障害者の職場定着と雇用拡大への取り組みについて
- 事業所名
- 株式会社ラグノオささき
- 所在地
- 青森県弘前市
- 事業内容
- 菓子の製造、販売
- 従業員数
- 298名
- うち障害者数
- 6名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 1 総務業務 内部障害 知的障害 5 菓子製造補助 精神障害 - 目次

1. 事業所の概要
(1)沿革
「ラグノオささき」の原点は、明治17年に青森県弘前市に始めた「和菓子さゝき」という小さな駄菓子屋であった。
昭和33年には洋菓子店「ラグノオ」を開店し、昭和44年に現在の商号に社名を変更し、今年で125周年を迎え、現在では和菓子、洋菓子、郷土菓子などの製造、販売を行なっている。中でも、青森県の特産品であるりんごを使った郷土菓子があり、全国菓子大博覧会やモンドセレクションで「金賞」を受賞するなど、数々のヒット商品を生み出している。
(2)会社概要
事業所は青森県弘前市に本社及び製造工場2ヶ所構え、販売拠点として青森県内に68店舗、秋田県に5店舗、岩手県に1店舗設けている(平成21年1月現在)。
「ラグノオささき」は、街にある身近なお菓子屋として地域の方々に親しまれている。
2. 障害者雇用の状況
(1)障害者雇用状況
現在、障害者6名が勤務している(平成21年8月現在)。
障害別の内訳は、身体障害者(肢体不自由)1名、知的障害者5名で、うち2名が重度障害者である。
法定雇用率は達成しているが、障害者の職場適応の向上と職場定着を図るため、社団法人青森県高齢・障害者雇用支援協会が勧める障害者職場定着推進チームを設置しており、職場適応や定着を図る取り組みが行なわれている。また、今後も機会があればさらに障害者雇用を進めていく意向であり、法定雇用率の維持・拡大に努めている。
(2)障害者雇用の経緯
「ラグノオささき」における障害者雇用の取り組みには、社長の意向が強く反映されている。「社会のため、地域貢献のために、できる限り地元の要請に協力して社会的責任を果たしていく」という理念の下、地域の特別支援学校やハローワーク(公共職業安定所)からの依頼に応えて障害者雇用に取り組んできた。当初は身体障害者が中心であったが、昭和57年頃に初めて知的障害者の雇用に取り組んでいる。
平成11年には青森県障害者雇用優良事業所等表彰の事業所部門において協会長表彰を受けており、平成16年に事業所部門、平成20年に優秀勤労障害者として知事賞を受賞している。障害のある従業員で勤続20年、また30年以上の方もおり、全体の職場定着率は高い。
(3)知的障害者雇用
「ラグノオささき」では障害者雇用に地道に取り組んできたが、全てが順調であった訳ではなかった。特に、初めて知的障害者を雇用した際には、雇用管理の難しさや従事業務の選定に困難を感じた。本人の特性や性格的なものに由るところもあったが、どのように指導していくか対応に苦慮し、結果、1~2年で離職となってしまった。その後は、知的障害者の雇用を控えた時期もあったが、ハローワークや地域の特別支援学校からの依頼を受けて、知的障害者の雇用に再度取り組んだという経緯がある。
当初、知的障害者の従事業務は、商品を入れる化粧箱を折る作業などに限られるのではないかと考えられており、商品に触れることはなかった。しかし、仕事に慣れていく内に予想以上にできることが多くなり、製品の包装や箱詰めなど、実際に商品を扱う業務にも従事するようになっていった。
現在、5名の知的障害者が菓子製造の補助業務に従事している。他従業員の理解とフォローを受けながら、職域を限定することなく、個人の適性に合った業務に就く環境が整っていた。
3. 取り組みの内容
知的障害のあるAさんは、特別支援学校の高等部を卒業して平成14年4月に就職。就職時にジョブコーチによる支援を活用しており、同7月トライアル雇用を終了して常用雇用となった。
勤務時間は9時から15時まで。作業内容は菓子の包装・箱詰めや箱折りを行っている。
就職した当初のAさんは対人緊張が強く、返事や報告が適時にできないという課題があった。指示を受けても返事ができず、そういったAさんの態度が職場内で誤解を招きかねない状況もあったが、ジョブコーチがAさんの特性を他従業員に伝えて理解を図り、周りの従業員もAさんを温かく見守るという職場環境があった。
何よりAさんは手先が器用であり、新しい作業の習得も早かった。器用で丁寧な仕事振りが周りからの信頼を得るようになり、Aさん自身も自分の長所を活かした仕事に自信を持つようになっていった。
勤続7年目を迎えて今ではすっかり職場にも慣れ、明るく冗談を交わすこともあるというAさん。ベルトコンベア上で商品の箱詰め作業を手早くこなしていた。

