事業所名

株式会社エムダブルエス日高

所在地

群馬県高崎市

事業内容

介護保険制度下における介護事業各種

従業員数

325名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	1	マッサージ
聴覚障害	1	清掃
肢体不自由
内部障害	2	支援員、清掃
知的障害
精神障害

目次

1. 事業所の概要及び変遷等
2. 障害者の従事業務、職場配置
3. 取り組みの内容、効果
4. まとめ

事業所外観

1. 事業所の概要及び変遷等

株式会社エムダブルエス日高は医療法人日高病院のグループ内企業として平成3年に設立した企業である。病院は医療が施される施設であるが、そのためには通院・入院患者のための適切な「ホテル機能」を有していなければならない。病院はこの機能の充実とあいまって医師、看護師等の医療従事者がよりよい医療をめざして行動する組織体といえよう。当社はこの「ホテル機能」部分を役割分担するために設立されたものである。

一方、病院において、単一組織のまま拡大を続けると施設機能を担当する職員数も増加して様々な問題点が現出する。病院がある規模を超えたことにより分社化したものである。分社化した時点では清掃業務が中心であったが、その後、職域が徐々に広がり、病院内の「ホテル機能」の大半を担うことになる。また、平成12年から施行された介護保険法の介護・福祉事業に積極的に参加して、現在介護保険部門と医療支援部門の売上割合は6：4の比率になっている。

当社の設立以前に、日高病院が中心になって立ち上げた身体障害者授産施設の「グリーンピア」がある。設立後20年経過し、現在も35人の障害者が厳しい経済下ではあるが、社会復帰を目指して業務の習得に励んでいる。当初、この施設は若年透析患者の就労の場をつくることが目的であった。当時、20～30代の透析患者が多く発生し、透析導入を契機に仕事を辞めざるを得ないケースが頻発した（仕事の継続も可能な人も多かった）。社会的責任をもち施設に理解のある企業の支援によって相当高度な仕事を受注・取り組むことができた。何人かはこの施設から文字通り職場復帰を果たした。その後、腎臓病の怖さが社会的に知られるようになり尿検査で異常が見つかった場合の医療処置が早めに行われ、若年者の透析導入はこの20年間で激減した。この授産施設の利用者も四肢障害者、脳性まひ障害者、脳疾患の後遺症による障害者の比率が高くなり、授産の中身も変化した。

2. 障害者の従事業務、職場配置

◎障害者に介護業務は可能か  検討結果から学ぶ

訪問介護業務のなかに、清掃、入浴、買物など利用者の日常生活に支障がある生活支援業務がある。障害者がこの業務に従事しようとする場合、身体障害者である職員は、利用者の体位変換や外出による買物などを単独で行うことは難しい。また、知的障害者である職員の場合も、個性の異なる利用者の対応は極めて困難であると思われる。これら業務遂行に複数の職員のサポートがあれば、障害者の従事も可能と考えられるが事業経営上難しい。現在、売上を伸ばしている介護事業部門ではあるが、障害者の具体的活用は難しいと思われる。そのような状況の中で視覚障害者が介護サービス（マッサージ）に従事している。

◎配置

障害者がその業務に習熟するまでは単独作業をさせることはない。慣れていない作業を最初から一人でさせた場合、不安と戸惑いは避けられない。そうなると容易に離職につながる。当社では、上記介護サービスに従事している障害者の他に、3人の身体障害者（人工透析、難聴）が病院や施設の清掃業務に従事している。病院や施設は作業する場所が広く、チーム編成を行い対応している。今では3人の障害者全員が、勤務経験も長く、清掃作業に習熟しており、中には、グループの身障授産施設でOJTの指導者をしている者もおり、毎日の作業方法はそのチーム指導者からOJT訓練として受けられる。

また、現在、障害者の従事者はいないが、病院、施設内のクリーニング部門も取扱量が多いことから、今後の取組が期待される。

マッサージ業務の様子

清掃作業の様子

3. 取り組みの内容、効果

◎  養護学校生の仕事への夢を実現させたい

現在、病院に入院中の障害者と高等養護学校を中心に採用活動を進めている。養護学校からの職場実習も受け入れている。昨年、職場実習した生徒二人が今年も当所での実習を希望してきている。男子生徒は清掃作業、女子生徒はクリーニング作業であるが、自分の将来の職業生活を視野においての希望であることは、容易に理解できる。

清掃作業に従事する障害者が、実習生が自信を持てるように明るく、優しい言葉を使って指導を進める。女子生徒にはトレーナー服でなくナース服を着用させている。養護学校の生徒は、自分の将来の夢をきちんとした仕事のある社会人として考える。仕事と人間としての尊厳を切り離すことをしない。当然のことである。彼らの夢を実現させてやりたい。  なぜ、二人の生徒が再び同じ就業体験を希望してきたのか、今、容易にその解を得られる。それは共同作業者たちが、実習生への共感、あたたかさをもって接触しているからである。命令的、指示的対応を自制しているからである。彼らは共同作業している実習生が職員として採用され、同じ仲間になることを願っている。そのような職場にいると人はだれでもその温かみの雰囲気をすぐに感じとる。共同作業者の喜びにつながる養護学校の実習生の受け入れを続けたい。

◎  継続雇用制度

当法人は職員が60歳定年に到達した場合、希望すれば65歳までの継続雇用を認めている。高齢期とはいえ障害者は健常者と同様に現役世代とそん色ない仕事を続けており、貴重な労働力であることに変わりはない。現在、障害者の最高年齢は63歳で清掃業務に従事している。1名の障害者は来年、定年に到達する。今後も、65歳の年齢規定にかかわらず健康であり、本人が希望すれば雇用を続けたい。また、高齢者については短日数勤務を取り入れている。これは法人からの要請としてではなく、本人の希望により実施する。現在、週4日勤務が1名。所定労働時間8：30～17：30。

4. まとめ

当社はグループ施設を含めて多くの障害者に向き合い、彼らの職業能力を高めて評価し、喜びを増す支援活動を行ってきた。その後、平成12年に当社が介護事業に参加してから介護部門の職員数が急増した。この分野で障害者を受け入れて活用を図ることはむずかしいといわれているが、模索を続けて可能な業務に障害者の活用ができるよう努力を続けている。

小池欣一  代表取締役

高橋一路  総務部長