事業所名

株式会社マルハ物産

所在地

徳島県板野郡松茂町

事業内容

農水産加工食品の輸入・製造・販売、缶詰類の製造・販売

従業員数

65名

うち障害者数

8名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害
知的障害	8	農水産加工食品の製造・出荷、清掃
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯、背景
3. 取り組みの内容
4. 取り組みの効果

事業所外観

1. 事業所の概要

マルハ物産株式会社は、1964年4月に徳島県板野郡松茂町の現在地でレンコン加工業を創業し、1971年6月に資本金300万円で有限会社マルハ物産として会社設立をした。1977年8月、茨城県土浦市に茨城工場を新設稼動させ、翌年4月に株式会社に改組した。1994年8月に中国との合弁会社を設立し食品加工の業界ではいち早く海外工場を持ち先駆的な事業展開を行ってきた。また、地元地域に根ざした企業として、2003年3月にグループ内の農業法人となる有限会社マルハファームを設立、2003年6月にグループマルハ協同組合を設立した。国産野菜の生産利用拡大を図り、安心安全な食品を求める消費者ニーズに応えると共に、地元地域の農産業・地場産業の活性化と地元地域の雇用拡大に大きく貢献している。現在、“QUALITYと独創性”で多くの顧客から支持されており、レンコン加工業の業界では日本一のシェア（約45％）を誇っている。

このような会社の取り組みが認められ、1994年11月に社団法人ニュービジネス協議会アントレプレナー優秀賞を受賞、2003年3月に優良フードサービス事業者等表彰の地域貢献部門で農林水産大臣賞を受賞、2008年3月に農林水産省による第1回国産野菜の生産・利用拡大優良事業者表彰式典で生産局長賞を受賞、2008年4月に経済産業省と農林水産省による農商工連携88選に選定されるなど華々しい受賞暦がある。障害者雇用に関しては、1980年代後半から雇用を開始し、2001年9月に徳島県知事表彰を、2002年9月に厚生労働大臣表彰を受けた。

社訓は「和と信用を重んじる」である。

経営理念は

一．わが社は、造って喜び、売って喜び、求めて喜んでいただける食品メーカーに徹する

一．わが社は、常にお客様を尊重し、最優先することを基本とする

一．わが社は、社員が生き甲斐と働き甲斐を感じ、ロマンを追求するよう助成する

一．わが社は、地域社会との共存共栄を通じ、地域に必要不可欠な存在たることを期する

である。このような企業理念と地元地域に根ざした企業マインドが、特別なことではない形で障害者の雇用を進めさせてきた。

2. 障害者雇用の経緯、背景

障害者雇用の経緯や背景は、会社の理念と地元の地域事情が相まったと考えられる。マルハ物産株式会社の本社がある徳島県板野郡松茂町は、人口約1万5千人、総面積13.94平方キロメートルの小さな町である。松茂町内には古くから知的障害児・者施設が複数存在していた。会社は経営理念を実践に移し、地域社会との共存共栄を通じて、地元地域にとって必要不可欠な存在となって、地元地域にとっては優良で貴重な就職先となった。1980年代に知的障害者入所更生施設から職場実習の受け入れ依頼があって、知的障害者の受け入れを開始した。松茂町内には知的障害者入所更生施設や知的障害者通勤寮、グループホームがあり、障害者が会社で働くことは珍しいことではなかったため、会社は受け入れの際に抵抗感をほとんど感じなかった。また、小さな町であるので実習生が体調不良を訴える時は電話一本でそれらの福祉機関の施設職員とやり取りし、状況によってはすぐ会社に駆けつけてくれることが可能であった。のちに障害者就業・生活支援センターが町内にできた。福祉施設や関係機関が障害者の生活面をしっかりサポートしてくれる地域事情が小さな町内に揃っていたことも障害者雇用を推進させた要因の一つだと考えられる。

3. 取り組みの内容

（1）従事業務、職場配置

障害者の従事業務は、清掃（食堂とトイレや廊下などの共有スペースの清掃）と農水産物加工食品の製造・出荷（レンコンの洗浄と選別、袋詰め、梱包等）である。

作業工程1

作業工程2

（2）職場実習の受け入れ

1980年代から地元地域にある知的障害者施設から職場実習生を受け入れてきた。当時は障害者の職場実習に関して何の社会的な制度もなかった時代であったが、会社の地域貢献と共に働く喜びを実感してもらいたいという思いから職場実習の受け入れを開始した。現在もグループ会社全体で年間5名～10名の職場実習生を受け入れしている。

職場実習を受け入れ障害者に働く場を提供することで、数多くの障害者が力をつけ、経営理念にある「生き甲斐と働き甲斐を感じ、ロマンを追求する」ことを実感してもらった。職場実習を繰り返す中で、障害者雇用は生まれていった。職場実習生をたくさん受け入れてきたので、障害者を一人の従業員として受け入れることは他の従業員にとっても特別なことではなかったし、製造業の過程において若くて体力のある障害者は有望な会社の戦力に間違いなかった。のちに、特別支援学校からの職場実習も受け入れるようになった。

（3）能力を引き出す配置転換と人材育成

農水産加工食品の製造・出荷の過程には様々な作業工程がある。様々な作業工程の中から一人ひとりの障害者の適材適所を見つけ、生き甲斐と働き甲斐を感じられる自分のポジションを見いだすことを重要視している。そのために日々の業務の中で柔軟な配置転換や配置場所の試行錯誤を実施している。また、障害者との会話が重要だと考え、作業現場の上司がコミュニケーションをとって体調面や本人の意欲、生き甲斐や働き甲斐など日々確認をしている。障害者の長所を活かし会社が障害者の生き甲斐と働き甲斐に向き合うことで、会社にとって有益な人材育成が図られている。その結果、職業対策上の重度に該当する多数の知的障害者が継続して働いている。

（4）福祉機関との連携

地元地域にある知的障害者入所更生施設や知的障害者通勤寮、グループホームとの連携を密にしている。近年、障害者就業・生活支援センターが加わり、より一層関係機関との連携が深まっている。特に職業対策上の重度に該当する知的障害者の生活面の支援について、それらの関係機関と連携することで障害者の生き甲斐と働き甲斐を引き出している。具体的には、障害者の健康管理や事故防止、スポーツ大会や福祉行事への参加促進、お付き合いや結婚等の相談や協力などがあげられる。

4. 取り組みの効果

職場実習を受け入れてきた結果、体力のいる製造過程において障害者を若くて力のある有能な人材として地元地域から確保することができた。また、働く経験を積む場を提供してきたことで、この職場実習で力をつけて他企業への就職の足がかりとした障害者が多数存在する。この地域で障害者が働く力をつけ生き甲斐を見出す場として有益だと評価を得ている。

また、職場配置の工夫や能力を引き出す人材育成を取り組んだ結果、職業対策上の重度に該当する多数の障害者を継続雇用できている。その中には他の企業ではなかなか就職が困難であった障害者が多数含まれていて、雇用は継続できている。加えて、職場適応訓練やトライアル雇用、特定求職者雇用開発助成金等の雇用促進の助成制度を活用したことで、会社の経営面においても有益であった。そして何より働く障害者が生き甲斐と働き甲斐を感じて仕事をしてくれている。障害者雇用の波及効果として、障害者雇用のノウハウを高齢者雇用にも活かす取り組みもできた。