健常者・障害者の区別意識のない職場を目指して
~職務分析により障害者雇用への道を開く~
- 事業所名
- 株式会社カメハタ
- 所在地
- 北海道札幌市
- 事業内容
- 飲食店を対象にした業務用酒類食品販売
- 従業員数
- 105名
- うち障害者数
- 4名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 1 夜間のパソコン電話・fax受注に対する処理および伝票発行 内部障害 1 夜間のパソコン電話・fax受注に対する処理および伝票発行 知的障害 2 配送業務に2名在職、採用当初は倉庫整理業務で習熟度により、現在は2名とも配達助手。 精神障害 0 - 目次
- ホームページアドレス
- http://www.kamehata.co.jp

1. 事業所の概要
①沿革
明治41年6月、札幌市で日用雑貨・油・食料品を扱う曲清亀畑商店を開業。昭和28年4月、株式会社曲清亀畑商店となった。順調に業務拡張し、平成4年10月に業務用酒類食品販売部門を独立させ株式会社カメハタを設立。その後、平成9年から順次「酒屋D&D南3条店」、「酒屋C&C」、「酒屋亀太郎」、「酒屋D&D北6条店」の4店舗を開店しこれに加えWEBサイトでインターネットによる販売も行っている。
②事業の特徴
・ 当社は飲食店に対する業務用酒類食品販売の老舗で、今年で創業満101年を迎えた。顧客の飲食店は全道に亘り、特に札幌市内の飲食店約1万軒のうち約2,500軒が顧客となっている。取扱商品の中でビールは、4社の工場(3社は道内、1社は本州)から直送されており、4社すべての工場の商品を扱っているのは道内で当社だけである。
・ 経営方針にもあるように、リサイクルに力をいれており、事業所裏には瓶集積所があり、ペットボトル、紙パック、色付瓶、無色の瓶と分別して回収・集積している。
③経営方針
「酒」は人々に開放感や潤いを与える飲み物であり、かけがえのない「文化」である。業務用酒販売店は飲食店とともに「健全な飲酒文化」を担い、かつ納品した酒の容器の回収により「リサイクル社会」を支える極めて重要な仕事をしている。ビール瓶や一升びんのリサイクルは地球環境保全にも役立っており、それが業務用酒販売店の「仕事」であり「使命」と考えている。創業して満101年を迎え、飲食店とともにこの「健全な飲酒文化」と「リサイクル社会」が継続・発展し、顧客から「つき合って良かった」と言われる会社を目指している。
④組織構成
社員は「社員」、「準社員」、「アルバイト」の3形態であり、業務遂行の到達レベルにより、アルバイト→準社員→社員と昇格する。現在、アルバイトは47名、準社員は10名、社員は44名在籍する。アルバイトは一人一役、準社員は一人二役、社員は一人三役をこなしてもらう。組織は営業部、業務部、経理部の3部から成り、それぞれ51名、45名、5名おり、障害者の勤務する受注、配送は業務部に所属する。
⑤障害者雇用の理念
敢えて障害者雇用について全社的に意識させていない。人が寝ている夜中に働かなくてはならないなど、会社にもハンディのある仕事はいっぱいある。働く人のハンディと働いてもらう企業のハンディは五分と五分。職務に要求される知識、能力、経験、年齢などを明確にし、それに合致する人ならば障害者であっても何のハンディにもならない。このように考え、障害者を雇用している。障害者を雇用した後も障害者だからといって区別しない。与えられた職務に必要な知識、スキルを身につけるよう指導し、要求する。アルバイトからスタートし、準社員として働けるレベルになったら準社員に昇格、その後社員として働けるレベルになったら社員に昇格する。
2. 障害者雇用の経緯・背景
・ 業務の標準化を目指し職務分析を実施
障害者雇用に至った基盤は業務の標準化、それに伴うコンピュータによる業務の効率化・精度向上である。平成14年から抜本的な業務の標準化に取り組んだ。職務分析を行い、それぞれの職務に必要な知識、能力、経験、年齢などを明確化した。各職務遂行のための必要要件を明確化したことにより、健常者でなくともできる職務が明確になった。実際に各顧客から酒の注文を受ける受注部門では、1日に900~1200件の注文があり、約3割を日中に電話で注文を受けるが、身体障害者の働いている夜中から朝までの時間帯には、3割を留守電で、3割をファックスで、残りをメール・インターネットで受注する。
日中の電話注文では、担当者が応対し、品物を確認しながら受注できるが、留守電だとそうはいかない。店の名前を言い忘れる顧客や銘柄を言わずに数量だけを注文する顧客もいる。そうすると「この声はスナック××のママさん」、「この人の酒1本は純米清酒○○の4合瓶1本のこと」と、中には閉店後酔って電話するので、ろれつが回わらず、内容不明な注文もあり、職人芸的に判別し伝票を作っていた。即ち、担当できる人は限られていた。そこでコンピュータと電話を統合した新システムCTIを導入。会話内容をコンピュータに録音し、併せて、電話番号と店名、過去の発注データをパソコン画面で一括表示し、受注内容を入力すれば伝票が自動的に発行できるようにした。これにより職人芸は必要なくなったが、依然真夜中の伝票処理業務を行う担当者は必要である。そこで、ひらめいたのは昼はダメだが夜なら働ける人がいるということであった。ハローワーク(公共職業安定所)で障害者の集団面接会を紹介され、二人を採用できた。一人は昼夜逆転の生活をしていて人と関わって仕事をするのは不得手だが、画面に向かっているのは何時間でも苦にならないという人、もう一人は人工透析をしているため日中の仕事は無理だが、夜なら働けるという人であった。当初社内では懸念もあったが、勤務態度がまじめなことから、さらに知的障害者の採用へと発展した。
3. 取り組みの内容
①障害者の従事している作業内容等
・ 肢体不自由 1名・・・ | 受注業務に従事している。勤務時間は午前2時~12時までの間のシフト勤務。実働7時間30分。下肢に障害はあるが、職務遂行にまったく問題ない。平成15年に入社し、現在は社員になっている。 |
・ 内部障害 1名・・・ | 同じく受注業務に従事している。日中に人工透析を受けているため、夜間勤務を探していた。勤務時間は午前2時~12時までの間のシフト勤務。実働7時間30分。平成15年に入社し、現在は社員になっている。 |
・ 知的障害 2名・・・ | 平成18年入社と平成20年入社で2名おり、2名とも最初は容器分別等の倉庫整理を担当し、現在は配達助手として配達に同行している。平成18年入社の1名は仕事にも慣れており、勤務時間は通常時間の午前8時~午後4時30分。 もう1名は倉庫整理から配達助手になりたてで、まだ訓練期間中のため勤務時間は午前8時~12時。この1名に対しては先輩社員を1名専属の指導者にしている。 |

