建設業における職務創出と作業マニュアルの工夫
- 事業所名
- 株式会社竹田工務店
(法人番号: 9110001019219) - 業種
- 建設業、うち除外率設定業種
- 所在地
- 新潟県新潟市
- 事業内容
- 建設工事業
- 従業員数
- 183名(令和7年12月現在)
- うち障害者数
- 5名
-
障害 人数 従事業務 視覚障害 1名 倉庫作業員 肢体不自由 1名 積算部門管理職 内部障害 1名 型枠部門管理職 精神障害 2名 倉庫作業員、一般事務 - その他
- 障害者職業生活相談員
- 本事例の対象となる障害
- 視覚障害、肢体不自由、内部障害、精神障害
- 目次
-
事業所外観1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
株式会社竹田工務店(以下「同社」という。)は、昭和47(1972)年の設立で、事業内容は型枠工事、建築工事設計施工である。型枠工事とは、作業場で作った型枠を、建設現場に運び、その型枠で鉄筋の外側を囲んで生コンクリートを流し込み、コンクリートが固まったら型枠を解体するというものである。
創業以来、学校・病院などを始め、多くの商業施設・公共施設や民間の建物建設に携わり、社会資本の整備に貢献してきた。拠点は新潟市に本社、上越市に上越本店、新潟県内外に支店が2か所、営業所が4か所を展開している。
(2)障害者雇用の経緯
同社は、2名の障害者の新規雇用を平成26(2014)年から開始した。
型枠工事は地味なイメージがあり、当時から採用募集しても応募が少なく人手不足が深刻で、年々採用が困難になることが想定されていた。同社は対策として、定年年齢の引き上げ、高齢者や外国人の採用等働き手の確保についていくつかの取組を行った。
一方、障害者雇用促進法の改正に伴い、障害者の法定雇用率が年々段階的に引き上げられていたところであり、それに伴って同社においても雇用すべき障害者の算定数が増え、法定雇用率を下回ることも予想されていた。
そうした状況から、当時の代表取締役が、人材確保と法定雇用率達成を目指し、業界の先駆けとなって障害者雇用に取り組むことを決断し、障害者の採用活動に着手した。
一方、建設業は、危険を伴う作業があり安全性の確保が求められることから、障害者を雇用することは難しいとの考えもあった。そこで、同社はハローワークや障害者就業・生活支援センター(以下「支援センター」という。)など障害者就労の支援機関のサポートを受けつつ、障害者雇用を促進してきた。
2. 障害者の従事業務と職場配置
現在、本社に3人(積算部門管理職、型枠部門管理職、倉庫作業員)、上越本店に2人(倉庫作業員、一般事務)が在籍している。
本社の管理職の2人は、いずれも入社後に受障した社員で、それまでの経歴を引き継いで各担当部署における管理責任者の任務にあたっている。
障害者を新たに採用するにあたり、事業所内で障害者が従事する職務の洗い出しを行ったところ、建設現場での作業は、前述のように安全性等の観点から障害者の配置は難しいと考えられた。そこで、社内の作業場や倉庫で行う作業の中から検討したところ、回収されたコンクリート型枠で使用する木材[桟木(さんぎ)]の片付け、釘抜きとその穴埋め作業、ベニヤ板からのコンクリート剥がしや仕分け作業等が抽出された。それらの作業は、いずれも次工程の前段階として重要な作業である。
本稿では、建設業における職務創出についての紹介を主眼とすることから、これらの作業に焦点を当てて紹介する。
釘抜き作業3. 取組の内容と効果
(1)取組の内容
ア 募集・採用
障害者の募集と採用について、同社は経験に乏しく不案内な面もあったため、地域の関係機関の協力を得て、以下のように進めていった。
【特別支援学校高等部】
特別支援学校が開催する学校見学会等に参加して、職業指導の実態や在校生の状況等の情報を得て、障害者への理解を深めた。
生徒に対して、職場見学を案内してもらい、希望者には2週間程度の職場実習を複数回実施した。実習生に同社の作業を実際に体感してもらう中で、同社も直接、実習生の作業ぶりを確認した。その結果、双方の意向が合えば、採用することとした。
【支援センター】
