ものづくりを通じて障害者の自立と多数雇用継続の実現
- 事業所名
- 株式会社テライ益田工場
- 所在地
- 島根県益田市
- 事業内容
- ポリエチレン袋等の印刷・製造・販売
- 従業員数
- 100名
- うち障害者数
- 5名
-
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 5 製袋ライン作業 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要
【事業内容】
1976年9月 | 株式会社テライを大阪市で設立 |
1979年5月 | 益田市に営業所及び工場を新設 |
1997年8月 | 益田市に本社工場を統合し益田工場を新設 |
2004年9月 | 益田市へ工場・配送センターを新設 |
ポリエチレン袋の製造・販売
(スーパー向けレジ袋・衣料袋・書籍袋・菓子袋・地方自治体ゴミ袋)
現在、益田工場にて100%自社生産
【経営方針】
地域環境保護への適切な配慮と、リサイクル問題(エコロジー)にも心掛け、無公害で地域に優しい企業を目指し、社会貢献に力を注いでいる。
【障害者雇用の基本的な理念】
日本の原点『ものづくり』に障害者の優れた能力を活かし、やればできるという気持ちで、楽しく頑張れる職場環境の整備を積極的に進め、障害者の自立を最優先に考えている。
2. 障害者雇用の経緯・背景
創業以来、障害者は雇用していなかったが、3年前より特別支援学校からの要請で社会的・職業的自立を目的として、企業現場における職場実習の依頼があり、年1~2回程度、1~2週間といった期間で1~2名の実習生を受け入れてきた。
ある日、障害者就労支援センターを介して、知的障害者の男性(Aさん)の紹介があり、公共職業能力開発校の制度利用で障害者委託訓練を行うことになった。この訓練の主旨としては、障害者が就労を希望し、雇用に繋がる前段で当人と企業との間で仕事に対する不安を解消するために行うものである。
具体的な委託訓練内容として
①製袋ラインでの作業 | ・・・ | ビニール袋を折り畳み、袋に詰める作業 |
②安全作業 | ・・・ | 刃物の油差し |
③物づくりの基本動作 | ・・・ | 段取りと手返しの早さ |
を行った。基本的な継続動作等を丁寧に正確に確実にできるために繰り返し行う訓練である。
この委託訓練が今後障害者にとって当社の現場業務を行う上での重要な要因となり、その実習や訓練を通じて、障害者も充分戦力になるという事がわかった。
実はこのことが我が社において障害者雇用に取り組むきっかけとなったのは紛れもない事実である。
しかしながら、障害者を採用する過程の中で不安がなかった訳ではない。たとえば、作業の中で指導者として障害者に普通に話し掛けていることが逆の意味で解釈されたり、また理解して貰えない事があったりするなど(具体的には、障害者が「はい」と答えたことが心の中では違う捉え方をしている事などメンタル的な面での食い違いがあること)、今まで経験したことのないことばかりであった。特にどのように障害者と接して行くべきか数々の葛藤があったのは事実である。
また、障害者のメンタル的な面をなかなか理解できず苦労する場面もあり、雇用はしたいけれど不安や戸惑いもあった。こうした中で各支援機関との連携を密接に行うことで、障害者のメンタル的な面が徐々に理解できるようになってきた。企業として障害者を預かる以上、自立を促進していくことが使用者の責任であるといった感情も芽生え、使用者の障害者への実直な思いと障害者自身のやる気が徐々にマッチングして行き、その望むべき方向性に迷いがなくなり雇用へと繋がっていった。
特にAさんは、熱暑の作業場においてもモチベーションを維持し懸命に働くことにより、全ての従業員からの信頼を勝ち取るまでに成長している。今では4つの班のローテーションにより24時間稼動する作業現場において、夜勤シフトも従事できると判断されており、Aさんを自らのチームに加えたいとの申し出がある。
このように、自らの努力によって信頼を勝ち取ったAさんと全ての従業員との和が一段と大きくなるとともに、数々の貴重な経験を経た結果として、会社としても障害者雇用に積極的に取り組むことになった。昨年度2名(特別支援学校卒業生1名と一般から1名)、今年度2名(特別支援学校卒業生1名と一般から1名) 現在5名が勤務している。
3. 取り組みの内容・効果
製造業において、設計・調達・作業・製品の過程でQ(品質)・C(コスト)・D(納期・数量)は生産管理の基本的要素であり必須事項である。モノを購入するお客様にとって製作者が誰かはまったく関係ない。よって、当社では一般の労働者、障害者の区別なく一定レベルに達するまでは仕事がきちんとできるまで指導する姿勢を一貫して貫いている。ただそのなかで驚かされたことがあったのは、中途採用の健常者と知的障害者を同時に採用したところ、1年経過した後に各々仕事に対する適性がはっきりと現れたことだった。
1年目は当該業務に関して皆経験不足であるためにほとんど差が出ないが、2年目から個々の能力の差が出る傾向がある。興味深いことに、「スピード感」、「処理能力」、「持続力」など、両者ほとんど能力の差がないどころか、逆に知的障害者の方が興味を持って、モチベーションを保ちながら仕事を行うだけでなく、さらに仕事の能率を考えて他の社員と連携を取るなど思ってもみなかった力を発揮していることがわかった。
このように、知的障害者の「強み」を自らの職場で自らの目で発見できたことは大きな驚きと第一歩であり、これからの障害者の雇用に大いに役立つことになった。

