事業所名

有限会社  なかよし産業

所在地

宮城県白石市

事業内容

自動車解体・自動車部品販売・自動車輸出・自動車部品輸出・資源リサイクル

従業員数

26名

うち障害者数

14名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害	2	自動車解体・経理業務
肢体不自由	1	販売管理（フロント）
内部障害
知的障害	10	商品美化・商品発送補助・商品整理補助
精神障害	1	発送業務

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 職場配置、作業内容、作業工程
3. 就労と生活の充実を支える関係機関の連携
4. まとめと今後の課題

事業所外観

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

有限会社なかよし産業の業務内容は、自動車リサイクル法（平成17年1月施行）によって大きく変わった。同社では時代の要請に応じて、環境への配慮並びに部品の再使用・リサイクルに取り組むと共に障害者雇用の実践に取り組んでいる。

同社の障害者雇用は、平成14年に地元の障害者施設職員の熱意を受け入れて、職場実習からはじまった。経済不況のために知的障害者のグループホーム利用者の職場確保が難しい状況下での職員の働きかけであった。やがて、障害について理解したり、作業工程に工夫を加えたりして、「やれる仕事」「できる仕事」を見つけ出して実践できるようになったが、通勤方法が大きな問題になった。会社が遠隔地にあるために、バスを利用してもかなり遠くのバス停で下車し、そこから会社までは車で送迎しなければならなかった。しかし、その後、重度障害者等通勤対策助成金を活用して通勤用バスの購入と運転従事者の委嘱が実現でき、送迎に関する問題は解決できた。制度を活用することによって、就労のための不便性を補うことができた。

ところで、当初はハローワーク（公共職業安定所）や宮城県障害者雇用促進協会（現、宮城県雇用支援協会）を介さなかったために、各種助成金の活用ができなかったという苦い経験がある。そこで、現在は雇用支援のための制度を十分に活用して働きやすい職場作りを実現するため、雇用支援関係機関の開催する研修会、交流会、見学会等に積極的に出席し、障害者への接し方や他の会社の取り組みの体験談等から多くを学び参考にしている。

2. 職場配置、作業内容、作業工程

同社における自動車解体処理業務の流れは、使用済み自動車の引取り後、オゾン層破壊をもたらすフロン類をカーエアコンから回収、ガソリン・オイルの除去、タイヤ、バッテリー等の事前処理、爆発性のあるエアバッグ類の安全除去、そして再使用できる部品の取り出し、プレス・せん断処理を行うことである。再使用できる部品はインターネット等を活用して流通をはかっている。また、最終的に残ったシュレッダーダストも資源として活用される。

一連の業務には高度な技術が必要になる工程もあるが、作業工程を分解することによって単純な工程に組み立てることができる。部品を取り出す工程、取り出した部品を磨く工程、棚整理の工程、部品を梱包する工程、部品を運ぶ工程等である。重度の知的障害のある従業員もじっくり時間をかけると、これらの工程を覚えこむことができる。一つひとつの作業を覚えるには時間はかかるが、覚えた後には着実に作業に取り組み、日々の業務として行えるようになる。障害のある従業員は、次第に会社に慣れ、そして毎日の仕事に取り組んできた。

毎月、全従業員は個人目標を記し、会社事務所の玄関に張り出す。知的障害のある従業員も自分の目標を記している。例えば、「ドアをならべたい。くるまのそうじがんばります。」「ばらしかたを30個を目標にがんばりたいと思います。」「コンデンサー80コをばらしたいです。エンジン5台からミッションをばらしたいです。」「こんぽうのやりかたをおぼえたい。まちがわないでしまう。1か月のもくひょうは250です。」と記し、これらの個別的な目標をもとに1ヶ月間、仕事に取り組む。中目社長は、朝会のとき等に積極的に一人ひとりに声がけして、仕事の成果を褒める。皆の前で一人ひとりに応じた声がけを行い、個別的に褒めることによって意欲と自信はますます高まる。

重度知的障害のある従業員も、現在は多数の部品名も覚え、その日その日の仕事の内容を日報に記入することができるようになった。一つひとつの「できること」の積み重ねが達成感と意欲の向上、そして自信につながり、一人ひとりの作業能力の向上をもたらしている。

同社では、6名の重度知的障害者の作業手順、作業方法等作業遂行の指導・援助を行うために業務遂行援助者が2名配置されているが、その他の従業員も声がけや支援等を行う体制がつくられている。一人ひとりの作業能力を互いに認め合って、必要な場合には支えあうシステムが構築されているのである。

部品を磨く工程

部品を梱包する工程

3. 就労と生活の充実を支える関係機関の連携

「就労支援と生活支援は切り離せない。障害のある従業員が安心して就労を継続するためには地域の福祉関係機関との連携が重要である。」と中目社長はいう。知的障害のある従業員の多くはグループホーム等に暮らし、地域生活支援センター等により日常生活、社会生活支援上の支援を受けながら自立生活に取り組んでいる。通勤バスに乗り遅れたとき等は、センターに相談に行く。センターでは時間管理の大切さについて十分なアドバイスを行うとともに、職員が車で送ってくれることもあるという。障害者や家族等の相談、金銭管理や余暇活動支援をはじめ生活の豊かさや住まいを支えるシステムとの連携は就労生活の充実を図るために必須である。

就労生活における専門的な支援や制度の活用等については、ハローワークや雇用支援協会等の支援機関のネットワークが大きな役割を担っている。それらのネットワークによって、障害があっても充実した就労が実現できる。

また前述したが、同社では障害者介助等助成金を活用して業務遂行援助者の配置等をもとに安全で働きやすい職場環境づくりに取り組んでいる。

聴覚障害のある従業員が手話通訳者とともに4日間のフォークリフト講習に参加して資格を取得した同社の事例については、DVD「いつまでも輝いていたいから～聴覚障害者を生かす中小企業の挑戦～（企画：独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構）」に収録されている。

4. まとめと今後の課題

なかよし産業では業務内容を点検して比較的単純な作業工程に分解し、時間をかけて取り組むことによって、重度知的障害者の就労を実現している。自動車リサイクル法の導入という大きな変化を肯定的に受けとめ、中目社長の言葉によると「環境への配慮は事業の追い風」として積極的に事業を展開するとともに、障害者の雇用も大きく展開させている。重度の障害があっても、時間はかかるが会社の貴重な戦力になることが実証される取り組みである。

障害者雇用に取り組み、さらにその進展を図ろうとする中目社長の今後の課題は、福祉の場と企業を結ぶ谷間を埋めるための事業を行うことである。「企業内授産」または「施設外授産」ともいうべきか、将来的に雇用に移行することを想定し、雇用関係はないが、事業所内で授産利用者が作業を行い、仕事を経験できる仕組みである。それが実現できれば、現従業員が高齢化しても先輩役として企業就労への橋渡しを担うことができる。時代の要請に応じて、適切な対応を重ねてきた中目社長のこれまでの経験を考えると、「企業内授産」の実現性は高いと考えられた。

地球環境への取り組みを大切にするなかよし産業の実践は、地域社会の環境を十分に活用して、障害者雇用に関する職場環境、生活環境を整備につなげている好事例である。