支援センターは、管轄地域の仕事を求める障害者が登録しているが、同社は支援センターと日頃から連絡を取り合っていることから、タイミングを見計らって登録者の中から、同社にふさわしいと考えられる者について情報提供がある。
同社は状況に応じて応募者に会い、職場実習(新潟県障害者職場実習制度)を3週間程度実施して、同社と支援センターで仕事ぶりや職場への適性を確認する。その結果を踏まえて、同社が採否を検討する。
【ハローワーク】
ハローワークが開催する障害者就職面接会に参加することによって、短時間に複数の求職者との面接が実施できる。
また、前述のように支援センター等関係機関の利用者で採用に至った障害者に対して、ハローワークのトライアル雇用(障害者雇用トライアル事業)を活用し、試行的な雇用を経た上で常用雇用に移行している。
総務課長を障害者職業生活相談員(以下「相談員」という。)として選任配置している。相談員は、支援センター等関係機関と連絡調整を担当しており、募集活動や職場実習制度等を利用する際の諸手続きを担っている。
また相談員は、障害者雇用に先進的に取り組んでいる企業の事例を知り、精神障害者や知的障害者の雇用について理解を深めるために、ハローワークや支援センターが開催する障害者雇用に関する講座やセミナーを度々受講して、知識のブラッシュアップに努めてきた。
イ 個別の取組内容
① 障害特性に応じた作業マニュアルの作成
障害のある社員に対して「コンクリート型枠で使用する木材の片付け作業」等に従事させることになった。しかし、実際に作業を託してみると、課題も現れた。
例えば、材木を揃える作業では、僅かな差(20㎝程度以内)は誤差として許容して差し支えないが、障害のある社員は、誤差とされる長さが判別できず、木材の端を完全に一致させて揃えようとするため、必要以上に作業時間がかかりすぎた。作業を託した最初のうちは、指導役の社員が手本を示しながら繰り返し教えることができるが、それをいつまでも続けることはできなかった。
そこで、ハローワークの精神・発達障害者雇用サポーター、支援センターの支援員の助言と協力を得て、対象者の理解度に合った作業マニュアルを作成した。
正しい作業のやり方や気をつけるべき点を目で見てはっきりと分かるように、例えば、釘抜作業では指導役の社員が演ずる作業動作について、それぞれ「良い例」と「悪い例」を写真に撮影し、大きめの文字で具体的な説明を入れるといった工夫を施した。
作業マニュアルの例3点

例1 材木のそろえ方の作業マニュアル

例2 釘の抜き方の良い例

例3 釘の抜き方の悪い例
【作業日誌の作成】
障害のある社員の日々の作業状況や心情を把握するため、作業日誌を導入している。記入内容は、「当日の午前・午後に行った作業内容」、「今日の問題点・明日の目標」である。
【作業日誌を活用した意思疎通の促進】
障害のある社員と同じ部署に選任している指導者(実務教育担当支援者)が作業日誌に目を通し、仕事や人間関係に悩みや困ったことがないかを確認して、必要に応じて声掛け等を行っている。
【相談員による週1回の面談】
週に1回程度は相談員が面談を担当する。作業日誌を参照しつつ本人が気にしていること等を聞き取る姿勢で臨んでいるが、相談員からも本人の理解度に合わせて、安全への注意喚起等をする場としている。
【支援センターとの連携】
自ら話しかけることが苦手な社員は、たとえ何か困ったことがあっても相談がしづらい。そうした社員であっても、支援センターの支援員には気持ちを打ち明けやすいので、本人が支援センターと電話で直接相談ができる体制を整えている。相談の状況によっては、支援センター支援員から同社にフィードバックしてもらい対応の参考としている。
また、事情によっては、支援センター支援員に来社してもらい、本人、支援センター、同社での三者面談を行い、問題の解決につなげている。
休憩について通常は、昼1時間と午前10時及び午後3時に各15分間となっている。しかし、障害のある社員については、その障害特性や体力等から長時間続けて作業をすると、作業能率が大巾に低下する場合があった。そのようなケースでは、以下のように、細かく休憩時間の設定をした。

さらに定時的な休憩だけでなく、具合が悪い時には遠慮せず休憩できるように職場の雰囲気づくりに努めている。
