事業所名

名田庄バイオテック株式会社

所在地

福井県大飯郡おおい町

事業内容

菌床ホダ木製造・シイタケ栽培

従業員数

45人

うち障害者数

3人

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	3	ホダ木製造、シイタケ収穫・菌植え付け
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 取り組みの内容
3. 取り組みの効果
4. 今後の展望と課題

事業所外観

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）概要

当社は、平成4年旧名田庄村と紀伊産業株式会社・名田庄森林組合・椎茸生産組合（原木生産者）の出資による第三セクターの会社として、地域の活性化と、雇用を目的として設立した会社である。

事業内容は、シイタケの人工ホダ木（菌床）製造販売とシイタケ生産（通年栽培）販売を行っている。人工ホダ木は年間120万本生産し、主に関西、中部地域を中心に出荷し、シイタケは年間85t生産し、大半が地元市場での取扱いである。

（2）障害者雇用の経緯

養護学校から依頼があり生徒の職場実習を受け入れたのが、知的障害者に接する最初の機会であった。年に2回、2年間続けて同じ生徒2人が職場実習に来て、シイタケ栽培の作業を行った。最初は作業が本当にできるのだろうか、との思いがあったが、回数を重ねるごとに作業を覚えることができ、勤務態度も良かったので、平成17年4月に養護学校を卒業すると同時にトライアル雇用をした。

当社の作業現場には中年の女性が多く働いているので、障害者も当初は不安と戸惑いがあったが、自分たちの子供のような年齢の彼らに親切な対応をしてくれた事も受け入れが順調に進んだ大きな要因の一つであった。

その後、養護学校の先生が就職した生徒たちの様子を見るために会社に来る事もあり、お互いに連携を取りながら職場実習を実施して、平成20年4月に養護学校の卒業生をもう1人トライアル雇用する事になった。

2. 取り組みの内容

シイタケ栽培部での彼らの作業は、収穫時に規格別に収穫を行うが、規格外のものを収穫しないようにする事と収穫したシイタケを大きさ別にトレーに入れる時にばらばらに入れないようにする事が指導上のポイントであった。

ホダ木製造部での作業は、菌を植え付ける工程の前の作業で、殺菌後のホダ木に菌を植え付ける人に供給をする作業である。ここでは、殺菌時に折り込まれた袋が開かない様にする事と、清掃の徹底がポイントであった。

Aさんの場合  ：  Aさんは重度の知的障害者であるが、平成17年4月に養護学校を卒業すると同時にトライアル雇用をして、シイタケの取り入れ、選別作業を担当した。

Aさんについては、入社以来路線バスを利用しての通勤である為、他の従業員との作業開始時間にズレが生じているが、日々の書面による作業指示で充分対応出来ており、経験も豊富になっている事から、最近では、急な作業変更も言葉による指示だけで柔軟に対応が出来ている。

B君の場合：  B君は軽度の知的障害者であるが、平成17年4月に養護学校を卒業すると同時にトライアル雇用をし、体力的に強いのでシイタケ栽培用のホダ木製造作業を担当させた。

B君については、作業工程上の一工程をある程度責任を持って作業を担当させている。作業終了後は、翌日の準備や他の工程への手伝い等を積極的に取り組み、最近では他の工程も、指示なしに取り組んでいる。

C君の場合：  C君は軽度の知的障害と両上肢機能障害があったが、Aさんと同じシイタケ栽培部に配属した。

C君については、Aさん同様の通勤手段である。経験はまだ浅いが書面による作業指示で対応出来ている。今後はAさん同様、もしくはそれ以上の成長を期待しつつ、社会人としての自立を望んでいる。

ホダ木製造作業

選別作業

収穫作業

3. 取り組みの効果

「障害者も他の従業員と同じように扱う」という考え方で、彼らに接し、指導をしてきた。そして、彼らの仕事に対する真面目な姿勢が入社以来継続しており、作業能力も向上して、作業内容を書いた書面を見て自分で行動できる現在の状態を見ると、その考え方が間違っていなかったことを確信するようになった。

仕事以外のことで、周りの従業員の言うことを聞かなくなったC君の場合も、青春期特有の反抗期であり、精神的な成長の証であると考えている。AさんとC君が昼休みに楽しそうにバトミントンをしている様子を見たり、B君が趣味の野球を休みの日に学校で練習している話を聞いたりすると、仕事と余暇のメリハリができており、ストレスを溜めずに仕事に向き合っていけると思う。また、会社のレクリエーションには3人とも参加し、他の従業員と一緒になって楽しんでいるので、社内の人間関係も良好である。

職場での作業指導に関しては、福井県雇用支援協会から「業務遂行援助者の配置助成金」の活用提案を受け、援助者を決めて申請をした。障害者にとっては、1人の決まった援助者から指導を受ける方が混乱することがなく、作業を覚え易くなる。また、援助者も自分の立場が明確になるので指導にも取り組み易くなり、2人の人間関係も強くなって雇用継続に役に立っていると思われる。

そして、彼らが一生懸命に仕事に取り組む様子は、周りの従業員にも好影響を与えている。作業現場の従業員も最初の頃は戸惑いもあったが、素直に指導に従って作業を覚えていく態度を見て、不安も解消されていった。指導された作業を真面目に黙々と取り組む姿は、周りの従業員にとても新鮮に映り、従業員の労働意欲を刺激したと考えている。

4. 今後の展望と課題

当社では、先にも述べた通り「障害者も他の従業員と同じように扱う」という考えのもとに障害者に対して接しているが、現在では、なかなか思う様には進んでいない状況もある。

彼らへの対応は、自分でやってみようと思ったことは、基本的にやらせるようにしている。最初だけ指導するが、それ以降は一つのことを徹底的に取り組み、できるようになれば次への職域拡大を図っている。3人とも他の従業員以上に休むことなく出勤し、書面を見て作業を進めることも出来るようになっているので、当社に入社した頃と比較すれば成長している事は間違いない。しかしながら、現在の作業が十分にできるようになったので新しい仕事に取り組むよう職域拡大を図ると、自信がなくなりジョブコーチの支援を受ける事もあった。決して難しい作業ではないが、今までやった事がないと不安感が大きくなってしまい自信をなくしてしまうようである。

これからも、新しい仕事にチャレンジして経験を積み重ねて欲しいと考えており、会社としてコミュニケーションを取る事を重要視して取り組むことによって、アットホームな職場環境を創り出して、一人の社会人として、自立できるようにサポートしていきたい。