事業所名

中越通運株式会社

所在地

新潟県新潟市

事業内容

通運、鉄道輸送、倉庫事業

従業員数

495名

うち障害者数

9名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由	3	運転職・事務・管理職
内部障害	2	運転職・事務・管理職
知的障害	4	納品トレイのラベル剥がし、洗浄等
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 障害者の従事業務、職場配置
4. 取り組みの内容
5. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット

事業所外観（チルドセンター）

1. 事業所の概要

（1）事業の特徴・内容

当社は、通運・鉄道輸送・倉庫事業として、昭和45年に設立、その後、引越移転事業、物流センター運営事業にも事業範囲を拡げ、現在では、資本金3億5000万円、常用労働者495名と、県下大手の物流業として発展を続けている。

また、最近の事業展開において、環境・省エネルギー対策として、引越移転事業では、環境に優しく、安全で作業効率の高い収納ボックスの開発、そして、通運事業を中心に、荷主、JR貨物・通運事業者3社と共同した輸送体制の確立によって、国の推奨する環境・省エネのための支援事業に積極的に参画しており、地球環境対策における県下の模範事業所として評価が高い。

（2）経営方針

人と人との「つながり」を大切にして、企業の競争力を支援する「新物流システム」を考案し、「変革の時代」に対応した物流面のパートナーとして、お客様のお役に立つことを使命とし、これがお客様に利益を還元できるものと確信している。

（3）組織構成

（4）障害者雇用の理念

障害者の法定雇用率（1.8％）制度については、企業に課せられた義務であることは、以前から認識は持っていたものの、ただ漠然としたものであって、実際には、なかなか障害者雇用の足がかりがつかめなかった。

2. 障害者雇用の経緯

平成17年度までは、公共職業安定所（以下、ハローワークという）の障害者雇い入れの強力な指導を受けながらも法定雇用率に達せず、障害者雇用納付金の対象事業所であった。

平成18年度に入り、ハローワークと障害者職業センターの連携・支援により、ようやく法定雇用率を達成（ゼロ申告）し、平成19年度には法定雇用数を上回り、雇用調整金の支給対象事業所となった。

平成18年度からの雇い入れ数は、平成18年度2名（身体1名、知的1名）、平成19年度3名（身体2名、知的1名）、平成20年度0人、平成21年度は、現在、職場実習とトライアル雇用の障害者を3名（知的2名、精神1名）受け入れており、全員正式雇用に向けて取り組み中である。

なお、平成21年4月現在の障害者の実雇用数は、一般7名（うち重度1名）、短時間2名（重度）で、カウント数10、実雇用率（除外率30％）は2.94％となっている。

3. 障害者の従事業務、職場配置

平成18年度以前の雇入者は、身体障害者が多く、中途障害者（重度・心臓）も含まれている。従事業務は事務・管理職、運転職で、職場の配置先は本社事務所または営業所となっている。

平成18年度からは、ハローワークと障害者職業センターの職域開発に関する助言と受入れ後的確な支援により、身体障害者のほか、知的及び精神障害者の受入れにも着手した。職場の配置場所は、納入先から物流センター（チルドセンター）に運ばれてくる納品トレイのラベルはがしと、自動洗浄機へのトレイの投入、洗浄後のトレイをケースに積み上げる作業である。

作業の配置図

Aさんの作業風景

Bさんの作業風景

4. 取り組みの内容

（1）取り組みの具体的内容

これまでは、物流センターの納品トレイの洗浄作業は、健常者に任せていたが、ハローワークと障害者職業センターの担当職員が実際の職場を見て、受け入れ可能な部門はないかどうか、いろいろと検討したところ、洗浄部門はあまり作業にノルマ的なものがなく、当部門の責任者が、根気よく丁寧に教えることで、作業継続が可能なのではないかとの結論に達した。

早速、ハローワークから、障害者（知的）の紹介があり、障害者職業センターのジョブコーチ支援を利用し、1ヶ月間の職場実習を実施した。

その後も、ハローワークからの紹介で、トライアル雇用により受け入れ、職場実習生、トライアル雇用者をそれぞれ5名の受け入れに成功し、こうして受け入れた中に離職者は1人もいなく、全員定着している。

（2）活用した制度や助成金等

活用した制度は、前述のとおり、障害者職業センターの1ヶ月間のジョブコーチ支援制度と職場実習及びトライアル雇用制度である。

なお、特定求職者雇用開発助成金制度は、健常者で解雇等があって、活用できなかったとのこと。

会社としては、今後も障害者の雇用を考えているが、ハローワークで実施する障害者集団面接会や窓口紹介には頼らず、今までどおり、障害者担当官の薦める求職者を先ず、職場実習かトライアル雇用で見極める方法が、最もスムーズにいくと、障害者担当官に対する信頼度が高い。

5. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット

（1）取り組みを実施したことによる効果

当社の採用担当者は人事課長であるが、障害者に対する特別な考え方、扱い方はしていない。あくまでも健常者同様、一社員として遠くから見守っている。

このためか、障害のある社員も他の社員に混じって元気に明るく、毎日の作業をこなしている。

前述のとおり、職場実習またはトライアル雇用を主体に障害者雇用を続けていきたいが、これまでの教訓から他の部門にも、障害者の受け入れ可能な職域はないか、ハローワーク及び障害者職業センターに、今後は雇用開発協会の支援も利用し、「障害者雇用」と力まずに、ごく自然な形で雇用を進めていきたいとのことである。

（2）障害者雇用の波及効果やメリット

本社ビル1階には、系列のクリーンサービス会社が同居している。この会社は、現在は常用労働者300人以下であるため、雇用納付金制度の対象事業所ではない。

しかし、将来的には対象となることも見込まれるので、当社がこれまでに培った障害者雇用のノウハウをいち早く伝えていきたいと考えているとのことである。

（3）障害者自身のコメント等

職場実習を受けているAさん（知的障害者）は、明るい性格であるが、少し、落ち着きのなさに心配があったものの、職場の業務遂行援助者の優しく、わかりやすい指導によって、今では落ち着きを取り戻し、「毎日、仕事が楽しい。早く社員になって働き続けていきたい。」と。また、トライアル雇用のBさん（精神障害者）は、「人と接する機会が少ないので、あまり気を使わずにすむ。」と、従事している作業に満足しており、3ヶ月後の社員登用を目指してがんばっている。

（4）まとめ

人事課長は、障害者法定雇用率が達成したからといって特別な意識・充実感は湧いてこない。今後も、一人でも多くの障害者を受け入れるべく、近々、テクノスクール訓練生、高等養護学校生徒の職場見学の実施を予定しているとのこと。

このように、障害者雇用は会社における大きな負担であると頭から受け止めることなく、障害者を雇用するにあたっては、どのような方法があるか、関係機関とよく相談し、自社には、どの方法がスムーズにいくか前向きにまず実行してみることが一番であると語ってくれた。

以上のことから、障害者の受け入れには会社によって、それぞれの方法があるが、事例のタイトルである「職場実習・トライアル雇用制度」を積極的に活用して障害者雇用を進めている一事例である。