全社員が出席する毎月の安全大会において、労働災害防止や安全意識向上のための勉強を行っているが、併せて障害者雇用に関する話題も共有し、全社員の認識を高めている。
(2)取組の効果
ア 募集・採用
① 関係機関と連携した募集と職場実習等の実施
関係機関を通じての募集により、応募者の障害特性や配慮すべき事項など、雇用する上で参考となる情報を事前に得ることができた。
また、職場実習は、職場環境への適合性の把握にも役立った。例えば、倉庫作業といっても屋外での作業も多く伴っており、寒暖が厳しい時期や、雨雪の日もあることからそうした環境下でも問題ないのか、また休憩時間をどうやって過ごすのか、社員とのコミュニケーションはどうなのか等さまざまな観点での評価もできた。
実習生も同社の雰囲気を肌で感じることができ、双方にミスマッチを防ぐ効果があった。
② 相談員による関係機関との連絡調整
相談員が一貫して関係機関と連絡調整を行うことにより、同社の障害者雇用に関する現状が、また関係機関からは求職者の状況等が相互に継続して共有できることから、採用活動を円滑に進めることができた。
イ 個別の取組
① 障害特性に応じた作業マニュアルの作成
導入前は障害のある社員が手順を正しく理解するまで、指導役が繰り返し作業指示を与える必要があったが、作業マニュアル導入により自身で作業マニュアルを参照して進めることができるようになり、指導役の時間的負荷が軽減された。
また、木材整理作業等では、必要以上に端を揃える時間が減少して、業務の効率化が図られた。
② 作業日誌の活用と面談の実施
作業日誌や相談員等による定期的な面談を通じて、悩み等についてタイムリーかつ具体的に把握することができる。また、支援センターと連携しつつ相談をすることにより、同社だけでは把握が難しいと思われることであっても、聞き取ることができる。
さらに、問題把握後についても、専門的な助言を受けられることで、より適切な雇用管理につなげることができる。体調面について把握することにより、必要な通院日や休日を設けられた。
こうした取組が本人の不安の軽減や体調の安定となり、職場への定着にもつながっている。
③ 障害特性や体力等に配慮した勤務
障害特性を考慮し、体力に合わせて休憩を入れることにより、無理なく作業を続けることができた。それに伴って、集中力も持続し、同社が求める作業能率に近づけることができた。
④ 障害者雇用に関する社員の意識の向上
当初、社員の中には障害者への対応に戸惑っている者もいたが、障害者への配慮は、写真等を活用したマニュアルが作業理解に有効であることや、定期面談が職場定着に効果的であるという点では、外国人技能実習生に対する配慮と類似点があると理解でき、受入れが進んだ。継続した学習の効果もあって、社員の意識改革が進み、「障害者と一緒に働くことは普通のこと」という企業風土の醸成につながった。
4. 今後の展望と課題
同社は、令和6年のハローワーク新潟と新潟市が主催する「障害者雇用推進セミナー」において、障害者を雇用していない企業を対象に、自社の取組を積極的に公開することで、障害者雇用の啓発に貢献するまでになった。
上述した障害者雇用の一連の取組が評価され、令和6年度「もにす認定(障害者雇用優良中小事業主認定制度)」を、令和7年度「障害者雇用優良事業所等表彰 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞」を、それぞれ受けている。
これからも、社是である「障害者が地域の一員として共に暮らし、共に働く」の実現に向けて力を入れていく考えとしている。現在の課題としては、まだ障害者を雇用していない事業所があることである。これまで培った障害者雇用の知見を生かし、まだ雇用をしていない営業所等においても1名以上の障害者を雇用することを目指して、検討を進めていくこととしている。
執筆者:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
障害者雇用開発推進部 雇用開発課
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