受注業務の職場写真

配送業務の職場写真
②採用手段
当初はハローワークの集団面接会で紹介してもらっていたが、現在は集団面接会に限らずハローワークで紹介してもらっている。
③活用した制度や助成金
・ 障害者の雇用に当たっては、最初は3ケ月間の「トライアル雇用制度」を利用し、一人40,000円/月の奨励金を受けた。
・ 正式採用後は特定求職者雇用開発助成金(重度でない身体障害者、知的障害者の場合は半年間平均賃金額の1/3)を申請し、重度障害者で92万、重度でない身体障害者で61万円の助成金を受けた。
・ 平成16年に知的障害者を1名雇用した時は、職場適応訓練制度を活用し、職場適応訓練費の助成金を受給。
④障害者雇用で留意していること
・ 会社の仕事を分析して、できる仕事を見つける。
・ 定期的な通院が必要な人もいるので、支障が無い様に仕事はチーム体制にする。
・ 忙しい曜日は全員出社、暇な日に交代で休むシフト勤務にする。部署によっては1日の時間帯で、忙しい時間帯に人を厚く、暇な時間帯は人を薄くする。
・ チーム内の業務分担は明確にするが、全員が他の仕事も出来るようにする。仕事情報を共有し、チーム内で1~2名の欠員でも支障が無い体制とする。
・ 障害者だけにではないが、毎日の「声かけ」を実行している。特に入社したての慣れない時は、「声かけ」により会話を交わすことで本人の仕事への取り組み状況、進捗状況等を把握することができ、日常的な指導にも役立っている。
4. 取り組みの効果
・ 障害者雇用を通じて、
①シフト勤務によりチーム内で各自が安心して休みが取れるように、全員が業務分担の協力意識を持って仕事をするようになり、併せて、お互いにウィークポイントをカバーし仕事をするので、仕事面だけでなく、メンタル面でも相談しあうようになる。
②仕事をする上で、必要なのは仕事に対する真剣さと言うことで、真剣に仕事をしている態度が、仲間として信頼を持つようになり、周りの人も影響を受け、チーム内から部内・社内の一体感が醸成されてきた。
障害者の勤務態度もまじめであり、社員の意識の中にも健常者、障害者という区別はなくなっている。人を人として見る、という意識が従業員全体に浸透している。
5. 最後に(編集後記)
・ 職務分析を行い、職務遂行に求められる知識、スキル等の要件を明確にしたことで、障害者雇用の道が開かれた。職務遂行に必要な要件を満たしているのであれば、健常者、障害者を問わないという姿勢が経営から明確に打ち出されており、この考えが社員に浸透している。実際に障害のある社員の上司や先輩社員にインタビューしたが、二人とも「言われてみれば障害者だったな、という感じです。通常仕事をしている時は、全く障害者という意識は持っていない」とのことだった。
・ 社員の雇用形態はアルバイト、準社員、社員の3種類であるが、それぞれに求められる職務遂行レベルが明確にされている。それぞれの段階で求められるレベルに達すると上位の雇用形態になる。これは健常者、障害者を問わず各人に適用されている。
・ 健常、障害という区別はなく全員をそれぞれ一人の人間として見て評価を行い、「適材適所」を心がけている。障害者を特別扱いせずにごく自然体で雇用している企業という印象をもった。取材をしながら、創業101年になる老舗に日本の会社の良さであった「社員は家族。一人一人を大切にする。」という思いを感じることができた。
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