事業所名

株式会社シムス

所在地

北海道札幌市

事業内容

総合サービス（訪問介護・広域施設福祉センター運営受託他）、ビルメンテナンス

従業員数

310名

うち障害者数

9名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	1	清掃業務
肢体不自由	3	2名（重度）が受付・事務。1名が清掃
内部障害	0
知的障害	4	清掃業務。内1名は更にリネン整理
精神障害	1	清掃業務

この事例の対象となる障害

聴覚障害
肢体不自由
知的障害
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯・背景
3. 取り組みの内容
4. 取り組みの効果
5. 最後に（編集後記）

ホームページアドレス

http://www.habataki.co.jp

事業所外観

1. 事業所の概要

①沿革

昭和43年、株式会社シムスの前身である社団法人北海道炭鉱離職者雇用援護協会が設立され、昭和46年にビルメンテナンス業を開始。昭和53年株式会社炭鉱離職者福祉公社に組織変更し、平成11年社名をシムスに変更し現在にいたる。

②事業の特徴

総合社会サービスとビルメンテナンスを2本柱に事業を展開。総合社会サービスでは社会福祉の理念を大切に福祉、介護、保育所運営等、様々なコミュニティ・ビジネスに取り組んでいる。また、ビルメンテナンスでは公共施設、福祉施設、学校、病院、オフィスビル、スーパーマーケット等幅広い分野で実績がある。福祉・介護とビルメンテナンス、業容は違うがそれぞれのノウ・ハウ、経験がもう一方の事業に活かされている。福祉施設、病院、学校等でのビルメンテナンスには特にこの相乗効果が発揮されている。

③経営方針

前身が炭鉱離職者の雇用を援護する社団法人であったことにもよるが、できるだけ社会的に貢献度の高い事業領域で事業展開をするというのが基本方針である。勿論ビジネスである以上は利益を求めるが、儲かるか儲からないかの基準ではなく、社会貢献度の高い領域で事業を展開し、社会に認められ愛される企業を目標としている。社名の「シムス」（syms）の“sym”は、symbiosis（共生）のシム、sympathy（共感・思いやり）のシム、そしてsymphonize（調和・協調）のシムであり、当社がイメージする21世紀型の企業像を表現している。

④組織構成

総務部、福祉分野のはばたき事業部、メンテナンス分野のビルメンテナンス事業部、ビルメン赤平事業所からなる。従業員は、総務部3名（内障害者1名）、はばたき事業部149名（内障害者4名）、ビルメンテナンス事業部113名（内障害者4名）、ビルメン赤平事業所45名の合計310名である。

⑤障害者雇用の理念

理念というような固苦しいものはないが、とにかく障害者に働く機会を提供するという考えを基本に障害者雇用に努めている。この考えは、最初に雇用した障害者（事故で亡くなられた）が常日頃から「哀れみでなく機会を与えてください」と言っていたことによる。彼女は非常に優秀な人であり、それまで会社が障害者に対して持っていた不安を取り払ってくれた。会社として彼女の遺志をしっかりと受け止めてその遺志を実現させるべく障害者雇用に努めている。

2. 障害者雇用の経緯・背景

障害者の法定雇用率を満たすことを目的としてとにかくまず1人雇用する方針を立て、ハローワーク（公共職業安定所）の集団面接会で1名選抜して平成14年春に障害者を1名雇用した。仕事を与えてみたが、非常に優秀な女性であり、障害者雇用に対する会社の不安が払拭された。障害者であっても作業環境を整えれば全くなんの遜色もなく仕事をしてくれることが判り、障害者には「哀れみではなく機会を与える」ことを目指して、その後積極的に障害者雇用に取り組んで来ている。
平成15年4月に知的障害者を2名（清掃業務）、平成16年2月に知的障害者を1名（清掃業務）、平成18年3月に肢体不自由者（重度）を1名（事務・受付）、精神障害者を1名（清掃業務）、同年4月には知的障害者を2名（清掃業務）、平成19年4月に肢体不自由者（重度）を1名、平成21年2月に聴覚障害者を1名（清掃業務）、同年5月に肢体不自由者を1名（清掃業務）採用し、現在は9名の障害者を雇用している。

