（1）募集・採用

　自社ホームページでの求人募集のほか、ハローワークのインターネットサービスや東京しごとセンターに求人依頼を行い、また合同面接会への参加や自社でのミニ面接会の開催により採用活動を行っている。

　採用面接においては、現場担当者だけでなく人事部門の担当者も対応しており、応募者の障がい状況にも配慮しながら、オンラインや対面で実施している。応募者の希望に応じて、支援機関担当者の同席での面接も行っている。また、面接時に採用後の労働条件等の詳細を確認し、現場担当者とその後のフォローを含めて調整を行い、定着を重視して本人意向も踏まえた業務アサインを進めている。

　募集の際は障がいの種別を限定せず行っており、発達障がいを含めた精神障がい者からも多数応募があり、積極的に採用している。この結果、精神障がいのある社員の割合は、障がいのある社員数のうち半数近くを占めている。

（2）障がいのある社員の業務・職場配置等

障がいのある社員の担当業務は、管理部門や営業部門での営業アシスタント業務（資料作成やデータ管理、稟議申請、精算対応等の事務処理等）のほか、店舗では販売サポート業務（清掃や在庫管理、データ管理、庶務等）、物流センターでは物流業務（入出荷作業やキッティング、在庫整理等）と多岐に渡っている。また、社員向けマッサージルームでのヘルスキーパーや、最近ではシステムエンジニアの経歴を活かしたIT関連業務（システム導入対応やメンテナンス、データ分析等）を行っている社員もいる。

　なお、障がいのある社員100名のうち事務所勤務者が63名、店舗（携帯電話販売店等）での勤務者が26名、開通/物流での勤務者が11名となっている。

　勤務時間については、本人の配慮事項も確認しながら設定しており、安定して勤務ができている社員にはフレックスでの勤怠設定や業務内容に応じて在宅勤務を許可している。また、正社員登用も積極的に行っており、障がいのある社員のうち約70％が正社員として勤務している。

（3）職場定着のための工夫等

職場定着・就労継続等のための対策として、以下の取組を行っている。

○ハートフル社員という呼称

　社内では障がいのある社員をハートフル社員と呼び、障がいのある社員と障がいのない社員がともに仕事をすることが当たり前の職場環境となっている。また、先に紹介したDEIB推進方針を社内に広く周知している。障がいの有無も含めた多様な人財が互いの違いを受け入れて認め合い、個々の能力を活かしながら組織運営を行う企業風土の醸成を推進している。

○ハートフル社員交流会の実施

 　定期的にハートフル社員同士の交流会を開催し、毎回テーマを決めてお互いに意見交換等ができる機会を設けている。以前は本社内での対面開催のみであったが、コロナ禍を機にオンライン開催へ移行し、全国規模で障害のある社員同士が交流を持てるようになり、働きやすい職場環境づくりの促進と社員同士のつながりの強化につながっている。

　　　　
　　　　　　　　　　　　　ハートフル社員交流会のプログラム例

○感謝状の贈呈

　安定就労を奨励し、当社への帰属意識とモチベーションの向上を目的に、毎年4月1日付けで入社満1、3、5年を迎えたハートフル社員に人事部長名で感謝状を贈呈している。贈呈の際には、対象者に感謝状の受領希望の有無を確認した上で、贈呈方法の意向（所属チームメンバーの前での手渡し、1on1ミーティングなどでの上司との対面時に手渡し、その他）を確認した上で行っている。

○定期面談の実施

　特に精神障がいのある社員については、本人・上長との人事部門面談（各々30分程度）や本人と各拠点人事担当者との面談を定期的に実施し、業務上の悩みや課題を共有することで心身への負担低減等を図っている。

精神障がいのある社員以外のハートフル社員についても、全社員を対象に実施している上長による1on1ミーティングを定期的に行い、コミュニケ—ションの活性化や信頼関係の構築、モチベーションの向上を図っている。

○合理的配慮の提供等

　上記の取組に加え、障がいのある社員一人ひとりに業務指導に関する担当者（チームリーダー等）を決めているほか、人事担当者へ直接相談ができるよう相談窓口を設置し、就業環境や業務を行う上で困ったことを相談しやすい体制を整備し、必要な配慮を提供している。

社内のみで解決できない事案がある場合は、障害のある社員が登録している障害者就労支援センターへ相談するなど、支援機関との連携を図っている。 

令和5（2023）年にハートフル社員として入社し、システムエンジニアの経験を活かしてECサイトの立上げをはじめ、データ分析など幅広く担当しています。

　私は、10年以上前に過労で精神障がいを発症しました。障がいを抱えながらも、安心して長く働ける環境を求めていた時に、ハローワークの求人で当社に出会いました。

　当社は風通しが良く、人事部の障がいに応じたサポートも温かみがあり制度も充実しています。また、上司との定期な1on1ミーティングなどのケアで、症状が再発することもなく前向きに働けています。良い意味でハートフル社員であることを意識することはあまりありません。

　今はDX研修に参加し、新しい挑戦に取り組んでいます。障がいがあっても、自分の力を活かして成長できる会社で働けることに感謝しています。

今後もこのような意識や考え方を大事にして、さらに高めていくことが目標となっている。

また、新卒採用の増員計画は今後も進んで行くため、これに伴い、当然、障がい者の採用を増やすことになっていくが、ただ雇用人数を増やすだけではなく、定着率を高めていくことを重要視している。

そして、定着率向上とあわせて、障がいのある社員一人ひとりのキャリアアップ（できる仕事を増やし、パソコンのスキルを向上させるなど、難易度の高い仕事にも挑戦すること）を実現することが今後の課題である。