障害者中途雇用を初めて行うにあたり、企業の取り組みと行政による支援
- ホームページアドレス
- http://www.coatings.basf.co.jp/
1. 事業所の概要
BASFは41カ国で生産設備を稼動し、170ヵ国以上に顧客を持つ世界の化学業界のリーディングカンパニーである。
BASFコーティングスジャパン株式会社は、2000年に日本油脂株式会社（現在社名：日油株式会社）と折半出資にて日本油脂BASFコーティングス株式会社を設立。
欧米塗料メーカーとしてはじめて日本での生産を開始。2005年に社名をBASFコーティングスジャパン株式会社に変更し、日本においてフルプレゼンスで活動を行う唯一の外資塗料メーカーとして誕生。日本においてBASFコーティングスジャパンは自動車用塗料、自動車補修/車両用塗料、工業用塗料で活動している。
2. 障害者雇用の経緯
BASFコーティングスジャパン株式会社は化学工業として危険物を取り扱っており、従来から障害者が就業できる環境が十分に整っていなかった。
4年前、人事総務部に廣田次長が赴任すると、障害者の雇用を積極的に推進させ、ハローワーク（公共職業安定所）戸塚の雇用指導官と相談するようになった。
障害者雇用の合同面接会にも参加するようになったが、当初は、面接者がない状況が続いた。
原因としては会社のPR不足、及び求人票の記載内容が求職者に十分理解されるものではなかった。
また、民間人材会社から紹介されたスキルの高い下肢障害者と面接をしたが、工場のインフラが本人のニーズに合わず採用に至らなかった。
その後、雇用指導官のアドバイスにより、横浜南部就労センターから、知的障害を持つ男性を紹介され、就労についての支援等の説明を受け、テスト的に雇用することになった。
3. 取り組みの内容
人事総務部門でサポート管理できる障害者の職域として、現在外注委託している清掃業者と相談し、業務の一部を当社で雇用する障害者のための業務として了承してもらった。
また、就労センターのジョブコーチサポートを活用して、障害者の職場定着を推進した。本人も勤勉に勤務し、定期的な就労センターのフォローもあり、定着の様相が見えてきた。
そして、会社全体が彼を社員の一員と認識するため、正門付近の雑草取りにも従事することで、社員と言葉を交わす機会を増やすことになった。
今後、益々、障害者雇用の重要性について理解しながら取り組むことが、企業としての社会的責任であるとの認識を全社に周知する。
4. 支援機関の支援体制
今回の事業所を支援した横浜南部就労支援センターの支援体制等について触れておく。
【通常の支援の流れ】
○今回の取り組み
① 会社見学
ハローワーク戸塚の雇用指導官から、知的障害者を清掃の仕事で初めて雇用したいと考えている今回の話があった。まず候補者（清掃の就労経験あり、南部就労支援センターに登録しながらハローワークの窓口にも相談に行っていた）を決めて雇用指導官、本人、南部の職員で会社見学に行った。
本人との面接時に、支援者から雇用にあたり抱いている事業所の不安を解消するため、就労する知的障害者の仕事内容、勤務時間、雇用の環境などの話をした。
② 実習に向けて
南部就労支援センターの職員が、会社を訪問し実習の打ち合わせを行った。現在仕事をしている清掃会社の担当者を含め、実習期間、受け持つエリア、仕事の手順、1日のスケジュールなどについて話し合った。また、会社側には事業所全体に障害ある人が実習することの周知を依頼した。
③ 実習スタート
南部就労支援センターの職員が、初日は同行した。午前中は清掃の手順、スケジュールを指導、午後は人事総務の担当者にバトンタッチした。翌日も午前中は本人の状況確認をした。清掃経験があったので大きな問題なく2日間経過した。実習中、状況に応じて手順書やチェックリストを作成し、本人がより分かりやすく適切に仕事ができる環境を作った。雨の日や手が空いた時間は、人事総務の担当者の指導のもと事務的補助作業に従事した。
実習の最終日には、ハローワークの雇用指導官、統括職業指導官も同席し、反省会を行った。全体に高い評価を受け、本人からも就職したいとの意思表示があった。
④ トライアル雇用から正式雇用へ
トライアル雇用を3ヶ月利用した。その間、南部就労支援センターの職員が定期的に訪問し、様子を確認した。トライアル雇用期間中、本館で電話の拭き掃除をしていると、本社の社員が通りかかり「おはよう、いつもありがとう」と声をかけていた。本人も非常に嬉しそうな表情をしていた。事業所全体に周知していることを実感できた場面だった。トライアル雇用が終了し正式雇用に移行した。
⑤ 定着支援
エピソードとして、社内の歓迎会に出席し「お酒は飲めますか？」と聞かれ「ハイ」と答えたため適量以上に飲んでしまい気分が悪くなり、タクシーで送ってもらったことがあった。
現在、仕事にも慣れ、休むこともなく真面目に仕事に励んでいる。
今回は、知的障害者を初めて雇用し、順調に定着している事例である。多くの社員が理解し、温かい目で見守っている環境の中、本人がより長く働き続けられるよう今後も定期的な定着支援を継続したいと考えている。
⑥ 最後に
今回の事例は、知的障害者を初めて受け入れる企業に対して、ハローワーク、就労支援センターがそれぞれの役割をうまく使って定着に至ったケースだと思われる。各支援機関が連携し、雇用の拡大に繋がるための良い事例となって欲しい。
※ 横浜南部就労支援センターは、社会福祉法人電機神奈川福祉センターが運営している地域就労援助センターの1つで、横浜市磯子区にある。
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