障害者雇用への不安は、関係機関の協力・支援により解消された
1. 事業所の概要
星野温泉は、1913年（大正2年）に製糸業を営んでいた星野嘉助により源泉ボーリングが行われ、高温源泉が開発されたことを期に開発者に因んで星野温泉と改名した。なかでもトンボの湯—軽井沢は、北原白秋や与謝野晶子もつかった古い湯である。
当社は、1904年にリゾート開発に着手し、1951年1月11日に、総合リゾート運営会社として設立した。企業の目標は、「あの会社は運営がうまい」といわれる会社運営の達人を目指している。
達人の条件
1：顧客満足度
2：経常利益率
3：エコロジカルポイント
2. 取り組みの内容
業務柄、障害者の雇用は難しく、法定雇用率が未達成のままハローワーク（公共職業安定所）小諸や長野県雇用開発協会の障害者雇用アドバイザーからの指導・助言を受ける状況であった。指導等を受ける中で、いろいろな施設見学や各種の制度等を知り、また、関わる中で障害者雇用は、事業所が単独で行っていくものではなく、関係機関の協力が必要であることを知った。お陰様で、関係した相談窓口はオープンであり、横のつながりが密であったことにより、障害者の雇用に対する不安が除々に解消された。特に心を打ったのは、障害者各自が個性にあった職業訓練を行い、社会参加を目指していること、就労意欲が非常に高いことであった。そのことを社内に知らせることにより、障害者雇用への理解も深まり活動がスムーズに進むようになった。
お互いのニーズに合うマッチングがうまくいけば、スムーズな就労につながると確信がとれた。
◎ 4月から雇用した、重度知的障害者のKさん採用までの経緯
（1）障害者雇用総務担当者より部門責任者へ、障害者雇用を打診
① こころよく、受け入れを承諾。
② 部門責任者とミーティングをし、部門側の労働条件などを聞き出す。
・ 業務の洗い出しと、任せる業務の確定
・ 就業時間
・ 不安に思っていること
どこまで仕事を任せることが出来るのか。
まわりのスタッフとのコミュニケーションがとれず孤立してしまうのではないか。
障害者を雇用することで、現状のスタッフ間にも悪影響が出るのではないか。
（2）ハローワーク小諸へ相談・紹介・面接
部門から聞き出した業務内容をはじめ、不安に思っていることをすべて伝える。
職業訓練を受けてきている障害者で就業意欲の高いKさんの紹介があり、履歴書持参の上面談する。
このとき、ハローワーク小諸、職業訓練校、障害者就業・生活支援センター佐久の担当スタッフも同席。
同席した各関係機関より、下記の情報を受ける。
・ Kさんの障害の特性や障害レベル
・ 職業訓練校でのKさんの日々の職業訓練等の様子、性格、周りの方との関わり
・ ジョブコーチ支援などの利用できる支援の説明
・ 重度障害者介助等助成金の説明
（3）就労を決定（トライアル雇用5月1日から31日まで1か月間・長野障害者職業センターと相談、ジョブコーチ支援での就労決定）
（4）受け入れに当たっての社内での取り組み
在籍スタッフには、障害者雇用を行うことを話し、情報共有し理解を得ることを進める。
① 在籍スタッフと障害者の間に入る担当者を選任し、相談窓口を作る。
② 社内での関係者との連絡はスムーズに行われるのは勿論のこと、ジョブコーチと地域支援センター等との連絡もスムーズに行われるような環境を作る。
（5）長野障害者職業センターカウンセラーによる『ジョブコーチ支援計画』作成
作成に伴い、ミーティングが開かれ業務担当者を含め、関わるすべての方で情報共有を行う。
支援計画に基づいてKさんの業務が、ジョブコーチ支援を受けながらはじまる。
業務外の約束事を決めて、ジョブコーチに指導の依頼をする。
① 業務前に必ず手洗いをすること。
② スタッフ同士のあいさつ『おはようございます』など
③ 事務所に声かけをすること。『行ってきます』『～戻りました』『食事に行ってきます』
④ 帰ります。『お先に失礼します』
⑤ 食事のあとは、歯磨きをすること。
⑥ 体調が悪い時は、我慢せずに申し出ること。
⑦ 困ったこと、わからないことは、一人で悩まずに、窓口担当者へ申し出ること。
（6）トライアル雇用の終了・ジョブコーチ支援の見直し
トライアル雇用の終了に伴い、（当初行われたジョブコーチ支援計画時に集合した人員が参加）ミ－ティングを開催。また、カウンセラー、ジョブコーチの状況判断により、ジョブコーチ支援計画の見直しが提案される。
Kさんの就労報告と、スタッフ側からの報告・相談はオープンで話し合うことを決定。
（7）現在のKさんの就業状況
その後、Kさんの就労は順調に進み、現在は、1ヶ月に1度程度のジョブコーチの訪問。
入社時に約束した挨拶や報告の声かけを忘れずに継続している。
入社時に心配していたスタッフ同士のコミュニケーションには、まったく問題なくスムーズに進んでいる。
Kさん自身から、「わからないことや」「他に仕事がないか」など近くにいるスタッフに聞くことが出来る。
就業意欲が高く、期待以上の業務をしている。
休憩時間など、時計を見ながら時間管理を個人で行い、午後の業務に向かうことが出来、遅れることはない。
若干作業スピードが遅いところはあるが、作業は丁寧で評価されている。
ナフキンおり業務
リネン仕分け業務
（8）障害者雇用の効果
Kさんの一生懸命に仕事に取り組む姿勢が、他のスタッフに良い刺激になり、仕事に対する姿勢等に好影響を与えている。
安定した雇用と、Kさんの温厚で素直な性格がスタッフに受け入れられたことにより、窓口担当者をはじめ取り巻くスタッフ全員が障害者雇用に対してのネガティブな気持ちがなくなり、コミュニケーションが図られている。
3. 今後の取り組み
（1）Kさんへの取り組み
① 業務範囲の拡大とスキルアップを図り、就労に対しての自信を高めていきたい。
② Kさん自信に「障害者だから・・・」というような、意識を感じさせないような指導・対応を心がけコミュニケーション能力の向上を育てていきたい。
（2）星野リゾートの取り組み
今後も障害者雇用がスムーズに行われるように関係機関との連携を図り進めていきたいと考える。業務洗い出しや、実習訓練等の制度を利用し、各部門が協力し合い会社のニーズにあった障害者雇用を進め雇用率の達成をしたい。
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