原反を慎重に取扱い梱包の段取りを行うAさん
現在の障害者の働く姿を紹介すると、
Aさんは、工場の中で熱さと戦いながら粘り強く原反(ロール状の透明ビニール材のこと、以後原反とする)の数量及び原反が出来た時刻を管理するとともに、包装・配置に気配りし、段取りよく丁寧な仕事に取り組んでいる。

原反を台車で運ぶBさん
Bさんは、40kg以上の原反の搬入から各製袋機への原反置き、パッキングケース等の振り分けを行い、指令塔として各オペレーターとのタイミングを図りながら段取りよくベテラン社員とのコミュニケーションをとり効率よく作業を行っている。

原反を確認し丁寧に取り付るCさん
Cさんは、原反の搬入から各製袋機への原反置きを行うとともに、Bさんが運んだものを各オペレーターとの連携をとりながら段取りよく製袋加工機にセットしている。

自動製袋機を操作しながら丁寧に袋詰めするDさん
Dさんの雇用年月は短いが、原反の搬入から最新の自動製袋機の操作を行っている。勤務も日勤から夕勤へと移りながら丁寧な仕事を心掛けている。

袋詰めと出荷の準備を丁寧に行っているEさん
Eさんは、自動製袋機でできた製品の枚数等の確認や品質確認を行いながら丁寧に袋詰めをし、ダンボールでの出荷作業を行っている。
4. 今後の展望と課題
2008年には第二工場も完成しており、今後さらに新設工場の計画もある。障害者が担う就労場所の拡充とともに継続雇用が重要不可欠である。会社としては今後も機会があれば多くの障害者雇用を考えていきたいと話している。しかし一方で不安もあるが、現状の5名については安定して働いているので、メンタル的な面以外は障害者と思っていない。従って、これからも一層障害者の雇用が進むことが思料される。
障害者に対しては、決して無理をさせず、一歩先を見ながら労務管理等に関しても新たな部署・様々な工程ならびに日勤から夕勤などへの移動等幅広く取り組むとともに、更なる技術を磨き、その部署で必要とされる存在として大いに活躍して欲しいと期待している。
当社では、また新しい工場を建設する計画である。これからも経済状況は非常に厳しいが、障害者が生き生きと働ける職場ならびに実習等にも協力しながら障害者の自立と多数雇用継続の実現を目指していきたいと考えている。
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