在職者の職場復帰の事例のため、復帰にむけた面談を対象者と事業所で行った。その際の詳細は、後段の「障害者への配慮の提供にあたり、障害者と話し合いを行った時期・頻度等の配慮提供の手続きの詳細」を参照。

勤務している店舗の店長・副店長を担当者（以下「担当者」という。）として定め、対象者への業務指示を行うとともに、対象者からの質問や相談にも対応、対処している。また、本社の総務部も相談窓口として、対応している。
担当者は、対象者の出勤時の様子（挨拶や行動）に気を配り、気になる点があればその都度声掛けし、状況確認等を行っている。深刻な場合は、別途面談を行い、課題等があれば早期・迅速な解決に向け対応している。面談の回数は、通常半期に一度の頻度で実施している。

商品名や価格を表記するラベルシール発行機等の操作を担当していたが、商品数が多く迷うことがあって苦手意識が強く、ストレスを感じやすかったため、作業しやすくなるよう。「一覧表」を担当者が作成した。「一覧表」は、商品ごとに発行するラベルシールの内容（品名や数字）と入力方法が具体的に書かれたマニュアル的なもので、目視しやすい場所に掲示した。対象者は「一覧表」を確認しながら作業することでミスを防ぎ、苦手意識や不安感を抑えることができ、作業しやすい環境づくりにつながった。

職場復帰時の勤務に関しては、体力面等を勘案し短時間勤務であったが、必要な場合には更に短い勤務時間が可能であることや、毎月の通院や体調不良時の休暇取得にも配慮することを対象者に伝えた。そうした配慮により、対象者は安心感を持って復帰し、勤務している。担当者は、ケースバイケースでの対応を心掛けており、体調不良等の場合は、すぐに声をかけるようにしている。職場の広さは、担当者が適度な距離感を持つことのできるものであり、必要な対応や配慮の提供がなされている。

休憩時間は、他の従業員と一緒になる場合が多いが、本人は従業員と話すことが苦手な面がある。そのため、本人にその都度確認し、配慮を希望する際には、休憩時間をずらし、できるだけ少人数、もしくは一人になれるように配慮している。また、そうした配慮を周りには悟られないような配慮もしている。

食品スーパーの店員として幅広い業務を担当している。以前から経験している海産部門での加工（煮付け等の調理）は、お客様からはもちろん、従業員からも定評がある。その他にも、先に紹介した商品名や価格をラベルシール発行機にて印刷後、商品に貼付し、売場ショーケースに陳列する業務や、廃棄商品処分や発注業務の一部、青果部門における野菜、果物袋詰め作業の手伝いも担当している。
日々の担当業務については、全体の業務量を店長が確認し、優先する作業から具体的指示を行う。その際には、本人の体調や作業状況を勘案し、手伝いや他の作業への切り替えなども適宜行う。また、助言や励ましなども行い、本人のやる気やモチベーションの維持・向上、不安感を持たせないことなどを目指しており、安定した仕事ぶりにつながっている。

対象者は在籍中の交通事故が原因で、病と障害を得た方である。休職療養を経て元の店舗へ復帰したため、店舗従業員は本人の状況をおおむね理解しており、協力的である。病や障害についての詳細は、本人の了解を得た上で担当者に伝えられており、必要な配慮が講じられている。特に復帰直後は、無理をさせず、早い時間での退社や業務量を減らすことなどを行った。その後も本人の体調と精神状態の安定を第一優先とし、配慮と回復への願いを重ねながら、現在に至っている。

担当者は、本人の気分が落ち着くよう、付かず離れずの距離感を保ちながら、日頃より、声掛けや、業務内容においてできていることへの称賛、苦手な部分へチャレンジすることへの働きかけ等を継続的に行い、本人の仕事へのかかわり方を一緒に考え、少しでも前へ進めるように取り組んでいる途中である。
障害や年齢の影響もあり、機械操作に対する苦手意識が特に強いが、繰り返し何度も経験し、失敗やうまくいった事例の要因を本人自身が理解することで、最初はできなかった仕事が、ある程度うまくできる仕事に変わり、次に確実にできる仕事へと変化していく。その結果、本人は手ごたえや実感を得られているようになっている。そうした実績・経験を積み重ねることで、本人の「あきらめない」、「やってみる」という気持ちにつながるよう、指導する側（担当者）も本人と一緒に学びながら取り組んでいる。