事業所名

株式会社 コーリツ

所在地

大分県大分市

事業内容

一眼レフカメラ、デジタルカメラの組み立て（完成品、半完成品）

従業員数

325名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚障害
肢体不自由
内部障害	1	管理部門
知的障害	3	生産管理部門で空箱やパッキンの回収
精神障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の理念
3. 障害者雇用の経緯や背景、問題点
4. 取り組みの具体的な内容、活用した制度等
5. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット、展望

ホームページアドレス

http://www.koritsu.jp

事業所外観

1. 事業所の概要

1990年株式会社コーリツ設立（加納工場）カメラ組立、生産開始,1997年羽田工場完成（本社機能移す）、2000年ISO9002:1994認証取得、同年セル生産方式導入。コーリツはISOのシステムと生産革新（ムダどり）という改善活動をミックスした体制（KQMS）を構築している。製品品質を企業品質までに拡大解釈し、その中に利益創出活動を盛り込んだシステムである。昨今では市場に連動したスピーディな生産体制（セル生産の導入）、さらには原価を低減するべき革新活動（経営・生産）をより強化する必要がある。継続的改善、永久的改善を推進し、企業体力を強化していく。これまでコーリツは個人の夢や感動、好奇心といった価値を追求していくための役割を果たせる企業を目指してきた。こうした追求には、個人のクリエイティビティが欠かせない。企業の真の価値とはそこに働き、関わる一人ひとりがつくり出すもの。個人が創造力を発揮できる場所であり、そして多様な人たちのクリエイティビティを刺激し、共振する企業でありたいと考えている。

2. 障害者雇用の理念

会社案内に頻出する『品質』という言葉と障害者雇用の関わりについて問うた。
「基本的に品質と言いますと、物の品質、創ったものが良い悪いという品質で見がちです。ところが、広義に捉えれば、コーリツは質の良い会社ですね、質の良い人が居るよねとか質の捉え方が本来違ってくるはずです。カメラが良い物ができる、不良品がないといった生産面だけの質でなくて、会社の質から見ると世間一般、世の中にある健常者、障害者の垣根があること自体がおかしな話で、健常者、障害者が居る状態が当たり前の姿です。だったら、それを取り入れる会社は、当然、質もいい会社であるということになります。そこで創るカメラも良い製品であるに決まっています。悪い商品が生産されるわけがない。なぜなら皆の意識が高いわけだし、会社の意識が高いわけだからです。だったら、質はカメラの質だけにとどまることなく、それをトータル的に品質という考え方にするとやっぱりコーリツは質の良い会社であるということになります。」と熱く語るのは、当社の障害者雇用に永年関わってきた品質保証部長佐藤誠治氏である。佐藤氏の言葉からも推測できるように、なにもことさら障害者雇用を特別なこととして捉えるのではなく、事業所と入社を希望するその人のニーズ及び適性・能力がマッチした結果として、トライアル期間を経験し、正規社員として（一般社員と同一基準・条件で）採用しているとのことである。

3. 障害者雇用の経緯や背景、問題点

（1）障害者を雇用するようになった直接のきっかけ

「以前から障害者雇用には関心があり、行政の行う研修会等で、障害者の職業訓練の様子や障害者の働いている現場を見学した際に、弊社でも雇用場所（職種）があることは確信していた。2000年下期、別府市にある大分障害者職業センターからの要請を受ける形で、とにかく一人引き受けた。どのように接すればいいかもわからない中、何とか働いてもらいたいという思い、仕事を通して人間的成長してもらいたいという願いをもち、試行錯誤しながら指導した。」とのことである。

（2）障害者の従事業務、職場配置等

「うちは物（部品：カバー、ビス等）が入ってきます。それを現場に配給して完成品と空箱が返ってくるという流れの中で、A氏には、現場から出たその完成品と空箱（部品が入っていた箱とか袋とか）を回収・整理して、お客さんへ返す物、捨てる物を選別する仕事をしてもらっています。」とのことである。

さまざまな部品が箱やパッキングに梱包されて、当社に運び込まれてくる。これらは廃棄するのではなく、細かく分別された後、送り出す作業を他の従業員と共に担当している。分別が間違っていればクレームがくるため、回収車が来るまでの決められた時間内に、正確に作業を進めなければならない緊張感を必要とする仕事である。

空箱の整理作業の様子

空箱の分別作業の様子

（3）問題点

何の予備知識もなかったため、どう接していいか分からず、当初ははれ物に触る感じで接していた。そういう気持ちが伝わったのか、それに呼応するように半年間、一言も口をきいてくれなかった。

また、働きたがらない、休みたがるなどどう接していいのか困った。

4. 取り組みの具体的な内容、活用した制度等

（1）コミュニケーション・人間関係の構築

入社当初は障害者職業センタージョブコーチに2日に一度は足を運んでもらった。指導の実際場面を見せてもらったり、指導の技術のノウハウを助言してもらったりしながら少しずつ改善していった。

基本的な生活習慣や社会性の発達が多少遅れているだけであるから、つまずきが出たときに、基本に戻って少していねいにゆっくり、具体的に指導することで解決していった。それがやがて生活面での自信となり、仕事に対する責任感も生まれてきた。また、挨拶を欠かさないとか、休憩時間や就業後にコーヒを飲みながら話し合うなどの交流を続けた。
さらには、仕事を間違えたときは、なぜ間違えたのか、解決するまで一緒に考えて解決していく手助けを続けた。

半年後、もう一人、障害者が入社したのもきっかけとなった。初めて話しかけてくれ、新入社員と競うように仕事をし、コミュニケーションが図れるようになってきた。

（2）サポート体制の整備

仕事に関する指導・教育は「On the Job」の原則を踏襲している。

リフトや運送トラックの出入りが頻繁、梱包を高積みした場所が多い等、危険場所が多い職場であるので、安全に関する条件整備は十分に配慮している。

甘やかさないことを心がけている。楽しく仕事をすることは大切であるが、叱るところは叱る等我が子を育てる気持ちで接するようにしている。

5. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット、展望

（1）障害者を雇用してよかった点（担当者のコメント）

仕事に対する集中力はすばらしいものがある。定着までに時間がかかるが、目を見て指導すれば、きちんと仕事を覚えて、そして正確にこなしていくこと等々彼らの指導を通して教えられたことは多い。一般社員の社員教育に応用させてもらっている。

作業の中には、健常者でもかなわない部分もあるので、そういう能力を見出し、覚えるまでは気長に教えてあげると、どんどん成長しそれが仕事に反映されていく事が分かった。

障害者第1号（A氏）が入社したときにたまたま世話役を引き受けたことをきっかけに、障害者雇用促進と指導に関わっている。当初は大変なことも多かったが、我が子を育てる気持ちで接すると彼らはやがて心を開いてくれる。時には厳しく叱ることもあるが、信頼関係が成り立っているので彼らとの関係は良好である。

（2）A氏のコメント

入社して9年、空箱を回収するのが主な仕事である。ここでの仕事は楽しいが、違う仕事にもチャレンジしてみたい気持ちも出てきている。
スポーツが好きで、休みの日はマラソンをして身体を鍛えている。県内マラソン大会にも出場している。また、野球、バスケットボール、卓球、ボーリングなども楽しむなど、気の合う仲間と充実した日々を過ごしている。

*  キャリアアップの願いがでてきている。是非念願を叶えてほしいと思う。

今後の課題、展望として、部長の夢は、毎年1～2人ずつ雇用して行きながら30年後にふと振り返ると、コーリツこそが、『障害者の幸福をつくる場所』に成っていたら・・・。