（1）事業所の概要　

　株式会社聖籠の杜（以下「当社」という。）は、平成10(1998）年の設立で、日帰り温泉運営が主要事業である。日帰り温泉施設として創業し、その後宿泊施設のホテルＺＡＢＯＯＮ、レストラン湯楽の増設を経て現在に至る。

地下1,100メートルから湧き出す温泉はミネラルが豊富で、湯冷めがしにくい。塩分が身体をコーティングし、保温力が高い。

バイパス・高速インターより車で3分とアクセスが良く、聖籠町内・町外を問わず多くのお客様にお越しいただいている。オープンから23年経った令和3（2021）年には、延べ入館者数450万人を達成している。令和6（2024）年度末から令和7（2025）年度初め頃にかけて、延べ入館者数500万人を達成する見込みである。

（2）障害者雇用の経緯

　当社では、令和元（2019）年まで、障害者雇用には取り組んでいなかったが、同年にハローワークから積極的な働きかけがあったことがきっかけとなり、障害者雇用に取り組み、精神障害のあるAさんを採用した。

Aさんの採用の際には、障害者を対象とした職場見学会や、就労支援機関（障害者就業・生活支援センターアシスト、就労移行支援事業所さんさん館。以下、併せて「支援機関」という。）が計画した新潟県の職場実習制度（以下「実習」という。）を4週間利用したあと、労働局の障害者トライアル雇用制度（以下「トライアル」という。）を半年間活用した。両制度を通じて、Aさんに当社での清掃業務を任せられると判断し、トライアル後には常用雇用に移行した。そして、Aさんは現在も継続して当社で働いている。

　Aさんは、当社にとって初めての障害者雇用であり、知識もノウハウもなかったため、従業員もどうしたらよいのか分からず、手探りの状態だったが、採用前から現在まで、支援機関からの継続的かつきめ細かいサポートを受けてきており、定着につながっている。
　なお、当社では、令和元年の取組を始める際に社内への周知を行ったが、その後、「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度（もにす認定制度）」への認定を目指すこととした。そして、認定に向け、障害者とともに働く社内の風土を醸成するため、令和4（2022）年11月15日に、当社社長から全従業員に対して、今後も障害者雇用を積極的に進めること、従業員が気持ちよく働くことができる環境を整えていくとの方針を再度伝えた。そうした取組の結果、令和5（2023）年1月26日に、当社は新潟労働局より「もにす認定制度」の認定を受けた。

　当社への就職を希望する見学者はこれまでも多数いるが、採用までにはなかなか至っていない。理由としては、当社へのアクセス（通勤）を考慮した場合、自動車がないと通勤が難しいこと、また、当社では短時間勤務を希望する障害者を募集しているが、支援機関から紹介される方に短時間勤務の希望者が少ないことなどが考えられる。

そのため、ハローワークとの連携を強化することや、特別支援学校の卒業生の採用を視野に入れることにより、採用ルートの拡大・強化を図っていきたい。

また、障害者の従事業務の拡大も課題と考えている。Aさんについても、清掃業務だけではなく、今後は厨房での業務（皿洗いや後片付け、盛り付けなどの調理補助）も任せるなど、職域の拡大を検討していきたいと考えている。