Aさんの作業風景

Bさんの作業風景
知的障害のあるBさんは、津軽障害者就業・生活支援センターの職場実習(2週間)を経て、平成21年4月に就職。同7月にトライアル雇用を終了して常用雇用となった。
勤務時間は8時30分から16時30分まで。作業内容は運搬時に菓子を入れて運ぶプラスチックバンの洗浄を行っている。
職場実習から雇用に移行する際、判断基準となったのは作業スピードや機敏さであった。作業は2人ペアで行い、一人はプラスチックバンを洗浄機に入れて、もう一人は洗浄したプラスチックバンを受けて重ねていく。単純作業ではあるが、効率的に作業するためには途切れることなく一定してプラスチックバンを受け流しする必要がある。
当初、Bさんは受けの作業が苦手であり、流す方を担当することが多かった。受ける側は、汚れが残っていないか目視しながら、汚れが残っている時は拭きとりながらプラスチックバンの種類ごとに20段に重ねていく。複数の作業を同時進行しながら、流れを止めないよう処理していく必要があった。
それでも、繁忙期以外はBさんにも受けを担当してもらい、徐々に慣れて行けるようにと周りの従業員からの配慮があった。できない部分から外すのではなく、人材として育てて行くという意向が表れていると感じた。
常用雇用に移行して間もないBさんだが、「早く一人前になりたい」と話しており、周りの従業員からのフォローを受けながら、受けの仕事にも取り組んでいる。
4. 活用した制度、助成金等
(1)活用した制度、助成金
障害者雇用の際は、障害者試行雇用(トライアル雇用)事業や特定求職者雇用開発助成金のほか、障害者雇用納付金制度にもとづく障害者介助等助成金も平成14年9月から活用している。また、人的支援としてジョブコーチによる支援も大きな支えとなっており、必要に応じて活用してきた。
(2)障害者職場定着推進チームの設置
高齢・障害者雇用支援協会が勧めている障害者職場定着推進チームを設置している。職場定着の課題が挙げられた時などに、すぐに対応できるように相談体制を整えている。より困難な事案がある場合には、障害者職業センターや高齢・障害者雇用支援協会などの外部の支援機関の協力を得るようにしている。
この推進チームの機能をより一層高めるため、現在1名いる職業生活相談員をもう1名選任することを検討している。弘前市に2か所ある製造工場に、それぞれ1名ずつ相談員を配置してはどうかと協会から助言を受けており、現在検討中である。
5. 今後の課題と展望
今後の展望として、助成金を活用して化粧箱を作る専用の設備を整えたいと考えている。
障害者作業施設設置等助成金の第1種作業施設設置等助成金(設置・整備)を活用し、より多くの障害者雇用を進める意向を持っており、今後は社団法人青森県高齢・障害者雇用支援協会やハローワーク等に相談しながら話を進めて行く予定である。
また課題としては、職場定着のための相談・支援機能の強化があげられる。障害者が十分に能力を発揮できる職場環境をつくることももちろんであるが、障害者が職場に定着し、長く仕事を続けて行くためには、安定した生活が大切であると考えている。ご家族の協力も欠かせないが、会社としては私生活への介入・支援までは対応できない部分が多い。そこで、外部の支援機関の協力を得ながら、相談・支援体制を強化して行くことが今後の課題となっている。
就労支援相談員 小林 典子
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