事業所名

山形陸運株式会社

所在地

山形県山形市

事業内容

貨物自動車運送事業を中心とする運送全般

従業員数

259名

うち障害者数

6名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	1	作業員
肢体不自由	2	大型運転職・パソコン事務
内部障害	3	作業員・倉庫係
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 取り組みの内容
3. おわりに

事業所外観

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）概要

山形陸運株式会社は、山形市北部の流通団地にある貨物自動車運送事業を主力とする運送会社である。昭和25年の創業以来、大型車両を含む230台余を擁し、年商は20億円という運送会社の大手である。一般には「みどりのトラック」やでお馴染みである。

社員数は259名で、法定雇用率を上回る3.4％の障害者の雇用実績がある。今回は、取締役の片山総務部長にお話をうかがった。

（2）障害者雇用の経緯

「安全第一」は、どの企業・業種にも共通することである。とりわけ運送業界では、遠く九州まで荷物を運ぶということもあり、安全には細心の注意が払われている。しかし、残念なことにこれまで山形陸運株式会社でも事故ゼロではなかった。勤務中の事故により、怪我を負うという例もあった。現在、障害者手帳を持って働いている社員は6名。いずれも新たに採用された訳ではなく、事故や病気により中途障害になったが、職場復帰し継続雇用している例である。

2. 取り組みの内容

片山部長からお話を聞いた後、社内で障害者手帳を持って働いている6名の内、お二人（Sさん、Yさん）から直接お話をうかがった。

（Sさん  30代の男性）

大型運転職であった5年ほど前に、自宅にて脳内出血し入院。退院後リハビリに専念した結果、車の運転ができるまでに回復した。左上下肢機能障害が残ったが、杖なしでも歩けるようになり、改造された自家用車を自分で運転し自宅から通勤している。現在は短時間労働とし、火曜と木曜は9時から12時まで、月曜と金曜は13時から16時45分までの勤務となっている。水曜日は休みとして、毎週市内の福祉施設に通いパソコン学習を続けている。

パソコンについては、退院後リハビリを続けている時に、担当のケアマネージャーから施設を紹介された。3年近い休業中、「またこの会社で働きたい」という強い意思の元、片山部長を始め上司とも相談の上、これまであまり縁の無かったパソコン学習に取り組んだ。  復帰にあたり会社側は、Sさんを運転職から事務職へと配置換えを行なった。

Sさんの現在の主な仕事は、「運行時間管理表」のデータ入力・管理である。運転手から出される毎日の運転実績を、専用ソフトを使って入力していく。毎日、50人分の入力作業がある。上司のチェックを受けながら、ミスを減らして確実に行なうのが目標である。以前の大型トラック運転とは勝手が違うが、達成感は感じていると話してくれた。

Sさんの使用しているパソコンは高齢・障害・求職者雇用支援機構の障害者作業施設設置等助成金を活用されて購入されている。プリンターについては、同じ事務室内に複合機はあった。しかし、Sさんの席から距離が離れ、使用が困難な面があったため、プリンターも同様に購入している。

また、Sさんの職場復帰に合わせて、本社の建物も改造を行なった。その際にも助成を受けている。社員入り口階段への手すりの設置と、トイレの便器を洋式に換えた事である。トイレは個室をそのまま改装したが、ドアを外開きに付け替えるなどの工事も行なった。入り口の手すりについては、上りと下りでは、使える右手が逆になることから、2箇所に設置した。これらの工事は、高齢・障害者雇用支援協会の助言を受けることはもちろん、Sさん自身にも使い勝手を何度も確認した上で進められた。

Sさんは、以前は暴飲暴食もあったと笑うが、健康管理は前にも増して気を使い、特に偏食しないことを心掛けているという。

Sさんのパソコン作業

Sさんの復帰に向けて取り付けた手摺

（Yさん  40代の男性）

Yさんも大型運転職であったが、数年前より体調不良が続いた。検査の結果、腎臓機能障害があることがわかり、その後、人工透析を続けている。病院の医師と相談の結果、会社側の配慮もあり、本社構内の倉庫管理を任されている。

8時から16時45分までの勤務時間で、水曜日のみ午後から勤務である。月曜と金曜日に透析のため16時で早退する以外は、他の社員と同じである。本社内の2箇所の倉庫管理を一人で行なっている。200坪はあるという広大な倉庫の内外で、運搬された荷物を確認した上で、フォークリフトにより倉庫内に運び込み、積み上げる。出荷の手順も考慮しての作業である。Yさんも、以前はあまりパソコン操作を必要としなかったそうであるが、この仕事を契機にパソコンを習得して現在は在庫管理も行なっている。

Yさんの配置転換に当たって、会社側は助成（障害者作業施設設置等助成金）を受けてフォークリフトを更新した。1台250万円はするというバッテリー式である。通常のフォークリフトと違い、排気ガスが出ない。倉庫内で排気ガスが出ることは、人体に与える影響が大きい。Yさんの場合は尚更である。バッテリーの充電に朝夕2回と時間はかかるものの、フットワークは軽く動きやすいものである。

Yさんは自分のこれまでの運転経験を活かし、他のトラック運転手と連携して淡々と業務をこなす。傍で見ていると簡単そうに見えるフォークリフトの操作であるが、荷物を効率良く、且つ、正確にトラックに積み込む作業は、熟練の技と言える。自分の仕事とは別に、後輩たちの成長が楽しみと笑顔を見せた。

フォークリフト操作をするYさん

電気式フォークリフト

3. おわりに

「性格は変わらないと言われるが、人は変われるもの。意識のもち方次第である。また、会社の対応次第でもあろう」SさんやYさんの姿を見ていて、片山部長自身がそう思えるようになったという。

今後は山形陸運株式会社でも、新たに障害のある人を採用するということが出てくると思われるが、これまでの障害者雇用の経験が、充分に活かされる可能性を感じさせる職場である。

「運送業」と聞くと「荒々しい職場」というイメージがあった。しかしながら無駄のない整理の行き届いた事務室や、整然とした倉庫。しかも、消防団活動など地域活動にも積極的に関わっているという片山部長の穏やかな物腰から、運ぶのは「モノ」だけではないことが伝わってくるように感じられた。

それでも片山部長自身、障害をもった社員を前に「最初は何をしたらいいのかわからなかったというのが本音であった」と言う。山形陸運株式会社は、助成金制度を積極的に活用した事例と言えよう。助成を受ける機会を持てたことにも「縁」を感じている様子が窺えた。

「会社としては、当たり前のことをしているだけ」と話す片山部長の気持ちと、社員の「働きたい」という強い意思が、困難を解決に導いていく原動力と思われた。