長期雇用継続への取り組みについて
- 事業所名
- 青森部品株式会社
- 所在地
- 青森県北津軽郡板柳町
- 事業内容
- 自動車用組電線(ワイヤーハーネス)製造
- 従業員数
- 146名
- うち障害者数
- 3名 (うち重度3名)
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 3 電線皮むき、袋かぶせ、ゴム栓通し 精神障害 - 目次
1. 事業所の概要
(1)事業所の沿革
『青森部品株式会社』は『矢崎総業株式会社』の関連子会社として平成元年12月に青森県北津軽郡板柳町に現地法人として設立された。設立当時は本社以外にも2箇所の分場、北津軽郡中里町に1箇所の工場があったが、平成5年に本社工場が完成し町内の分場を統合し現在地での操業を開始している。
本社のある板柳町は津軽の霊峰「岩木山」のふもとに位置し、周囲を稲作田や林檎畑に囲まれた自然豊かな土地柄であり、実りの秋には林檎の赤と稲穂の黄金色に包まれる。自然環境ばかりではなく、陸送を主としている視点から国道339号バイパス沿いに立地し、浪岡インターチェンジにも近いという、物流の利便性にも恵まれている。
(2)会社の概要
『青森部品株式会社』の初代社長、天野善太郎は『矢崎総業株式会社』からの出向であったが、地域と共に歩む企業を目指すことから従業員は現地採用としている。現在も社長以外のすべての従業員は地元採用であり、社員より公募した「夢と希望を明日に繋げ青森部品」をキャッチフレーズとして採用し本社玄関に掲げている。
生産品目は自動車用組電線(ワイヤーハーネス)の製造である。ワイヤーハーネスは、自動車に必要な電線や情報回路をコンパクトに束ねた、いわば車の神経・血管にあたるものである。同社では電線の切断から、製造組立、検査までの生産体制をとっており国内各自動車メーカーへ出荷している。
2. 障害者雇用の状況
(1)障害者雇用状況
現従業員146名のうち、知的障害者3名(3名とも重度障害者)が在籍しており、障害者雇用率は4.11%と高い。平成8年には障害者雇用優良事業所として、社団法人青森県障害者雇用促進協会長表彰を受賞している。
また知的障害者ばかりでなく、身体障害者、聴覚障害者を雇用し、多い時には7名が勤務していたこともあるほど、障害者の雇い入れには積極的な会社である。それぞれが個々の都合で退職し現在は3名となったが、3名とも既に14~15年の勤続年数があり、優秀勤労障害者として全員が、「青森県高齢・障害者雇用支援協会長表彰」を受け、更に平成18年、21年には「青森県知事表彰」を受けるなど高い定着率を示している。
(2)障害者雇用の経緯
障害者雇用の取り組みは、平成5年に本社屋が完成した際に、ハローワーク(公共職業安定所)より障害者雇用の情報を提供されたことがきっかけとなった。情報提供を受けた安田総務部長が自ら地元の特別支援学校や社会福祉施設に出向いて会社の説明を行い、障害者を会社の一員として採用したいことを伝えた。安田総務部長の熱意が受け入れられ、地元の2つの特別支援学校の3名の現場実習を行った結果、翌年の卒業時には、そのうち2名の知的障害者を採用した。その後、毎年障害者雇用を進めており、青森障害者職業センターのジョブコーチ支援事業を活用したこともあった。
平成8年には6~7名ほどの障害者が雇用され、そのほかに精神障害者の社会適応訓練事業の協力会社にもなっており、あわせて10名ほどの障害者が働いていたが、忙しい業務の中で、社員同士のコミュニケーションがうまく図られなくなったことが問題となった。障害者の定着及び継続雇用をめざして、職場環境を整えたいとの願いから、安田総務部長が職業生活相談員となり、職場定着推進チームが設置された。現在までの長い期間、毎月1回各部署の責任者が集まっての会議を継続し、各人の作業意欲が低下していないか、職場適応を阻害する問題がないかなどが話し合われ、周到で迅速な対応を心掛けた。このような会社側の真摯な取組みが長期雇用を支えている。
3. 取り組みの状況