3. 取り組みの内容

①障害者の従事している作業内容・勤務形態等

本社総務部での事務作業風景

札幌市北老人福祉センターでの 受付事務作業風景

札幌市北老人福祉センターでの 清掃作業風景

②採用経路

以下のような様々な経路で採用を行っている。

a．ハローワークの集団面接会

b．ハローワークを通じ養護学校に募集をかける。

c．障害者団体に直接求人。

d．一般求人誌で募集。

③活用した制度や助成金

本社総務部の障害者の雇用に伴い女性トイレが車いすで使えるよう、施設改修に関わる助成金（「第1種障害者作業施設設置等助成金」）を申請し207,000円受領。

④ジョブコーチ制度

当社では「同労型ジョブコーチ」という独自のものを配置している。知的障害者を清掃員として雇用する際にジョブコーチがマンツーマンで行う清掃の形態である。大きな特徴として自分がやってみせて真似をしてもらう「モデリング方式」や作業に習熟した現場の清掃員が必ず教え、できなくても叱らない、同じことを何回も繰り返すなどである。

a．清掃業務を受託している北海道難病センターでは、平成15年4月より知的障害者を2名配置しているが、それに先立ち3月中旬よりジョブコーチを2名採用した。知的障害者の勤務時間帯には必ずジョブ・コーチを配置し、ジョブ・コーチが障害者をフォローする形で作業を進めている。知的障害者雇用から6年になる現在はジョブコーチは1名であるが、健常者と障害者とが組み合わせシフトで勤務しており、健常者が障害者をアシストする体制を継続している。

b．札幌市北老人福祉センターでは平成18年4月の知的障害者2名の雇用に伴いジョブコーチ2名を配置した。3年経ち知的障害者も仕事に慣れた現在は、ジョブコーチ1名が2名の知的障害者のアシストをしている。

⑤障害者雇用で留意していること

業務については、障害者の障害の状況に応じ、施設の改修、ジョブコーチの配置等の措置を取り、働きやすい環境作りに留意している。また、安全面では特に車いすの障害者の通勤に配慮している。札幌市北老人センターに勤務している職員は出退社にタクシー利用、本社総務部に勤務している職員は住まいが本社の近くであるため自力で出退社しているが、冬期間は出社時は総務部長が車で迎え、退社時はタクシーを利用している。

4. 取り組みの効果

・ 障害者と一緒に働くことにより、他の職員が障害者を身近に感じ、障害者を理解するようになった。

・ 障害者も健常者と同じように働けるということを実感した。障害者の働いている施設では、利用者も障害者をごく自然に受け入れている。

・ 札幌市北老人福祉センターでは、小学生も施設を利用している。最初は車いすの障害者に驚いていたようであるが、最近では障害者がドアの近くに来ると、ドアを開けて待っていてくれる。障害者の存在が一緒に働く従業員だけでなく、利用する子ども達にも良い影響を与えている。

5. 最後に（編集後記）

・ 「とにかく法定雇用率を達成する。仕事は雇用してから考えれば良い」。何か新しい事を始めようとする時は、とかくそれの問題点に目を奪われなかなか新しいことに踏み切れないことが多いが、株式会社シムスはとにかく採用した。集団面接で「この人」と思った人を採用した。採用してみて判ったことは、仕事ができる、障害者ではあっても仕事にはなんの支障もないどころか非常に優秀であったということだった。そして、現在に至るまで「哀れみでなく機会を与えてください！」というその障害者の遺した思いを忘れずに障害者雇用に努力している。

・ 「とにかく法定雇用率を達成する。仕事はその後で考える。」このような考えも、障害者雇用を大きく前進させることを実感した。現在障害者雇用について迷っている企業には大いに参考になるのではないだろうか。

・ 取材して、清掃業における障害者雇用の難しさを感じた。クライエント企業の理解がなければ障害者が清掃の仕事をする機会が失われてしまうおそれがある。

・ 本社で車いすの障害者を採用した時には、事業所のビルのオーナーと粘り強く交渉をして女性トイレを車いすで使えるトイレに改修したり、駐車場からビルへの出入り口に段差をなくす取り外し可能なスロープを独自に作ったりしている。

・ 知的障害の2名、肢体不自由の2名にインタビューしたが、皆さんの表情も明るく、「職場の理解もあって楽しく働いています」と言っていた。

・ 取材を通して社長の障害者雇用への強い意志を感じるとともに、それが従業員全員に浸透していることを実感した。