがあった。

　また、必要に応じて就労支援機関や職業センターが同席しての定期や随時の本人との相談、ケース会議も実施している。

オ．専用タブレット活用による学習支援

　調理方法や作業手順などマクドナルドの多様な業務が、動画等の活用で、より分かりやすくゲーム感覚で学習できる、また、自分の理解度をランキング形式でチェックすることもできるため、楽しみながら業務習熟度を高めやすくなっている。

カ．キャリアアップ支援

　障害の有無にかかわらず全従業員に共通するキャリアロードマップに従い、キャリア形成を支援している。半年に1回、本人の自己評価や希望と店舗側が求める事項をすり合わせる面談を実施し、共通の認識を持ったうえで次の目標やキャリアアップにつなげている。

チャレンジクルーについても、スキルアップやキャリアップにつながったケースが着実に増えている。例としては、以下のケースがある。

・「トレーナー」にステップアップし、経験の浅いスタッフへの指導役となったケース。

・接客レベルが向上し、おもてなしリーダー「ＧＥＬ（Guest Experience Leader）」になったケース。

・技能及び集中力が向上し、ハンバーガー製造を競う店内ランキングにてトップになったケース。

・ハンバーガー製造の他に接客及び販売など幅広い業務を担えるようになったケース。

（2）個別ケースに応じたアプローチ及び配慮の実施

ア．障害別の配慮例

・知的障害のあるクルーには、必要に応じて資料等にふりがなを記入する、画像やイラストを多く使うなど視覚的に分かりやすく伝えられるよう工夫をしている。また、定型的作業が得意な場合には、作業工程のルーティン化を行い、効率化を図っている。

・聴覚障害のあるクルーには、時間と場所に応じて、タブレットやポケットサイズのノートを使用し、筆談でコミュニケーションを取っている。また、聴覚障害のあるクルーが所属している各店舗をオンラインでつなげ、後輩クルーから先輩クルーへ相談できる場を設けることで、悩みを共有したり、仕事を教えてもらえる機会にもなっている。

・精神障害のあるクルーには、適宜声がけを行い、状況等を確認している。例えば、店長がいつもと少し様子が違うと思い声がけをしたところ、現在の担当分担や生活面で悩みや不安を有していることが分かった。それを契機に、メンタル不調につながる前に、早期に相談や支援機関との連携等の対応をすることで、職場定着が図られたケースがあり、声がけ、確認、相談には留意している。

・高次脳機能障害のあるクルーには、スマートフォンを持ち込み、随時メモを取ることを許可した。本人はメモを見返すことで、作業ミスの防止につなげている。その他にも、話すことが苦手な面もあるため、業務用タブレットの活用や身振りでのコミュニケーションを多用している。さらに、業務中で忙しく、本人からの応答を待つ時間がない場合は、後日、説明及び相談する時間を必ず設けている。

イ．「業務上のつまずき」の要因分析結果によるアプローチ例

・遅刻が続くクルーの要因を分析したところ、ユニフォームの着替えに時間を要し、特に背面で「紐を結ぶ」ことが難しいことが分かった。そこで、まず紐結びの練習をし、時間短縮を図った。その後、ユニフォームは背面の紐結びではなく、簡単に着脱できるクリップ式に変更され、着用しやすくなっている。

・客席の清掃に時間を要していたクルーの場合は、テーブル拭き用のピンク色布巾と椅子拭き用のグリーン色布巾をその都度交換することに手間取っていたことが分かり、1席ごとではなく、ピンク色布巾でテーブル3つを拭き、その後にグリーン色布巾で椅子を3つ続けて拭く手順に変更した結果、時間は半減し改善が図られた。また、更なる時間短縮を目指し、今後は一筆書きでスムーズにテーブル拭きができるように練習することとした。

・サラダを作るのに時間を要していたクルーの場合は、サラダを作る手順ではなく、キッチンバサミを探すことに毎回時間を要していたことが分かり、近くの特定の場所に置くことで改善が図られた。