事業所名

アール・ビー・コントロールズ株式会社

所在地

石川県金沢市

事業内容

電子機器制御装置、浴室TV及びリモコン等の設計・製造・販売

従業員数

489名

うち障害者数

7名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由	1	検査治具の制作
内部障害	2	事務
知的障害	4	ラインキーパー補助作業、半田槽の清掃、部品受払い
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 取り組み内容とその効果
4. まとめ

事業所外観

1. 事業所の概要

1971年（昭和46年）に家庭用ガス石油機器などの点火器（イグナイター）の製造メーカーとして創業し、熱エネルギーの電子制御機器の設計・製造・販売を行っている。近年は、浴室テレビ、浴室オーディオ、家庭内LANシステムや燃料電池、太陽光発電等、次世代エネルギーの電子制御にも力を入れている。本社の他に工場が2か所、物流センターが1か所あり、現在7名の障害者を雇用している。

今回紹介する事例は、会社側の積極的な働きかけがあり、雇用に結び付いた事例である。雇用に向けて会社と養護学校が連携し、一人で正確に仕事に取り組むことができるために様々な支援を行ってきた。その支援の内容について紹介する。

2. 障害者雇用の経緯

2008年4月、会社側から「普段後回しにしている仕事があるのだが、それに就いてくれる学生は誰かいないか？」と養護学校に相談があった。仕事内容について尋ねると、機械を用いてコンテナ（製品を輸送するためのケース）を洗い、片づける仕事だという。これまでコンテナの洗浄作業に専従の人がおらず、配送先別にコンテナの仕分けを行う従業員が作業の合間を見て洗っていたようであるが、実際には手が回らず困っているということであった。

早速、本校の一般就労希望者のうち「同じ仕事を繰り返して行う」ということに適性がある生徒で「勤務地が電車1本で通える」ということを条件としているAさんがふさわしいと判断し、本人・保護者と相談して就業体験実習（職場実習）を行うことにした。

就労に向けては3回の就労体験実習（6月：2週間、11月：4週間、2月：8日間）を行い、雇用の可否を判断してもらった。

Aさんについて

3. 取り組み内容とその効果

就業体験実習でAさんが一人で仕事に取り組めるように、会社は作業しやすい環境を整えた。また、学校は作業の定着についてと通勤やコミュニケーションについて支援を行った。会社と学校の支援を具体的に以下の表に示す。

洗浄機の使い方は、繰り返し行うと理解でき、操作法の手順表はすぐに必要なくなった。そのため、手順表をはずして会社が準備した作業数記入表を掲示した。このように必要のない支援ツールを省き、新たな課題に対応したものを準備することでAさん自身が何に気をつけながら仕事をすればよいのかが明確になった。

前期実習では、洗浄機にコンテナを設置する時にコツが必要だったため、後期実習では会社がコンテナ取り付け部分を改良し、Aさんが扱いやすいものにしてくれた。実習を重ねるごとにコンテナのラックや水切り台の改良が行われ、仕事がしやすい環境を整えてくれた。

また、洗浄機が作動している10分間に、コンテナ拭きや次の洗浄準備ができるということもAさんにとってはよかった。2年次に清掃の仕事で実習に行ったが、いつまでも掃除に時間をかけてしまうことが課題だった。しかし、今回は10分という目安の時間があり、コンテナ拭きに時間をかけることがなかった。

後期実習では、本人の意識も変わってきた。作業数を書くことで、「今日は47個を目指すぞ」と仕事に対して自分で目標を掲げるようになった。また、休憩時間と作業数の関係（「10個で午前中の休憩」等）に自分から気付き、「休」のマークを表に書き加えて作業ペースの目安を意識するようになった。表を準備した当初は1日の作業量を調べるためのものだったが、本人の意欲を高め、作業リズムを作り上げるツールに変わっていった。会社も写真や表といった視覚的な支援がAさんには有効であると分かり、支援の仕方が明確になった。

Aさんの現在の様子

就職して4ヶ月後、会社の作業服を身につけ、社員の一員としてのりりしい姿があった。洗浄と片付けの合間に余裕ができ、新しい仕事が追加されていた。そのための支援ツールである手順表や分類表も掲示されていた《写真1、写真2》。現在の課題は、頑張りすぎて休み時間も作業をしてしまうことだった。その課題に対応するため、洗浄機の前に約束事を掲示し《写真3》、注意を払えるよう工夫が施されていた。

≪写真1≫「片付けるときの見分け方ポイント表」

コンテナを乾かしているAさん

≪写真2≫「カードホルダーの取り付け方を示した手順書」

≪写真3≫注意点を示した掲示物

4. まとめ

Aさんの雇用に関してどのように感じているか工場長に尋ねたところ、「障害者だからと特別扱いはしていない。誰もが分かりやすく仕事に取り組めるようにしただけだ」とおっしゃった。しかし、そのユニバーサルデザインの考えが作業の構造化に繋がり、Aさんへの適切な支援として機能している。学校の支援だけでなく、Aさんにとって働きやすい環境づくりを会社が積極的に取り組んだことが雇用に繋がったと言える。Aさんの「仕事頑張っています」と答える表情は笑顔で、自信に満ちあふれていた。更なる成長が楽しみだ。