昭和54（1979）年に設立された昭和会病院（以下「同院」という。）は、オランダ坂を背に長崎港を望む高台に位置し、内科、循環器内科など14の診療科目のほか、居宅介護事業所や訪問介護事業所なども併せ持つ病院である。病床数は、医療療養病床で182床、地域包括ケア病床で53床、回復期リハビリテーション病床で51床となっている。　　　

（2）障害者雇用の経緯

平成30（2018）年頃に同院の障害者雇用率が法定雇用率を下回っていた状況があり、雇用率を達成するために、特別支援学校の生徒の職場実習（以下「実習」という。）を受け入れ、実習を経験した卒業生を採用する取組を進め、現在、8名の障害のある職員が働いている。

実習で同院の業務を経験した上で就職を希望する生徒を採用していることから、採用後はスムーズに就労できている。また、採用時には長崎障害者職業センターのジョブコーチ支援も活用し、定着に役立てている。

8名全員が知的障害のある職員であり、5名が清掃業務、2名が看護助手、1名が調理業務を担当している。

なお、同院の清掃業務を一部を外部委託するほか、直接雇用者による実施も行っており、直接雇用の清掃担当職員は15名いるうち5名が障害のある職員である。

（1）採用時の視点

毎年、特別支援学校の生徒の実習を受け入れており、その中で、本人が同院への就職を希望した際に採用を検討している。検討にあたっては、仕事の向き不向きよりも、周囲と協調できるかという点を重視している。

（2）職場定着に向けて

ア　勤務時間

勤務時間は原則8時間であるが、採用直後は8時間勤務についていけない職員もいることから、個々の状況に応じて柔軟に設定している。

イ　日報の活用

ジョブコーチからの助言があり、本人から日報の提出を求めている。日報は本人がその日の状況などを記入し、翌日提出するというものであるが、職場からのコメントもあり、本人は家で家族に見せることもできる。日報の活用により、職場が個々の障害のある職員の状況を把握することにとどまらず、職場からのコメントを通じて、本人や本人の家族に知ってほしいことを伝達することにもつながっている。

なお、日報の作成期間については、本人が職場に慣れ、自分から上司に相談などが適切にできるようになれば終了するなど、個別に判断しているとのこと。

ウ　病棟での業務に関する教育

入院患者がいる病棟での業務においては、「処置中は入らない」、「ベッドのカーテンが閉まっている場合に声掛けを行う」など、実習の段階から時間をかけて教育している。

エ　清掃業務における教育

清掃業務は、病室やトイレの掃除やドア・手すり・窓枠などの拭き掃除、ゴミ回収、駐車場の線引き、機器の洗浄・消毒など多岐に渡り、15名を3チームに分けて日々活動している。清掃業務の教育・フォローは、チーム内で周囲が行い、少しずつできることを増やしている。

オ　受け入れ態勢の整備

障害のある職員を配置する部門の職員に対し、個々の障害特性に関する説明会などは行っていないが、実習を行った部門での採用が主であることから、周囲の職員も含め理解があり、職場に定着しやすくなっている。

また、障害のある職員の指導・育成は、配置された各部門に任せきりにすることなく、看護部長、事務長が各部門とコミュニケーションを取って組織的に進めており、部門担当者の心理的な負担の軽減につながっていると考えられる。

医療・福祉業界は慢性的に人手が不足し、即戦力（経験者など）の採用は困難な状況である。そうした中で、特別支援学校の卒業生を採用することは、業務習熟に時間がかかってもいずれ戦力になると同院は考えており、今後とも障害者雇用に取り組んでいくとのことである。

　また、雇用している障害のある従業員の担当業務については、多種多様な業務の中で少しずつできることを増やすとともに、一人ができることを増やすことで、人手が少ない時間帯であっても対応できるよう取り組んでおり、ゆくゆくはリーダー的存在になる職員も出てくることを期待しているとのことである。