事業所名

株式会社オニマル

所在地

福岡県みやま市

事業内容

食品製造業（漬物製造販売業）

従業員数

103名

うち障害者数

7名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害	2	商品箱詰め
肢体不自由
内部障害
知的障害	5	段ボール組立、商品箱詰め、商品仕分け、最終検品
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 取り組みの具体的な内容
4. 取り組みの効果
5. 今後の課題と対策

事業所外観

1. 事業所の概要

株式会社オニマルは、明治37年に個人事業として漬物製造を開始して以来、百年以上、漬物製造を主な業務としてきた。

現在は、みやま市の瀬高工場で、創業当初から製造してきた高菜漬をメイン商品として、たくあん、つぼ漬け等さまざまな商品を製造している。

食品メーカーを取り巻く環境は大変厳しいが、会社がもっとも大切にしていることは「お客様が第一」であるということ。買っていただく人の身になって仕事をする、お客様に喜んでいただける製品を作るということである。それが顧客との信頼関係を生みだすと考えている。また、業界一位の取引先と取引をすることが社員のモチベーションを高めることになると考えている。

2. 障害者雇用の経緯

障害者雇用について、直接のきっかけは、約4年前、養護学校の先生から依頼を受けたことであった。地域で障害者の雇用を受け入れてくれる企業となってほしいとの熱心な依頼に動かされ、会社としても、地域のお役に立てるのであればと考えた。また、以前から、一生懸命生きている障害者を身近にみていることもあり、受け入れることにした。

最初からたくさんの人数を受け入れることには不安があったが、働く側の立場から考えると1人ではなく複数採用がよいのではないかと、2名を雇用することから始めていくこととなった。

雇用することを決定するまで、そして、決定後も心配だったのは、障害者本人にとって働くことがマイナスにならないような指導や職場運営をしていけるだろうかということであった。当社で働くことにより、本人が落ち込んだり、困ったりしないだろうかという心配はつきなかった。障害者自身がかえって元気をなくすことにならないか、他の社員といっしょにやっていけるのかなど、いろいろな不安が生じた。一般社員からも案じる声は上がった。しかしながら、試験的に実施していこう、その中で見通しをたてていこうという思いで、障害者雇用をスタートした。

3. 取り組みの具体的な内容

（1）適職をみつける

雇用にあたっては、どのような仕事が合うのか、適切な仕事をみつけることが必要だと考えた。この仕事は合わないけれど、別の仕事では、本人の持ち味を発揮できることもある。適切な仕事をまかせて自信を持てるようにと、試行錯誤しながら開始したが、実際にはそれがよい結果となった。

粘り強く、ひとつの仕事に集中できる力を持っている。現在、一人は、最終検品の仕事をしている。ミスが許されない、重要な作業である。ベルトコンベヤーに乗って流れてくる商品をきびしく確認していく。根気のいる仕事である。しかし、そういった作業で、すばらしい力を発揮するようになった。

（2）労働条件

仕事は9：30から16：00で、1日5.5時間の短時間から始めることにしている。仕事になれてきて、本人の希望もあれば、フルタイムでの勤務に移行している人もいる。フルタイムでも他の社員となんら変わりなく、仕事をこなしている。

（3）障害者に配慮した取り組み

障害者雇用で大切にしていることは、「他の社員と区別をしない」ということである。悪いことは悪い、良いことはよい、それは誰でも同じである。障害があるからと、悪いことをそのまま認めてしまうと、他の社員から苦情が出て、職場の調和が取れない。だから、時にはきびしい対応もしている。

ただし、家族との連絡は密にしており、本人に変わった様子があれば家族からの連絡が入る体制を整えている。連絡帳を利用し、会社であったことも家族に伝え、必要な対応を取るように配慮している。

会社で注意を受けたときも「家では元気ですよ。特に変わったことがありません」という家族からの連絡があれば、安心して指導することができる。

（4）取り組みのまとめ

このように、適職をさがし、業務遂行援助者の力を借りて指導してきたこと、社員が支えてきたこと、家族との連絡を密に取ってきたことが現在の成果につながっている。

しかし、すべて、順調にいったわけではない。退職者も2名あった。ひとりは家族の転勤なのでしかたがなかったが、もう一人は、会社に出勤することができなくなり、仕事が続けられなかった。

こういったことがあると、次の受け入れに悩んだが、そのあと雇用した3名は、現在も無欠勤で仕事を続けている。また、ルールに従って、与えられた仕事に従事できるようになり、労災事故も起こしたことがない。

4. 取り組みの効果

（1）職場の雰囲気の改善

会社では、あいさつを重視している。朝の挨拶、帰りの挨拶をかわす、声を掛け合うことで、社員どうしのコミュニケーションが取れる。

障害のある社員が働くにあたって、業務遂行援助者が支えてくれるので、大変助かっている。常に業務遂行援助者とも連携を持っている。業務遂行援助者にも、「仕事ができる、できないは二の次であり、昨日よりも今日、今日よりも明日と一歩一歩成長していくことが大切である」と伝えている。だんだんとできることにより自分に自信を持ち、会社でしっかり働けるようになる。このように成長を見守っていくという姿勢に立つと、職場全体の雰囲気もよいものになる。

（2）コミュ二ケーション技術の向上

当初、障害者雇用については、現場の社員からも、対応が大変なのではないか、仕事はできるのだろうかという不安の声が出された。いろいろな心配があったようである。しかし、今では、社員どうしがなじみ、昼休みは、和気あいあいとしている。

言語障害のある人は、話すことができない。なんとかコミュニケーションを取ろうと、まわりの社員が、自然と手話を覚えるようになった。込み入ったことは筆談でするなど、仕事に支障はない。その障害にかかわらず、コミュ二ケーションはしっかり取れている。

（3）職場の活性化・生産性の改善

このような取り組みの中で、それぞれが自分にあった持ち場で仕事をし、責任をもった仕事ができるようになってきた。

最終検品の仕事で、点検作業をしている障害者は、「この仕事は自分にまかせて」と言うようになった。その仕事ぶりはまわりの社員も認めるほど成長していた。

障害があっても、責任のある仕事ができるようになり、生産性の向上に寄与している。
商品の仕分けを受け持っている障害者も、次々に送られている商品を間違いなく仕分けをしている。段ボールを組み立てる仕事についている障害者も、確実に手早くこなしている。

ダンボール組立ての様子

商品仕分けの様子

最終検品の様子

5. 今後の課題と対策

食品製造という仕事においては、最終的には人間の目で確認することが必要になる。クレームを出さないように最大の努力が必要である。全員が協力し、ひとつひとつの仕事の確認をしていかないと、クレームをなくすことはできない。仕事はグループごとに責任をもち、何か問題があったときには、全員で話し合い、改善案を出すとようにしている。それは、障害者であっても、グループの一員として同じである。「区別をしない」という精神を貫いている。

会社は、ひとりひとりが責任感を持つことが大切だと考えている。障害者雇用では、試行錯誤しながら、各人の適職を見つけた。本人の力が発揮できるように、きちんとルール作りをして仕事を指導すると、しっかりした仕事をするようになり、さらに自信も増す。障害者は特別な人ではなく、適職につけば、健常者以上の力を発揮できると確信できるようになった。

食品業界では、どんどん生産すればよいという「量」を求める時代は終わった。「質」の時代へと入った。消費者からは間違いない商品が求められている。これからも、この漬物を食べたいと、消費者に信頼される商品を作っていきたいと会社は考えている。
障害者雇用については、この地域では受け入れが少ないので、企業として責任を持って継続していかねばならないと考えている。