（1）事業所の概要

株式会社いきがいクリエーション（以下「当社」という。）は、平成23（2011）年に創業した。現在、沖縄市及びうるま市内に6拠点（11事業）を有し、通所介護および介護予防通所介護事業、居宅介護事業、訪問介護事業等を運営している。

当社は、すべての人たちの「いきがい」とともに歩むことを目指し、以下の経営理念を掲げて事業を行っている。

【経営理念】　いきがいとともに歩む

5つのいきがい

生きがい：自分らしい人生を歩むこと　　

居きがい：穏やかに過ごせる居場所のこと

行きがい：参加してよかったと感じること

活きがい：笑顔で活動できる環境のこと　

逝きがい：望む人生の最期を迎えること　

 
（2）障害者雇用の経緯

当社の障害者雇用は、県内の特別支援学校（以下「支援学校」という。）の卒業生を、職場実習（以下「実習」という。）を経て、平成29（2017）年4月に採用したところからスタートした。その後も積極的に採用し、現在6名が働いている。

当社の障害者の採用については、支援学校の卒業生を採用する場合と、ハローワークに障害者を対象とした求人を出して採用する場合の二つがある。詳しくは、「３．取組の内容と効果」で紹介する。

当社が障害者を採用するルートとして主に2つを紹介する。

まず、実習を行った県内の支援学校の生徒を採用するルートである。平成28（2016）年に実習を受け入れた生徒を、平成29（2017）年に採用したのが最初である。

次にハローワークに障害者を対象とした求人を出し、トライアル制度を利用したうえで採用するルートである。当社がこの制度を利用するのは、ミスマッチを減らすことや職場の雰囲気をつかんでもらうこと及び作業について適性があるか見極めることが目的である。なお、採用の判断基準については、特にコミュニケーション能力があるかを重視している。

　現在在籍している障害のある従業員すべてが介護の現場で働いている。内訳としては、知的障害のある従業員と精神障害のある従業員はサービス付き高齢者住宅やデイサービスで介護補助等として勤めており、肢体不自由のある従業員は、自身のスキルを活かし、デイサービスにて手工芸のレクリエーション指導を担当している。

なお、精神障害のある従業員は、本人の希望もあって夜間勤務のシフトを組んでいる。その他の従業員についても、通院等が必要であれば、それに配慮したシフトを組んでいる。

（1）採用に向けた取組

　前述のように、当社の障害者の採用については、支援学校からの採用とハローワークからの採用により行っている。

　支援学校については、平成28年に在校生の実習を受け入れ、その方の卒業に合わせて翌春採用したことを契機に、県内の支援学校の在校生を、実習を経て採用している。

　ハローワークについては、障害者を対象とした求人を出し、トライアル雇用制度（以下「トライアル」という。）を利用したうえで常用雇用に移行している（支援学校の卒業生も利用する場合がある）。

　実習やトライアルを利用するのは、応募者には実際に体験してもらうことで当社の業務や雰囲気を理解してもらうためであり、当社としては各人の適性や配慮すべき事項などを理解するためである。なお、採用にあたっては、介護は対人サービスの仕事でもあることから、コミュニケーション能力があるかを重視している。

（2）入社・定着などに向けた取組
ア．従事業務の選定と安心して入社できる環境づくり

　従事業務や配属先は、実習やトライアルの状況も参考に、応募者本人やその家族、支援者（支援学校の教諭、ハローワークの担当者等）との面談状況を踏まえて決定している。

また、入社後に継続的な支援が必要な場合には、障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」という。）と連携し、安心して入社できる環境づくりも行っている。

イ．職場定着に向けた社内の環境づくり

障害のある従業員が周囲の従業員と協力して業務に取り組むことができるよう、本人及び家族の了解を得た上で、配属部署の従業員に対して事前に本人の障害状況や配慮事項の周知を行っている。