平成18年に優秀勤労障害者として青森県知事表彰を受けたAさんは、平成6年当社が最初に採用した知的障害者である。採用後に自動車運転免許を取得し、自宅からマイカー通勤をしている。8時からの始業であるが、7時20分には出勤し、まず自分の持ち場付近を箒で掃除するところから始め、次に自分の仕事の準備を行うのが日課である。銅線の袋がけを主な仕事とし、丁寧な仕事ぶりには定評がある。
Aさんには自閉的な傾向があり周囲とのコミュニケーションが不得意であった。そんなAさんの特性を考慮して、専任の社員が仕事を教えるようにした。Aさんのペースに合わせて、ゆっくり確実に指導したところ、現在では特別支援学校の現場実習を受け入れる際には、Aさんが生徒へ指導できるほどに成長した。
平成21年に同じく優秀勤労障害者として知事表彰を受けたBさん。明るい性格で周囲の社員の輪の中に積極的に加わり、お昼休みや休憩時間も一緒に過ごしている。Bさんは、太いケーブルの被覆に切れ目を入れ、銅線からビニールの皮をむく作業を行っている。用途が違う機械を、当社が独自に改良し使用させているが、1本のケーブルの皮を全てむくことができず、一部、ビニールの皮が残るため、廃棄する銅線が多くなってしまう。Bさんは「太いケーブルをむく専用の機械があれば、もっと早く仕事ができるのに・・・」と話していた。
Bさんは『青森部品株式会社』が大好きで、自分の学校の後輩に、是非同じ会社に入ってほしいとの願いから、卒業した特別支援学校へ現場実習に来て欲しいと連絡を入れるほどである。
障害者の特徴を把握し、それぞれの仕事を専任の社員が教え、トラブルがあった時は、安田総務部長が対応するということを、社内で徹底したことにより指導のぶれがなく、安定した取り組みとなっている。さらに、安田総務部長は会社での出来事を、家族に上手く伝えることができない障害のある社員のために、会社の状況を手紙に書き、家族へ渡すよう本人に持たせ、必要によっては家庭訪問するなどして積極的に家族と連携を図り、様々な不安を解消するよう配慮している。家族にも安心して支えて欲しいという思いからである。
4. 活用した制度、助成金等
これまでもハローワークの紹介によるトライアル雇用や、特定求職者雇用開発助成金を活用してきたが、平成21年2月に、社団法人青森県高齢・障害者雇用支援協会が開催した、報奨金事務説明会に参加した安田総務部長が、協会の助成金担当者に業務遂行の効率アップを図るための方策を相談したことがきっかけとなり、3月に障害者作業施設設置等助成金(第1種)を活用し、銅線皮むき機を導入した。
この仕事に従事するCさんの場合、機械の導入前は銅線の袋がけや、通しチューブといって電線にチューブを通す作業しかできなかったが、機械の導入によって皮むき作業を習得し、最も作業量の多い細いケーブルの皮をむく作業が、スピーディに確実にできるようになると同時に機械導入の結果、Cさんの職域の拡大にも繋がった。素直な性格で指示理解も高いCさんは、ますます仕事への意欲を高め、同社の一員としての自信を深めている。
これまでケーブルが細すぎて、ビニールの皮と銅線を分別することが難しく、一緒に廃棄せざるを得なかったものが、皮むき機の導入で切れ目を入れる作業が瞬時にでき、銅線とビニールの分別では飛躍的な効率アップが図られた。銅線は買い取り業者へ資源として引き渡され、同時に廃棄物の減少という、環境に優しいエコにも貢献している。
5. 今後の課題と展望
同社では、ワイヤーハーネスの製造を行ってきたが、近年新規事業の取り組みも始めている。ストーブのメンテナンス事業や、浄水器の販売などは既に開始している事業であるが、今後は農業や林業など異業種への参入を検討している。このように限られていた職種を拡大することで、障害者雇用の広がりに繋がっていければと、安田総務部長は話していた。また、これからの障害者雇用については、今まで以上にハローワークや障害者職業センターなどの支援機関と連携を深めながら進めていきたいと話している。
一日の大半を過ごす職場環境が、社員にとって居心地の良い空間でなければ長期間の雇用の継続は難しい。創業から社員の地元採用という「同じ地域の共に生きている仲間」という意識を強め、安心して働くことができる職場となって提供されていることが、長期継続雇用を実現していると感じた。
所長 長岡 恵美子
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