事業所名

株式会社吉野工業所赤穂工場

所在地

兵庫県赤穂市

事業内容

各種プラスチック製品製造業

従業員数

166名

うち障害者数

1名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害
知的障害
精神障害	1	機械部品のメンテナンス業務 （機械部品の解体・洗浄など）

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 取り組みの内容
4. 今後の展望と課題

事業所外観

1. 事業所の概要

1935年（昭和10年）1月に創業以来、現在は海外も含めて22ヶ所の工場において、

1 各種プラスチック容器の製造・販売

2 金属容器の製造・販売

3 プラスチック成形機、アッセンブリライン、精密金型の開発・設計・製作

を行っている。

いくつかある特徴の一つとしてペットボトル、化粧品容器、医薬品などのチューブ、洗剤容器など、さまざまな包装容器を製造し、各種包装容器の開発・生産のみならず、容器を製造するための機械や部品なども自社で開発。

また、ロゴマークには手を取って向かい合う人をビジュアル化したデザインがほどこされており、全工場に必ず緑地や庭園が敷設され、地域活動への参加、施設の開放などを通して、地域社会に密着した企業を目指している。

2. 障害者雇用の経緯

それまでも障害者の雇用に関する法定雇用率の達成を目指して企業全体で障害者雇用を進める中で、ハローワーク（公共職業安定所）の窓口での相談と併せて、労働局・ハローワークが行っている合同面接会、セミナー等に積極的に参加する等して障害者の雇用に取組んで来たが、当時、在籍していた社員（聴覚障害者）が離職するに至る。

社員を補充するにあたり、ハローワークの担当窓口で相談を重ね、何人か紹介していただき、支援機関の方とも協議をした結果、平成20年の10月よりAさん（31歳男性）をまずトライアル雇用制度を活用して採用することになった。

トライアル雇用期間中は、精神的にプレッシャーを過度にかけないようにすることを意識し、Aさんの話を少し間を取ってじっくり聞くようにしたり、作業の説明をしたり、指示を出す時もゆっくり話をするようにする等、現場全体で意識して対応を続ける。

Aさんの仕事に対する理解度は高く、しかも覚えも早い。同じ間違いを繰り返すこともないので仕事の習得も早い。また、仕事を休む事もなく真面目に取組んでいただいたことから平成21年1月にパート社員（9時から16時50分勤務）として1年契約の雇用契約（更新あり）に至る。

3. 取り組みの内容

係長以下8名で構成している係に配属し、仕事内容は危険度が少ないように配慮し、機械部品のメンテナンス、洗浄等を行っている。また、思い込みによるミスのないように、ケガを防ぐ為にも基本は2人1組で作業を行っている。

当初は、Aさんも初めての工場勤務であり、受け入れる方もどうしていいのか判らず、お互いに手探りの状態からスタートした。まずは、業務遂行援助者でもある川辺係長が朝のAさんとの打合せ、帰社前の業務報告を行うなど積極的にコミュニケーションをとる事によりAさんの特性の把握に努める。

次にAさんが職場全体に理解されるために他の社員ともコミュニケーションをとる事が出来るように川辺係長の不在時にはまず、Aさんにその予定を伝えることにより、Aさんが不安にならないようにした。周りの社員にもその間のAさんに対するアドバイス等を依頼する等して、職場全体で継続してコミュニケーションを積み重ねていった。

そして、当初は業務上の指示であるとか、何かあった場合にAさんは川辺係長にしか頼っていかなかったのが、今ではある程度は自分で考えたり、周囲の社員と話しながら仕事を進められるようになってきている。

また、仕事外の社内親睦行事（ボーリング大会、食事会他）にも決して強制的に参加を求めているわけではないが必ず参加し、しかも楽しんでいるように見える。そうしたことや、トライアル雇用開始時からすると、約10ヶ月が経過し、その間、遅刻・欠勤ともになく、所属している部署のみならずあいさつを欠かした事がないと言った事などがAさんが周りの社員にも理解され、受け入れられている要因の一つと思われる。

4. 今後の展望と課題

Aさんに今までに会社で困ったことがありましたか？と聞くと「特にありません」、今まで、嬉しかったことはありましたか？と聞くと「特にありません」と答える。

川辺係長曰くAさんの能力からすれば、今の作業内容は、まだ壁にあたる前の段階かもしれない。できるだけ長く勤めて欲しいので、Aさんも控えめにならずにどんどん仕事に対してどん欲になり、自ら新たな仕事を取組む気概でやって欲しいと話をするとAさんが「大丈夫です」と少しはにかみながらも答え、その様子を頼もしげに横で見ていた川辺係長の表情も印象的であった。

また、管理課の山脇リーダーは社内全体の雰囲気として社員間の仲間意識みたいなものはそもそもあり、今後も他の社員と同様にAさんの能力向上に工場全体で取り組んでいきたいと話す。

今回は、製造1課大槻課長、川辺係長、管理課山脇リーダーとともにAさんに話を伺った。「最初はどうしても手がかかるかもと思っていたが、今は他の社員と同じように見ている」、「特別扱いはしていなし、する必要もないと思っている」といった言葉が印象的であり、「お互いの考えがかみ合わないと、そのためにはお互い歩み寄らないといけない」といった言葉が全てを表しているような気がする。

言葉にするのは簡単ではあるが、熱意と真心を持って継続してそれを実践してきたことがAさんに伝わり、それが、Aさんの会社に対する信頼関係に結びついているようだ。

そして「今後は2～3年後も見すえて考えたい」と、会社としても“人材”として考えているのが明確であり、それがAさんにも伝わっている。2～3年後のAさんがどんな表情で仕事に取り組んでいるのか楽しみである。

左より山脇リーダー、Aさん、
川辺係長

Aさんの現在の表情