採用後には、障害のある従業員と配属部署のリーダーが月1回の面談の場を設けており、必要な場合には支援センターも交えて面談している。なお、障害者職業生活相談員（以下「相談員」という。）の資格を有する従業員が２名いるが、相談員は障害のある従業員との相談だけでなく、障害者雇用に関することであれば、全ての従業員と相談している。

なお、従業員間での人間関係のトラブルがあった場合には、リーダーや相談員が対応するが、トラブルの解消が困難な場合には、現在従事している業務を変更しないようにしながら、他の部署への配置転換なども行っている。

ハード面においては、当社が医療・福祉業であることから、出入口へのスロープや廊下への手すりの設置等のバリアフリー化を進めており、車いすを利用する従業員も働きやすい環境づくりをしている。

ウ．その他の取組

支援学校在校生の職場見学を積極的に受け入れており、見学の際の生徒や教員との交流が従業員の障害への理解を深める一助となっている。

令和3（2021）年からは、当社の従業員が講師となり、社会に出た際に即戦力となりうる人材の育成を目指し、2つの支援学校にて介護に関するコミュニケーションの授業や介護職員初任者研修取得のための授業を行っている。この取組は、話を聞いた生徒の皆さんが介護に興味を持ち、一人でも多くの生徒が介護業界に進路を定めてほしいという思いもあり実施している。

また、当社は、障害者雇用に実績のある企業(応援企業)とこれから取り組みたい企業(チャレンジ企業)の登録制度である「沖縄県障害者雇用推進企業」に、応援企業として登録している。この制度は、障害者雇用に関する県民理解の促進と企業間のネットワーク構築を図るためのものであり、当社は応援企業として事例を提供したり、他のチャレンジ企業へ助言したりすることで県内の障害者雇用をより進めていきたいと考えるためである。

（3）事例の紹介
　次に当社の障害のある従業員2名の事例を紹介する。
ア．知的障害のある従業員

Ａさんはデイサービスでの介護補助業務及び介護業務に従事している。支援学校在学時、当社での実習に参加しており、当社への就職を希望したことから、3か月間のトライアル雇用を経て常用雇用となった。現在は、一日8時間勤務で週4日勤務している。

業務を行う上での当社の工夫としては、Aさんは文字での内容の把握が難しいという特性がることから、すべての指導をOJTで行った。また、毎日フィードバックの時間を確保し、その日の分からなかったことを振り返り、解決を行っている。

　Aさんは自分ができることに集中して働くことができて楽しいと感じている。今後は、介護職員初任者研修を取得すること、入浴介助を一人でできるようになること、運転免許を取得しておよそ1年になるので、半年後には自分の運転で利用者の送迎をすることを目標にしている。

イ．肢体不自由のある従業員

　Bさんは胸髄損傷による両下肢機能障害及び膀胱障害があり、車いすを利用している。手工芸品の販売店を自営しており、その経歴を生かして現在デイサービスでの手工芸の活動に従事している。3か月間のトライアルの後、常用雇用となり、現在一日4時間勤務で週5日勤務している。

　Bさんは入社当初コミュニケーションの壁を感じ、従業員同士の輪の中に自身が入っていいのかが不安で悩んでいた。しかし、他の従業員に「一人のスタッフとして見てほしい、接してほしい」という気持ちを伝えたところ、頼ってもらえることが増えた。また、自身の役割が明確になり、時間を決めて仕事に取り組みやすくなったとも感じている。

　現在の課題として、障害者雇用に取り組むことへの法人全体での理解はある程度進んでいるものの、まだ管理職と一般職との認識には差があると感じている。

また、今後の展望としては、継続雇用に向けた土台作り、人それぞれに合わせた（個性、障害特性等に応じた）育成プログラムの構築、資格取得支援の体制づくりについて、更に強化していく必要があると考えている。

そして、障害者雇用を通して、全ての従業員が働きやすさと働きがいを感じることのできる組織風土を構築し、今後不足していくと言われる介護人材の獲得、育成にもつなげていきたいと考えている。